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戦火の村②

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 俺たちが騎士団の後を追って戦場に辿り着くと、そこは既に地獄と化していました。

「ぐわああああ!!!」

「なんだこいつら! 魔物の癖に魔法を使うぞ!!」

 村の中はそこら中火事が起きていて死体の山が築かれている。

 村とは言っても王都が近くそこそこの人数がいた村は既に無くなったのだと俺たちは気付かされた。

(あんな奴らの茶番に付き合ったせいだ!)

 そんなあんな奴らも殆どが既に焼死体となっており、つくづく付き合った事を不快に感じた俺は空を見上げる。

「グアァァ!!!!」

「グァァァ!!!」

 2頭のグリフォンが眷属たるワイバーンと無数の鳥どもを引き連れて炎の魔法を放ってくる!

「アルシェ!」

「はい! 【光の盾】! 【水の盾】!」

 アルシェの前に光と水の盾が出現し奴の魔法を掻き消した。

「流石だな!」

「任せて下さい! 【挑発】!」

 彼女が剣を掲げると敵の注目が全て彼女に向かう。

 その隙を狙ってラカラがブーメランを投げる!

「【8ブーメラン】!!!」

 彼女がそう叫ぶとブーメランが8つに分裂して一気に雑魚鳥どもを薙ぎ払う!

「【キャットスタンプ】!」

 勢いよく上にジャンプしたシュナが範囲攻撃で雑魚をどんどん倒していく。

「デバフ!」

 勿論俺も各種デバフを使い皆をサポートしていた。

 優樹は傷ついた者を回復したり皆にバフをかけて持続力を強化する。

(いいぞ! 前より格段に戦力が強化されている! これなら佐藤と石川に頼らなくても何とかなるかもしれない!)

 と言うかあいつらは何をやっているんだ?

 ボスっぽいやつが目の前にいるのに姿を現さないとは...、まさかな。

 目の前のグリフォン2頭が今回のボスではないかも知れないと言う疑惑が立ち始めた頃だった。

「遅れたな! 高坂!」

「佐藤!」

 ようやく現れた勇者が剣を振りかざす!

「くらえ! これが俺の新必殺技! 【ファイナルスラッシュ】だ!」

(うん! 完全にパクリだろそのネーミング!)

 某有名バトル漫画のマネをするのは誰でもある事だが、技名をそうするとはな...。

 まあ、敵を倒してくれるのならばそれでいい。

 以前見た【勇者の一撃】よりも強力になった一撃をワイバーンに入れる佐藤。

「どうだ!」

 と生き残っていた数人の騎士団達も「おおっ!」と声を漏らしていたが...。

「グギャァァァァ!!!!」

「おいっ! たおせてないぞ!!」

 勇者の一撃が決まったと言うのにワイバーンはピンピンしている。

 そこを指摘すると佐藤は「そんなはずは...」と呟いていた。

 固まったまま次の行動を起こさない佐藤に痺れを切らした俺はラカラに命令を下す。

「ラカラ! 俺が各種デバフをかける! ワイバーンにハント系を全部乗せた攻撃を行え!」

「分かったよ兄ちゃん!」

 そう言いながらワイバーンに飛びかかるラカラを迎撃しようと魔法を唱える奴に【束縛】と【幻影剣】→【幻影乱部】を入れて動きを封じたその上で毒と麻痺を重ねがけた。

「これが【ポイズンハント】【パラライズハント】【バインドハント】を重ねがけにした【トゥリーハント】だ!」

 毒と麻痺と拘束、この全ての状態異常が入っている場合に使用可能になる【トゥリーハント】の威力は絶大だ。

 各種ハントが2倍のダメージを与えるのに対し、手間がかかる分【トゥリーハント】は6倍のダメージを叩き出せる!

 ラカラが奴の喉元に短剣で斬りかかると奴の体から血飛沫が飛び交い討伐することに成功した。

「よしっ! よくやったぞラカラ!」

「うん!」

「しかし油断するな! まだ大ボスのグリフォンが2頭も残っている!」

 俺の言葉にようやく奴が姿を現した。

「やれやれ、その程度の相手に苦戦するとは、佐藤も落ちぶれたものですね」

 余裕そうな笑みを浮かべながら登場したあの男がついに動き出すのだった。
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