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龍帝祭⑦

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「う~ん...」

 俺が悩んでいると優樹が声をかけてきた。

「どうしたの? 和希?」

「優樹、実は昔さっきと同じような事があったような気がしてな」

 それを聞いた優樹はポンっと手を叩く。

「ああっ! 確かにあったよ! 私がこんな感じのクマのぬいぐるみが欲しいって言ったから和希が自腹で取ってくれたんだよね!」

「あ...ああ」

 確かにそんな感じの事があった気がする...。

 でもなぜだろうか? なんだか優樹との思い出じゃない気がする...。

 そう、例えるのなら優樹のとの思い出のはずなのに他の誰かとの思い出のような気がしていると言う感じだ。

 何を言っているのか分からないと思うが、俺自身何が起きているのか分からない。

 自分の中で判断がついていないのだ。

「和希? どうしたの? 少し苦しそうだよ?」

 心配そうに俺の事を見つめてくる彼女に俺はこう返していた。

「ああ、大丈夫だ。ちょっと考え事をしてただけだから...」

「考え事? 何か悩みがあるならいつでも話してよね! 私は和希の友達なんだからさ!」

 明るい笑顔で俺をいつも引っ張ってくれる小鳥遊優樹という少女の存在は俺の中でとてつもなく大きい。

 彼女がいなければ俺の人格や性格はもっともっとひん曲がっていたであろうことは想像に難くない。

 クッソ生意気な陰キャが出来上がっていた所を彼女がいてくれたお陰でただの陰キャ程度に収まっているのである。

「優樹」

「なに?」

「俺が射的屋で優樹にクマのぬいぐるみを取ったのってこう言う縁日の日だったよな?」

「そうだけど...、それがどうかした?」

 そう聞かされるとやはりあの謎の人物の影がチラつく。

「なあ、優樹、やっぱりその時にもう1人いなかったか?」

「もう1人? 和希のお母さんかな?」

「いや違う。同級生でだ」

「同級生? さあ? 地元のお祭りだったしそこら中に知り合いがいたしね。同級生もいたんじゃない?」

「そう...か。でも一緒に見て回ったのは俺と優樹と母さんなんだよな?」

「そうだよ」

 優樹はやはり覚えていないらしい。

(お前は誰なんだ?)

 ピンクの髪が美しい顔に影が入って隠れている少女。

 もう少しで思い出せそうなのに思い出せないもう1人の幼馴染みの存在に俺は変な汗をかいているのだった...。
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