291 / 361
目覚めない妹
しおりを挟む
~親父が死んで一週間後~
世間では普通の生活に戻り始め、学校の生徒は今日が登校日です。
なので、俺は自室で眠る妹の部屋に来ていました。
「カリン...、おはよう」
でも、俺が言葉を発しても妹からの返事はありません。
あれからずっと妹は眠ったままである。
母さんが言うには瞬間的に多くの魔力を吸われてしまった為、一種の無酸素状態に陥っていると言われた。
とは言え、母さんがちゃんとした治療を施してくれたので、命に別状はないとのことだ。
学校が始まっても登校しない妹を心配した友達が何人かお見舞いに来てくれたのは正直嬉しい出来事である。
その中にトウマのやつがいたのもちゃんと覚えている。
「全く...、我が妹ながら色んな人に愛されてるんだな...」
そう思うと少し安心するのだが、その反面彼女が目覚めた時に親父が死んだと告げるのが少々心苦しい...。
(俺が自分の口で伝えなくてはいけない...、母さんの口から伝えるのでは意味がないからな...)
母さんはあれから普通に振舞っているのだが、精神はどう考えてもやられている様に見えてならない。
最愛の人を失ったのだから当たり前と言えば当たり前なのだが、俺に不安そうな顔を見せまいと気丈に振る舞うその姿を、俺は誇りに思う。
(だからこそ、これくらいの事はやらないとな)
妹の世話は俺が全てやっている。
体を拭いたり、栄養のあるゼリー状の食べ物を食べさせてあげたりなど、意外とやる事はあったりするのだ。
妹の身の回りの世話をしていると、聞き覚えのある声がした。
「ローシュ、カリンの様子はどう?」
「エルシーか...、ああ依然として目覚めないままだ」
心配そうに妹を見つめてくれる彼女。
「そう...、カリンには私も世話になってるから、早く元気になって欲しいんだよね」
妹の頭を優しく撫でる彼女。
そのどれもが慈愛に満ちているように見えて美しいと感じてしまう俺がいた。
「なあエルシー...」
「何?」
そっとこちらを向く彼女の素顔が間近で見られない為、ちょっとだけ視線を外す。
「その...、前あげたネックレスまだ持ってるか?」
「ええ...、っていうかちゃんとつけてます!」
彼女の首元を見ると、以前あげた赤い羽がキラキラと光っているのが見えた。
このくらいも見えてないほどにこの時の俺はテンパっていたのである。
「あ...ああ!大事にしてくれてるんだな!」
「5万もするんだから当然よ!、それにローシュが始めてプレゼントしてくれた物だしね!」
「エルシー...」
その言葉が一番嬉しいと思える俺。
俺のあげた物を身につけてくれているという幸福を噛み締めながらも、一度返してもらうように言った。
「すまないが一旦それをこちらに渡してくれないか?」
「?、なんで?」
「そのネックレス、もしかしたら強化できるかもしれないんだ」
「?、あなた鍛治職人だったっけ?」
「いや違う、ただの剣士さ」
「そんな人がどうやって強化するのよ...」
疑いの目をかけてくるが、これは当然である。
基本的にこういうアクセサリー類に補助性能を付与できるのは一流の魔道士か手練れの鍛治職人くらいなのだ。
騎士とは言え、一介の剣士に付与魔法なんぞ扱えるはずもないと彼女は踏んでいる様な表情を浮かべている。
「まあ任せてくれ!、一回だけでいいからさ!」
「そこまでいうなら...、はいっ...」
ネックレスを一度外して俺に渡してくれた。
外したばかりなので、ほんのり彼女の温もりを感じられる。
(俺があげたネックレスをちゃんとつけてくれてるんだよな...)
そう思うと嬉しさがこみ上げて来た。
「ローシュ?、ちょっと早くしてくれないかな?、なんか恥ずかしいから...」
ほんの少し顔を赤らめる彼女は可愛い♡。
「あ...ああ///、じゃあやるぞ!」
俺は少し取り乱しながらもアクセサリーに補助効果を付与し始めた。
「材質...ok...、効果付与...ok...、形...ok...」
俺がぎゅっとネックレスの羽を握りしめると、一瞬で色が白に変わり、デザインも若干だけど変わった。
「できた...」
「本当にできた...!」
彼女は少し驚いた様な顔をしていました。
「エルシーつけて見てくれないか?」
「うん...」
そっと彼女の首にネックレスをかけてみると、結構似合ってます。
「どう?」
「似合ってると思う」
「ふふ...、なんか嬉しいな」
「えっ?」
「いや...、このネックレスにかかってる付与効果、ローシュ決めたんだよね?」
「ああそうなんだが...、効果のほどは試して見ないと分からないな」
「ううん...、試さなくても分かるよ、なんだかあったかいから」
「そ...、そうか?」
なんか照れ臭くなった俺は人差し指で頰を掻いた。
「ありがとうローシュ」
彼女からのお礼の返事が嬉しくて何も言えない俺なのでした。
世間では普通の生活に戻り始め、学校の生徒は今日が登校日です。
なので、俺は自室で眠る妹の部屋に来ていました。
「カリン...、おはよう」
でも、俺が言葉を発しても妹からの返事はありません。
あれからずっと妹は眠ったままである。
母さんが言うには瞬間的に多くの魔力を吸われてしまった為、一種の無酸素状態に陥っていると言われた。
とは言え、母さんがちゃんとした治療を施してくれたので、命に別状はないとのことだ。
学校が始まっても登校しない妹を心配した友達が何人かお見舞いに来てくれたのは正直嬉しい出来事である。
その中にトウマのやつがいたのもちゃんと覚えている。
「全く...、我が妹ながら色んな人に愛されてるんだな...」
そう思うと少し安心するのだが、その反面彼女が目覚めた時に親父が死んだと告げるのが少々心苦しい...。
(俺が自分の口で伝えなくてはいけない...、母さんの口から伝えるのでは意味がないからな...)
母さんはあれから普通に振舞っているのだが、精神はどう考えてもやられている様に見えてならない。
最愛の人を失ったのだから当たり前と言えば当たり前なのだが、俺に不安そうな顔を見せまいと気丈に振る舞うその姿を、俺は誇りに思う。
(だからこそ、これくらいの事はやらないとな)
妹の世話は俺が全てやっている。
体を拭いたり、栄養のあるゼリー状の食べ物を食べさせてあげたりなど、意外とやる事はあったりするのだ。
妹の身の回りの世話をしていると、聞き覚えのある声がした。
「ローシュ、カリンの様子はどう?」
「エルシーか...、ああ依然として目覚めないままだ」
心配そうに妹を見つめてくれる彼女。
「そう...、カリンには私も世話になってるから、早く元気になって欲しいんだよね」
妹の頭を優しく撫でる彼女。
そのどれもが慈愛に満ちているように見えて美しいと感じてしまう俺がいた。
「なあエルシー...」
「何?」
そっとこちらを向く彼女の素顔が間近で見られない為、ちょっとだけ視線を外す。
「その...、前あげたネックレスまだ持ってるか?」
「ええ...、っていうかちゃんとつけてます!」
彼女の首元を見ると、以前あげた赤い羽がキラキラと光っているのが見えた。
このくらいも見えてないほどにこの時の俺はテンパっていたのである。
「あ...ああ!大事にしてくれてるんだな!」
「5万もするんだから当然よ!、それにローシュが始めてプレゼントしてくれた物だしね!」
「エルシー...」
その言葉が一番嬉しいと思える俺。
俺のあげた物を身につけてくれているという幸福を噛み締めながらも、一度返してもらうように言った。
「すまないが一旦それをこちらに渡してくれないか?」
「?、なんで?」
「そのネックレス、もしかしたら強化できるかもしれないんだ」
「?、あなた鍛治職人だったっけ?」
「いや違う、ただの剣士さ」
「そんな人がどうやって強化するのよ...」
疑いの目をかけてくるが、これは当然である。
基本的にこういうアクセサリー類に補助性能を付与できるのは一流の魔道士か手練れの鍛治職人くらいなのだ。
騎士とは言え、一介の剣士に付与魔法なんぞ扱えるはずもないと彼女は踏んでいる様な表情を浮かべている。
「まあ任せてくれ!、一回だけでいいからさ!」
「そこまでいうなら...、はいっ...」
ネックレスを一度外して俺に渡してくれた。
外したばかりなので、ほんのり彼女の温もりを感じられる。
(俺があげたネックレスをちゃんとつけてくれてるんだよな...)
そう思うと嬉しさがこみ上げて来た。
「ローシュ?、ちょっと早くしてくれないかな?、なんか恥ずかしいから...」
ほんの少し顔を赤らめる彼女は可愛い♡。
「あ...ああ///、じゃあやるぞ!」
俺は少し取り乱しながらもアクセサリーに補助効果を付与し始めた。
「材質...ok...、効果付与...ok...、形...ok...」
俺がぎゅっとネックレスの羽を握りしめると、一瞬で色が白に変わり、デザインも若干だけど変わった。
「できた...」
「本当にできた...!」
彼女は少し驚いた様な顔をしていました。
「エルシーつけて見てくれないか?」
「うん...」
そっと彼女の首にネックレスをかけてみると、結構似合ってます。
「どう?」
「似合ってると思う」
「ふふ...、なんか嬉しいな」
「えっ?」
「いや...、このネックレスにかかってる付与効果、ローシュ決めたんだよね?」
「ああそうなんだが...、効果のほどは試して見ないと分からないな」
「ううん...、試さなくても分かるよ、なんだかあったかいから」
「そ...、そうか?」
なんか照れ臭くなった俺は人差し指で頰を掻いた。
「ありがとうローシュ」
彼女からのお礼の返事が嬉しくて何も言えない俺なのでした。
0
お気に入りに追加
230
あなたにおすすめの小説

ハイエルフの幼女に転生しました。
レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは
神様に転生させてもらって新しい世界で
たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく
死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。
ゆっくり書いて行きます。
感想も待っています。
はげみになります。

精霊に転生した少女は周りに溺愛される
紅葉
恋愛
ある日親の喧嘩に巻き込まれてしまい、刺されて人生を終わらせてしまった少女がいた 。
それを見た神様は新たな人生を与える
親のことで嫌気を指していた少女は人以外で転生させてくれるようにお願いした。神様はそれを了承して精霊に転生させることにした。
果たしてその少女は新たな精霊としての人生の中で幸せをつかめることができるのか‼️
初めて書いてみました。気に入ってくれると嬉しいです!!ぜひ気楽に感想書いてください!

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

私はモブのはず
シュミー
恋愛
私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。
けど
モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。
モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。
私はモブじゃなかったっけ?
R-15は保険です。
ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。
注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。

転生幼女は幸せを得る。
泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

形成級メイクで異世界転生してしまった〜まじか最高!〜
ななこ
ファンタジー
ぱっちり二重、艶やかな唇、薄く色付いた頬、乳白色の肌、細身すぎないプロポーション。
全部努力の賜物だけどほんとの姿じゃない。
神様は勘違いしていたらしい。
形成級ナチュラルメイクのこの顔面が、素の顔だと!!
……ラッキーサイコー!!!
すっぴんが地味系女子だった主人公OL(二十代後半)が、全身形成級の姿が素の姿となった美少女冒険者(16歳)になり異世界を謳歌する話。


このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる