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龍帝祭⑨

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 俺は龍帝の銅像に祈りを捧げながらも昔の事を振り返って見る。

 ...。

(やっぱり優樹と一緒に大仏を見た記憶あるんだよな...)

 なんだ? 俺だけが覚えてるとか気持ち悪いな。

 そう思った俺はシュガーに聞いてみる。

「シュガー」

「なんですか? ご主人様」

「お前と一緒に奈良の大仏を見に行った事あるよな?」

 そう呟く俺に彼女は首を横に振る。

「何言ってるんですか? 行ったことないですよ?」

「...そうか」

 シュガーにもそう言われてしまっては仕方がない。

 俺と優樹とシュガーは一緒に奈良の大仏を見に行った事がないと言うことになるだろう。

 しかし、俺の記憶の中には確かにその記憶が存在している。

 それに石川もいたような気がするのだ...。

 だけど俺以外は知らない記憶。

 そんな記憶がどんどん増えているような気がする....。

(なんか少し気味が悪いな...)

 そう思った俺は少し頭を冷やした。

 存在するはずの無い記憶が俺の中に溜まっているのは事実だ。

 少しずつだが確実にそれは俺の頭の中を満たしていく...。

 それと同時に謎の少女の顔が時々見えるようになってきた。

 しかし、名前は思い出せない。

 どう頑張っても名前だけは未だにモヤがかかったように出てこないのだ。

(なんなんだろうか? 俺は一体どんな記憶を持っていたのだろうか?)

 皆の知らない皆との記憶に俺は戸惑っているのでした。
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