なぜか異世界に幼女で転生してしまった私は、優秀な親の子供だったのですが!!

ルシェ(Twitter名はカイトGT)

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目覚めない妹

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 ~親父が死んで一週間後~

 世間では普通の生活に戻り始め、学校の生徒は今日が登校日です。

 なので、俺は自室で眠る妹の部屋に来ていました。

「カリン...、おはよう」

 でも、俺が言葉を発しても妹からの返事はありません。

 あれからずっと妹は眠ったままである。

 母さんが言うには瞬間的に多くの魔力を吸われてしまった為、一種の無酸素状態に陥っていると言われた。

 とは言え、母さんがちゃんとした治療を施してくれたので、命に別状はないとのことだ。

 学校が始まっても登校しない妹を心配した友達が何人かお見舞いに来てくれたのは正直嬉しい出来事である。

 その中にトウマのやつがいたのもちゃんと覚えている。

「全く...、我が妹ながら色んな人に愛されてるんだな...」

 そう思うと少し安心するのだが、その反面彼女が目覚めた時に親父が死んだと告げるのが少々心苦しい...。

(俺が自分の口で伝えなくてはいけない...、母さんの口から伝えるのでは意味がないからな...)

 母さんはあれから普通に振舞っているのだが、精神はどう考えてもやられている様に見えてならない。

 最愛の人を失ったのだから当たり前と言えば当たり前なのだが、俺に不安そうな顔を見せまいと気丈に振る舞うその姿を、俺は誇りに思う。

(だからこそ、これくらいの事はやらないとな)

 妹の世話は俺が全てやっている。

 体を拭いたり、栄養のあるゼリー状の食べ物を食べさせてあげたりなど、意外とやる事はあったりするのだ。

 妹の身の回りの世話をしていると、聞き覚えのある声がした。

「ローシュ、カリンの様子はどう?」

「エルシーか...、ああ依然として目覚めないままだ」

 心配そうに妹を見つめてくれる彼女。

「そう...、カリンには私も世話になってるから、早く元気になって欲しいんだよね」

 妹の頭を優しく撫でる彼女。

 そのどれもが慈愛に満ちているように見えて美しいと感じてしまう俺がいた。

「なあエルシー...」

「何?」

 そっとこちらを向く彼女の素顔が間近で見られない為、ちょっとだけ視線を外す。

「その...、前あげたネックレスまだ持ってるか?」

「ええ...、っていうかちゃんとつけてます!」

 彼女の首元を見ると、以前あげた赤い羽がキラキラと光っているのが見えた。

 このくらいも見えてないほどにこの時の俺はテンパっていたのである。

「あ...ああ!大事にしてくれてるんだな!」

「5万もするんだから当然よ!、それにローシュが始めてプレゼントしてくれた物だしね!」

「エルシー...」

 その言葉が一番嬉しいと思える俺。

 俺のあげた物を身につけてくれているという幸福を噛み締めながらも、一度返してもらうように言った。

「すまないが一旦それをこちらに渡してくれないか?」

「?、なんで?」

「そのネックレス、もしかしたら強化できるかもしれないんだ」

「?、あなた鍛治職人だったっけ?」

「いや違う、ただの剣士さ」

「そんな人がどうやって強化するのよ...」

 疑いの目をかけてくるが、これは当然である。

 基本的にこういうアクセサリー類に補助性能を付与できるのは一流の魔道士か手練れの鍛治職人くらいなのだ。

 騎士とは言え、一介の剣士に付与魔法なんぞ扱えるはずもないと彼女は踏んでいる様な表情を浮かべている。

「まあ任せてくれ!、一回だけでいいからさ!」

「そこまでいうなら...、はいっ...」

 ネックレスを一度外して俺に渡してくれた。

 外したばかりなので、ほんのり彼女の温もりを感じられる。

(俺があげたネックレスをちゃんとつけてくれてるんだよな...)

 そう思うと嬉しさがこみ上げて来た。

「ローシュ?、ちょっと早くしてくれないかな?、なんか恥ずかしいから...」

 ほんの少し顔を赤らめる彼女は可愛い♡。

「あ...ああ///、じゃあやるぞ!」

 俺は少し取り乱しながらもアクセサリーに補助効果を付与し始めた。

「材質...ok...、効果付与...ok...、形...ok...」

 俺がぎゅっとネックレスの羽を握りしめると、一瞬で色が白に変わり、デザインも若干だけど変わった。

「できた...」

「本当にできた...!」

 彼女は少し驚いた様な顔をしていました。

「エルシーつけて見てくれないか?」

「うん...」

 そっと彼女の首にネックレスをかけてみると、結構似合ってます。

「どう?」

「似合ってると思う」

「ふふ...、なんか嬉しいな」

「えっ?」

「いや...、このネックレスにかかってる付与効果、ローシュ決めたんだよね?」

「ああそうなんだが...、効果のほどは試して見ないと分からないな」

「ううん...、試さなくても分かるよ、なんだかあったかいから」

「そ...、そうか?」

 なんか照れ臭くなった俺は人差し指で頰を掻いた。

「ありがとうローシュ」

 彼女からのお礼の返事が嬉しくて何も言えない俺なのでした。
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