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絢爛の宴
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元気にやってんの、と口々に聞きながら彼女達は末っ子の来訪が嬉しくて仕方がない様子だ。オーナーも交えて昔話に花も咲く。
「あ、あの……さっきのショー、すごかったです!」
見習いなのか、まだ若い女が飲み物を配っている最中に涼へと憧憬の視線を寄越す。新しく冷えたグラスを取りながら涼はありがとうと笑んでみせた。それだけで頬を紅潮させる彼女に年長者から冷やかしが入る。同じく周囲の女性達も彼女にとっては憧れの対象なのだろう。ベテラン達の注目を浴びて気恥ずかしそうにしている。
「ポールダンサーさんなんですか?」
先程舞台で披露した演目をホールで給仕をしながら見ていたのだろう。んー、と涼は過去に想いを馳せて視線を巡らせる。
今夜は偶然ポールダンスの演目の穴埋めをしただけにすぎない。まだ若いというより幼く、知識だろうが技術だろうがいくらでも伸び代があった時期に涼はたくさんのことを教わった。同い年が計算式や歴史を頭に詰め込んでいる時に涼は性技やこういったパフォーマンスを磨いていたというだけの話だ。
「こいつは何でもできるよ、あたし達が直々に教えたからね」
隣の黒髪が自信たっぷりに言うので涼は照れ笑う。手塩にかけて育てたのだと胸を張るほど立派な人間にはなっていないが、こと技巧に関してはそれなりのものが身についているはずだ。
「男の女王様でトップ取ったのなんてこの子くらいでしょうよ」
オーナーもまたパイプをふかして誇らしげだ。この街で涼の名を知らぬ者はいないほどに人気のあった時期もあった。奴隷の調教からショーまでなんでもやっていた時もあったなあと涼は懐かしく思う。その割に誰とでも寝るせいで品格が落ちると苦言を呈されたのも今では笑い話だ。
すごい、と目を輝かせる若い女を仕事に追い払った後もまだ姦しく話は続く。そんな人気者があっさりと店を辞め、殺し屋になったというのだから聞きたいことは尽きないのだ。相変わらず夜遊びは続けているしこうして手伝いをすることもあるが、あくまで本業は変わらない。彼女達からしたらかわいい弟分を嫁に出したような気持ちなのだろう。
店に面倒を見てもらってはいたものの元々春を売っていたこともあってふらふらとしていた涼が一応足を洗って組織に所属しているというのだ。それももう何年も辞めていないというのだから興味は尽きない。涼の纏う雰囲気もだいぶ変わったのだ、一体どんな相手か聞かせろという話になる。
「こんな仕事してて怒られないの?」
短髪の女性があっさりとグラスを干して問う。下品だの下賤だのとはよく言われる職業ではある。しかし殺し屋に比べればなんと高貴な職業だろうと涼は笑い飛ばした。軽んじられるような生半可な仕事でないことなどここにいる全員が知っている。
「違う、束縛されたりしないわけ?」
見当違いだと低く笑って短髪は甘い香りのする煙草を咥えた。涼はテーブルに無造作に置かれていたライターで火をつける。軽く口が寄せられ、小さく火が灯った。
「もしかして俺が捕まってると思ってる? 好きにやらせてもらってるよぉ」
首輪でもつけられているんじゃないかと疑われているのが分かって涼はおかしそうに笑った。そんなに自分がひとところに留まるのが珍しいと思われているのだと思うと面白い。
確かに出会ったばかりの頃に詮索されたり引き止められたりしていたら今あの場所にはいなかったかもしれないと思う。初め、彼らとは仕事こそ共にしていたが生活はバラバラで口出しなどしてこなかった。その距離感が心地よくて一緒にいるうちに次第に帰る場所へと変わっていったのだ。今日も詳しいことは聞かずにいってらっしゃいと送り出してくれたのを思い出してふふっと笑いを漏らす。
涼があまりに柔和な表情を浮かべるので一同に驚きが走った。昔に比べてだいぶ雰囲気が変わったと感じていたが、見たことのない顔つきをするようになった。
「あ、あの……さっきのショー、すごかったです!」
見習いなのか、まだ若い女が飲み物を配っている最中に涼へと憧憬の視線を寄越す。新しく冷えたグラスを取りながら涼はありがとうと笑んでみせた。それだけで頬を紅潮させる彼女に年長者から冷やかしが入る。同じく周囲の女性達も彼女にとっては憧れの対象なのだろう。ベテラン達の注目を浴びて気恥ずかしそうにしている。
「ポールダンサーさんなんですか?」
先程舞台で披露した演目をホールで給仕をしながら見ていたのだろう。んー、と涼は過去に想いを馳せて視線を巡らせる。
今夜は偶然ポールダンスの演目の穴埋めをしただけにすぎない。まだ若いというより幼く、知識だろうが技術だろうがいくらでも伸び代があった時期に涼はたくさんのことを教わった。同い年が計算式や歴史を頭に詰め込んでいる時に涼は性技やこういったパフォーマンスを磨いていたというだけの話だ。
「こいつは何でもできるよ、あたし達が直々に教えたからね」
隣の黒髪が自信たっぷりに言うので涼は照れ笑う。手塩にかけて育てたのだと胸を張るほど立派な人間にはなっていないが、こと技巧に関してはそれなりのものが身についているはずだ。
「男の女王様でトップ取ったのなんてこの子くらいでしょうよ」
オーナーもまたパイプをふかして誇らしげだ。この街で涼の名を知らぬ者はいないほどに人気のあった時期もあった。奴隷の調教からショーまでなんでもやっていた時もあったなあと涼は懐かしく思う。その割に誰とでも寝るせいで品格が落ちると苦言を呈されたのも今では笑い話だ。
すごい、と目を輝かせる若い女を仕事に追い払った後もまだ姦しく話は続く。そんな人気者があっさりと店を辞め、殺し屋になったというのだから聞きたいことは尽きないのだ。相変わらず夜遊びは続けているしこうして手伝いをすることもあるが、あくまで本業は変わらない。彼女達からしたらかわいい弟分を嫁に出したような気持ちなのだろう。
店に面倒を見てもらってはいたものの元々春を売っていたこともあってふらふらとしていた涼が一応足を洗って組織に所属しているというのだ。それももう何年も辞めていないというのだから興味は尽きない。涼の纏う雰囲気もだいぶ変わったのだ、一体どんな相手か聞かせろという話になる。
「こんな仕事してて怒られないの?」
短髪の女性があっさりとグラスを干して問う。下品だの下賤だのとはよく言われる職業ではある。しかし殺し屋に比べればなんと高貴な職業だろうと涼は笑い飛ばした。軽んじられるような生半可な仕事でないことなどここにいる全員が知っている。
「違う、束縛されたりしないわけ?」
見当違いだと低く笑って短髪は甘い香りのする煙草を咥えた。涼はテーブルに無造作に置かれていたライターで火をつける。軽く口が寄せられ、小さく火が灯った。
「もしかして俺が捕まってると思ってる? 好きにやらせてもらってるよぉ」
首輪でもつけられているんじゃないかと疑われているのが分かって涼はおかしそうに笑った。そんなに自分がひとところに留まるのが珍しいと思われているのだと思うと面白い。
確かに出会ったばかりの頃に詮索されたり引き止められたりしていたら今あの場所にはいなかったかもしれないと思う。初め、彼らとは仕事こそ共にしていたが生活はバラバラで口出しなどしてこなかった。その距離感が心地よくて一緒にいるうちに次第に帰る場所へと変わっていったのだ。今日も詳しいことは聞かずにいってらっしゃいと送り出してくれたのを思い出してふふっと笑いを漏らす。
涼があまりに柔和な表情を浮かべるので一同に驚きが走った。昔に比べてだいぶ雰囲気が変わったと感じていたが、見たことのない顔つきをするようになった。
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