289 / 361
最後の言葉
しおりを挟む
「ローシュ...」
その声に俺は振り向いた。
「親父...!」
死の間際になって口を開く剣聖。
「喋るなって!、力使ったら余計に...」
俺がそこまで言いかけると、母さんが静止してきた。
「ローシュ...、夫の最後の言葉です、ちゃんと聞いてあげましょう...」
「最後って...」
口がふるふると震えている母さんの様子を見て、不安なのは俺だけではない事を悟った。
どんどん冷たくなって行く親父の手を握りしめながら、俺は最後の言葉を聞く事にしたのだが...。
「ローシュ...、お前は本当に良くやってくれた...、私の息子として恥ずかしくないどころか、誇りにさえ思う仕事ぶりには何度も驚かされたものだ...」
「るせぇ...」
「...、お前にも恋人が出来たんだったな...、ちゃんと幸せにしてやるんだぞ...」
「るせぇよ...」
「娘と妻のことは頼んだぞ...、なぜならお前は私の見込んだ唯一の剣聖候補だったのだからな...」
「うるせぇよ!!!」
黙って聞くつもりだったのだが、やはり感情が爆発してしまった。
怒りと不安と後悔の念が一斉に湧き出した証でもあった...。
「死ぬなんて許さないからな!!、親父!!」
「ローシュ...?」
不審がる親父の手を握りしめて俺は親父の良いところを言葉にして行く。
「親父はな!自分が思っているよりもずっとかっけぇ!んだ!!、そりゃたま~に気落ちする事もあったけど、基本的に強大な相手を前にしても一歩も引かず頭を動かし必ず打ち勝つその姿は、俺の心にしっかりと残り続けている!!」
俺は空いた手で自分の胸を叩いて鼓舞した。
「だからそんな親父が死ぬなんて絶対にありえねぇ!!!、生きろ!!」
力強く発言したのですが、自然の摂理には敵いません。
徐々に冷たくはなって行くのですが、微かに笑みを浮かべた親父。
「ふっ...生きろ...か、こんな時にまでお前という奴は...」
「なんだよ...、悪いか?」
「いいや...、実にいい言葉だ...、横で泣きわめかれるよりずっと逝きやすい...」
そう呟いた彼は、静かに目を閉じて最後の時を待つ。
その表情は先ほどよりも幸福を体現しているように思えた。
「...さよならは言わないからな...」
「ありがとうローシュ...、お前という息子を持った私は...、幸福だった...」
その言葉を最後に親父は息を引き取った。
偉大なる剣聖の死は、瞬く間に王国中に知れ渡った。
その声に俺は振り向いた。
「親父...!」
死の間際になって口を開く剣聖。
「喋るなって!、力使ったら余計に...」
俺がそこまで言いかけると、母さんが静止してきた。
「ローシュ...、夫の最後の言葉です、ちゃんと聞いてあげましょう...」
「最後って...」
口がふるふると震えている母さんの様子を見て、不安なのは俺だけではない事を悟った。
どんどん冷たくなって行く親父の手を握りしめながら、俺は最後の言葉を聞く事にしたのだが...。
「ローシュ...、お前は本当に良くやってくれた...、私の息子として恥ずかしくないどころか、誇りにさえ思う仕事ぶりには何度も驚かされたものだ...」
「るせぇ...」
「...、お前にも恋人が出来たんだったな...、ちゃんと幸せにしてやるんだぞ...」
「るせぇよ...」
「娘と妻のことは頼んだぞ...、なぜならお前は私の見込んだ唯一の剣聖候補だったのだからな...」
「うるせぇよ!!!」
黙って聞くつもりだったのだが、やはり感情が爆発してしまった。
怒りと不安と後悔の念が一斉に湧き出した証でもあった...。
「死ぬなんて許さないからな!!、親父!!」
「ローシュ...?」
不審がる親父の手を握りしめて俺は親父の良いところを言葉にして行く。
「親父はな!自分が思っているよりもずっとかっけぇ!んだ!!、そりゃたま~に気落ちする事もあったけど、基本的に強大な相手を前にしても一歩も引かず頭を動かし必ず打ち勝つその姿は、俺の心にしっかりと残り続けている!!」
俺は空いた手で自分の胸を叩いて鼓舞した。
「だからそんな親父が死ぬなんて絶対にありえねぇ!!!、生きろ!!」
力強く発言したのですが、自然の摂理には敵いません。
徐々に冷たくはなって行くのですが、微かに笑みを浮かべた親父。
「ふっ...生きろ...か、こんな時にまでお前という奴は...」
「なんだよ...、悪いか?」
「いいや...、実にいい言葉だ...、横で泣きわめかれるよりずっと逝きやすい...」
そう呟いた彼は、静かに目を閉じて最後の時を待つ。
その表情は先ほどよりも幸福を体現しているように思えた。
「...さよならは言わないからな...」
「ありがとうローシュ...、お前という息子を持った私は...、幸福だった...」
その言葉を最後に親父は息を引き取った。
偉大なる剣聖の死は、瞬く間に王国中に知れ渡った。
0
お気に入りに追加
230
あなたにおすすめの小説

ハイエルフの幼女に転生しました。
レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは
神様に転生させてもらって新しい世界で
たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく
死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。
ゆっくり書いて行きます。
感想も待っています。
はげみになります。

精霊に転生した少女は周りに溺愛される
紅葉
恋愛
ある日親の喧嘩に巻き込まれてしまい、刺されて人生を終わらせてしまった少女がいた 。
それを見た神様は新たな人生を与える
親のことで嫌気を指していた少女は人以外で転生させてくれるようにお願いした。神様はそれを了承して精霊に転生させることにした。
果たしてその少女は新たな精霊としての人生の中で幸せをつかめることができるのか‼️
初めて書いてみました。気に入ってくれると嬉しいです!!ぜひ気楽に感想書いてください!

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

私はモブのはず
シュミー
恋愛
私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。
けど
モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。
モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。
私はモブじゃなかったっけ?
R-15は保険です。
ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。
注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。

転生幼女は幸せを得る。
泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

形成級メイクで異世界転生してしまった〜まじか最高!〜
ななこ
ファンタジー
ぱっちり二重、艶やかな唇、薄く色付いた頬、乳白色の肌、細身すぎないプロポーション。
全部努力の賜物だけどほんとの姿じゃない。
神様は勘違いしていたらしい。
形成級ナチュラルメイクのこの顔面が、素の顔だと!!
……ラッキーサイコー!!!
すっぴんが地味系女子だった主人公OL(二十代後半)が、全身形成級の姿が素の姿となった美少女冒険者(16歳)になり異世界を謳歌する話。


このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる