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おたまじゃくし少女

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「いてて...。リュアのやつ私を【異次元空間】から落としやがった。いくら亡霊に襲われてたとは言え酷いよな」

 そう言いながらむくりと起き上がるおたまじゃくしの少女。

 身長は本当に幼稚園児くらいで赤いマフラーに蒼いコートを着ているくらいの情報しか入ってこない。

 いや、自分でも何が起こっているのかわからないが、亀裂から現れたのはなんだか弱そうなおたまじゃくしの尻尾が生えているほぼ人間ベースの黒髪少女だった。

 フワンも彼女の事をポカンとした目で見ていると言うことは恐らく仲間ではないのだろう。

 それだけは救いだ。

 00:00:50

(後50秒!)

 そう思っているとフワンが俺に敵意をむき出しにしてきた。

 そりゃそうだ。

 いつまでも敵か味方か分からない奴に余力を割いている余裕はないだろう。

「邪魔が入りましたがこれで終わりです【銀氷の矢】!」

「しまった!!」

 完全に出遅れた! 奴の動きに俺の行動は間に合わない!

 圧倒的な死の予感に俺の全身から嫌な汗が溢れ出る。

 奴から放たれた白銀の矢が俺の胸を突き刺すまでほんの一瞬。

 HPが赤く染まっている今の俺では到底耐えきれないであろう威力に目を瞑る。

 しかし、いつまで経っても痛みがやってこない。

 俺はすかさず目を見開いて現状を確認すると、そこには驚愕の光景が広がっていた。

「おい...、私の目の前で人を殺そうとしたな?」

 そう言いながら蒼き稲妻を走らせる黒髪のおたまじゃくし少女の姿がありました。

 その手にはフワンの放った【銀氷の矢】が握られていたので、彼女は片手で奴の放った矢を止めたようでした。

「なっ!?」

 驚く彼女に追撃を入れるおたまじゃくしの少女。

 目にも止まらぬ速さで奴の元へと辿り着くとフワンと互角の勝負を始める。

「ふぅん..あんたやるねぇ」

「そちらこそ、人間なんかに肩入れするとは勿体無いお方ですね。その尻尾を見る限り貴方も魔物でしょう?」

 そう呟くフワンに対して苦笑するおたまじゃくし少女。

「おいおい、よしてくれよ。私はただ自分の信じた【王】の言葉を守っているだけだよ」

「人間なんかと交友関係を持つとは...、貴方の【王】と私達の主人はあいいれなさそうですね」

「そうみたいだね」

 軽い口調で激しいバトルを繰り広げられては勇者の1人として少し悲しいがお陰様で時間を稼げそうだ。

 00:00:00

「くっ...。どうやら時間のようですね。とんだ邪魔が入ってしまいました」

「あらっ? もう帰っちゃうのか? じゃあまた今度、次はお互いに本気でね」

「...ええ、その機会があれば」

 フワンの帰還と共に俺の目の前にはおたまじゃくしの少女だけが残る。

「えっと...所でここはどこかな? 私はちょっとした漂流者だから援助してくれると助かるかなって...」

「陸の上で漂流者はないだろ」

「そうだね。たはは」

 たははと頭をかきながら俺の方を見てくる様は年相応の少女なのだと思うのでした。
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