上 下
338 / 574

目覚め...

しおりを挟む
「ずき...! 和希!!!!」

「はっ!?」

 俺は優樹の声で飛び起きた。

「何ボ~っとしてるの? もう船は目的地についてるよ! だいぶ待たせてあるから早く皆の所に行かないと!」

 その一連の流れに驚く俺だったが、どうやら夢は終わったようだ。

 妙にリアルな夢に俺は汗だくだった。

「ちょっと和希大丈夫!? すごい汗だよ!?」

「優樹...か」

 俺は夢で見たあのおぞましい呪いの杖の生誕におそれをなしたのだ。

(クラスアップ? 【弱体術師】がクラスアップしたらああなるのか?)

 姿を見ただけだが正直言ってあれは勇者などではない。

 いや、むしろその逆のような存在だと俺は感じた。

(あれはもう勇者どころか人間の形を成した何かだろ...)

 奴の姿を始めて見た時には背筋が凍りつき蛇に睨まれた蛙の気分を味わっていた。

 まさしく悪夢だ。

 あんなのが現実にいたら溜まった物じゃない。

(そう、あれは夢だ。たちの悪い悪夢。それ以上でもそれ以下でもない。大体俺が勇者で佐藤達と親友? あり得ないだろ!)

 首を横に振った後に顔を洗いにいく。

 そこにはいつもの【弱体術師】である俺がいた。

(...大丈夫。俺はクラスアップしてもああはならない)

 深く深呼吸をしてから船を降りる俺。

 船を降りるとそこにはいつものメンツである仲間達が出迎えてくれた。

「和希様、船を降りるだけにこれほどまで時間がかかるとは何かありましたか?」

「まさか兄ちゃん寝坊したのか!? 珍しいな!」

「【弱体術師】様は少しお疲れのようですね。今日は港で宿をとってお休みにしますか?」

「そうだね、和希の体調が悪いんだったら健康に良い食事とかも考えるよ?」

「ご主人様? 大丈夫?」

「...ああ、問題ない」

 悪夢で見た絶望的なパーティよりも今のパーティの方がだいぶマシだ。

 こいつらの顔を見ているといつもの調子を取り戻せる...。

 そう思った俺はゆっくりと港町へと足を踏み入れるのだった。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

9番と呼ばれていた妻は執着してくる夫に別れを告げる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:62,941pt お気に入り:3,053

体質系?異世界召喚者、また召喚され、怒る

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:272

公爵令嬢は、婚約者のことを諦める

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:63pt お気に入り:2,117

行き遅れ聖女の結婚騒動

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:142pt お気に入り:49

【完結】愛は今日も愛のために

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:17

処理中です...