裏社会の何でも屋『友幸商事』に御用命を

水ノ灯(ともしび)

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嘶く稲光

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 視界の端で光ったものが見えた気がして、友弥は瞬間的に身を緊張させる。鈍い煌めきが示す物が何かを知る前に体が勝手に動いていた。鷹野の腰から銃を抜き去り、光に向けて放つ。続けて数度引き金を引くと、少し離れた場所でどさりと倒れこむ音が聞こえた。
 鷹野は急な友弥の行動にぽかんとした顔をしていたが、男が倒れているのを見るとまだ潜んでいた敵がいたのかと驚く。

「勝手に借りちゃった」

 友弥がくるりと銃を回してグリップを向けて鷹野に差し出す。

「ゆうちゃん、さすがぁ」

 銃を受け取ってホルダーに戻しつつ、鷹野は嘆息とともに言う。仕留め損ねていたとは、と辺りを警戒するがもう人の気配はないようだった。
 涼の手からずるりと力が抜け、友弥に全体重がかけられた。鷹野が涼を持ち上げようとするのを友弥が制止する。崩れたコンクリートに寄りかかっているよりも、まだ友弥がクッションになった方が体に負担はかからないだろう。あまり動かすとまた出血がひどくなりそうで、そのままにしておいてやる。
 友弥は痛みに耐える涼を見下ろし、しばし考え込んでいた。今回の襲撃に心当たりがあった。恐らく、と幸介の仕事に無関係ではないはずだ。

「しゃちょさん、頼みがあるんですけど」

 友弥は思い至ったように顔を上げ、真っ直ぐ鷹野を見た。妙に舌足らずな呼び名は友弥特有のものだ。鷹野はなんでも言ってみろとばかりに頼もしく受け止める。ただの得意先というだけでなく、仲の良い友人である友弥の頼みならなるべく聞いてやりたいものだ。
 友弥からの依頼を鷹野は気持ちよく受けてくれた。それは仕事中のヨウと幸介に武器を差し入れてほしいという依頼で、運び屋本来の仕事を頼まれれば断る理由などない。鷹野は依頼があれば薬から死体まで、どんなものでも運んでみせる。

「相手は攻められるのを知ってる……多分、手持ちの武器じゃ足りないと思う」

 友弥と涼が襲われたのは今回の仕事が相手に気づかれていたせいだろう。ヨウと幸介ならばその状況でも乗り切れるだろうが、足りない銃器を現地調達するのでは分が悪い。

「依頼人か…………」

 息を荒げた涼が忌々しげに呟いた。情報を横流しして自分達を危機に陥れた相手には、後で制裁を受けてもらうこととしよう。
 そうと決まれば早く出発してくれと、鷹野を促す。怪我人を置いていくことを心配していたが、車のライトが近づいてきたことでひらりとバイクに跨った。迎えの車が来たことに友弥も安堵し、鷹野を送り出す。
 瞬く間に去っていく稲妻を見送り、迎えに来てくれた友人に向かってひらりと手を振るのだった。
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