なぜか異世界に幼女で転生してしまった私は、優秀な親の子供だったのですが!!

ルシェ(Twitter名はカイトGT)

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エレネアという少女⑤

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「じゃあ行くよ...」

 彼はそう呟くと、一瞬で俺の視界から消える。

(消えた!?)

 俺が辺りを見回しても何もない。

(馬鹿な!、どこへ行ったんだ!?)

 必死に周りを探しても、彼の髪の毛一本見つからない。

「ここだよ...」

「えっ?」

 俺が声のした方向、つまり自分の影を見つめていると、そこから彼とあの闇のスライムが急に姿を現し、俺を思いっきり殴られてしまいました。

「!?」

 あまりにも唐突すぎて防御するまもなく、モロに一撃を貰ってしまいます。

「ぐっ!??」

 腹に手痛いのを一撃...。

「いてぇ...」

 なんとか腹を抑えながら立ち上がり、息を乱しながら奴を見つめなおす。

(なんだ今の...、俺は奴から一瞬たりとも目を離さなかったのに、奴はいるの間にか俺の影に潜んでいた...、俺も知らない魔法か...?)

 謎が深まる中、俺は取り敢えず剣を構え直す。

「お兄さん本当にお姉ちゃんに勝てたの?」

 挑発のつもりでしょうか?。

「どういう事だ?」

「その程度の実力で姉さんを殺せるとは思えないな~...、もしかしたら心理的アドバンテージでも取ってた?」

「...それは...」

 ちらっとカリンの方を見やる。

(...まさかとは思うが、俺がカリンの兄貴だから手を抜いていた...のか?)

 少し考えるとそれが妙にしっくりきてしまう。

「むっ...」

「あははなにその顔w、もしかして図星なのかな~?」

「黙れ!」

 感情的な声を上げつつ俺の精神は安定している。

(まずはこいつをなんとかしないとな...)

 剣を彼にめがけて投げた瞬間、次の剣を錬成する。

 この時、自分の影にずっと剣を向けたまま走った。

(これなら例え俺の影から出てきても対処できるな...、さあどうする?)

 俺は彼に問題を出すようにこの状況を作り上げたのだが、彼はふふんと笑い詠唱を始めた。

(まさか今この状況で詠唱だと!?、正気か!?)

 俺の剣はもう放たれているので止める事は出来ない。

 元来、強力な魔法にはそれ相応の詠唱が必要なものである。

 確かに詠唱破棄や無詠唱を基本とする魔術師も一定多数存在するが、それでは本来魔法が持つ力の半分も引き出せないのだ。

 なので、そう言った魔術師がよく行うのは質より量戦法のはずなのだが...。

(こいつ...、躱す気さえないぞ!)

 ぐんぐん飛距離を伸ばして行く俺の剣は、ついに奴の体を捉え突き刺さった!。

「あっ!」

 俺は思わず声を上げてしまう。

 こんな簡単に決着がついてしまってもいいのだろうか?。

 これほどまでに強大な魔力を持つ彼が、こんな直線的な攻撃を躱せないはずがない。

 そう思い、注意しながら剣が突き刺さる彼の体を見ていると...。

「ああ...痛いな...、姉さんもこんな気分だったんだよね...、苦しかったんだね...痛かったんだね...」

 急に剣が突き刺さる部位を抑え泣き出す彼。

 その異様な光景に、俺は思わず息を飲んだ。

(なんなんだこいつは...、いやそれよりもカリンを!)

 俺は急いで彼の足元に転がる妹の元まで走り救出した。

(良し!魔力を全部吸われて眠っているみたいだけど...、体の方は大丈夫みたいだ!)

 俺が心の中で安堵していると...。

「ふ~ん...、お兄さんの大切な人ってそいつなんだ...」

 興味を持ったのかカリンをながら、膨張した闇の拳で妹を攻撃してきました。

(やばい!)

 俺は彼の反撃の予兆に気がつかず、背中でその攻撃を受けて妹を守ります。

「ぐっ...」

「ほらほら...、その子見捨てないとお兄さんが死んじゃうよ?」

 笑いながら何度も強力な拳が俺の背中を殴り続けました。

(とてつもなくいてぇ...、けど俺が逃げたらカリンが...)

 手の中で眠る妹を見ていると逃げる訳にはいかない。

 とにかく耐える。

 何度も、何度でも...、激痛に耐えて妹を守りきる!。

「ぐ...ぅ...」

 俺は膝をつき、息を乱しながらも意地だけで彼の攻撃から妹を守っていた。

「そこまで必死に守るなんてよく分からないな...、その子はお兄さんの何なの?」

 それを聞かれたとき、俺は笑いながら答えます。

「こいつか?、こいつは俺の妹のカリンだ...、世界で一番大切で『兄』である俺が守らなくてはいけない存在の...、『妹』だよ!」

「妹...?」

 その言葉を聞くと、突然彼の様子が変貌しました。

「あんた達も兄妹だったのか...!、だったら何で...何で僕の姉を殺したんだ!!」

 ごもっともな私怨を歌いながら、スライムの形を鋭利な刃物に変形させる彼の表情は、先程までとは打って変わり、かなり感情を剥き出している。

 それが俺の体を引き裂こうと勢いよく振り降ろされた。

(ヘっ、意識ももうろうとしてきやがった...、カッコいいこと言っておいてこのザマか...、カリンすまねぇな...)

 せめて最期の一撃だけでも俺が請け負おうと妹の体を精一杯庇う俺だったが...、いつまでたっても最期の時がやってきません。

(なんだ...?)

 俺がゆっくりと後ろを振り向くと、何とエレネアの放った触手達がルクルの黒いスライムを捕らえていたのでした。



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