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実の娘...
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母さんは泣き止むとそのままコテンと眠りについてしまいました。
どうやらあの封印の魔法はかなりの魔法力を消耗するらしく、一度使えば賢聖と言えどしばらくの間は眠ったままになるそうです。
母さんの横で私達家族が看病していると、不意にプラム先生が声をかけてきました。
「ちょっとあんた、こっちに来なさい」
「プラム先生...」
私は彼女について行くことにしました。
~クティル城図書館~
お城の中にある図書室で座る先生の前に座る私。
流石にお祭りの日にこんな場所にいる人はいないようで、私と先生以外には誰もいませんでした。
「先生...、なんで母さんはあの時あんな悲しそうな表情をしたんでしょうか...、私はただ...、ただ魔法を教えてほしくて!」
「あなたの熱意は痛い程分かる...、でもね、あなたその言葉はあの子にとって毒にしかならないのよ...」
「どういう事ですか?」
思わず疑問に思ってしまう。
子が親の技術を継承したいと思う事がそんなにおかしい事だろうか?。
「あの子にとってお前はとても大切な娘なのよ...」
「それは分かっています!、母さんは私のことを...!」
私はそこまで言いかけると思わずやめてしまいました。
そうです...。
母さんが愛しているのはカリンという“実の娘”であり断じて餅月林華という“赤の他人”などでは無いという事に気がついてしまったからです。
母さんから感じられる慈愛とは、私が“カリン”であるからこそ得られる物なのだとこの時改めて実感してしまいました。
「あっ...」
口の動きが急に止まり、不気味なくらいの沈黙が辺りを包み込む。
それを不審に思ったのか、先生は少し妙な表情を浮かべてこう呟きました。
「どうしたのよ?、言いたいことがあるならハッキリ言いなさい!」
「...」
何も言えません...。
言えるわけがない...。
私はあなた達の知るカリンじゃないと誰が言えるでしょうか...。
言えたとしても信じてくれるわけがありません。
私が異世界人だって...。
「ふんっ、まあいいのよ、喋りたくなければね、でも私からも言わせて頂戴」
彼女はスッと立ち上がって私にこう言いました。
「お願いだからカリン...、あの子の前で賢聖を継ぐなんて事だけは言わないで頂戴...、もし貴方が自分の意思でそれを望むというのであれば止めはしない...、だけれどエルカの前だけでは言わないでほしい...」
私の瞳をしっかりと見つめてくる彼女にはどことなく愛を感じられます。
これは姉妹愛とでも言えばいいのでしょうか?。
私に上手い言葉は思いつきませんけど、遠くはないでしょう。
「...、先生がそういうのでしたら、私は従います...、母の前ではそういう類の事は一切呟かない事をここに約束しましょう...」
そう宣言する私の姿を見た彼女は少し瞳を狭める。
「カリン、貴方って、時々年相応じゃ無いようなセリフ吐くわよね、もしかしたら貴方...」
「なんですか?」
気になる言葉を吐き続ける先生に意識を集中させる私でしたが、帰ってきた言葉は...。
「ううん、私の思い違いね」
なんだか歯切れの悪い回答が気になりますが、今はこれ以上彼女と一緒にいたくありません。
「失礼します」
私はそれだけ呟き、逃げるように図書室から出るのでした。
どうやらあの封印の魔法はかなりの魔法力を消耗するらしく、一度使えば賢聖と言えどしばらくの間は眠ったままになるそうです。
母さんの横で私達家族が看病していると、不意にプラム先生が声をかけてきました。
「ちょっとあんた、こっちに来なさい」
「プラム先生...」
私は彼女について行くことにしました。
~クティル城図書館~
お城の中にある図書室で座る先生の前に座る私。
流石にお祭りの日にこんな場所にいる人はいないようで、私と先生以外には誰もいませんでした。
「先生...、なんで母さんはあの時あんな悲しそうな表情をしたんでしょうか...、私はただ...、ただ魔法を教えてほしくて!」
「あなたの熱意は痛い程分かる...、でもね、あなたその言葉はあの子にとって毒にしかならないのよ...」
「どういう事ですか?」
思わず疑問に思ってしまう。
子が親の技術を継承したいと思う事がそんなにおかしい事だろうか?。
「あの子にとってお前はとても大切な娘なのよ...」
「それは分かっています!、母さんは私のことを...!」
私はそこまで言いかけると思わずやめてしまいました。
そうです...。
母さんが愛しているのはカリンという“実の娘”であり断じて餅月林華という“赤の他人”などでは無いという事に気がついてしまったからです。
母さんから感じられる慈愛とは、私が“カリン”であるからこそ得られる物なのだとこの時改めて実感してしまいました。
「あっ...」
口の動きが急に止まり、不気味なくらいの沈黙が辺りを包み込む。
それを不審に思ったのか、先生は少し妙な表情を浮かべてこう呟きました。
「どうしたのよ?、言いたいことがあるならハッキリ言いなさい!」
「...」
何も言えません...。
言えるわけがない...。
私はあなた達の知るカリンじゃないと誰が言えるでしょうか...。
言えたとしても信じてくれるわけがありません。
私が異世界人だって...。
「ふんっ、まあいいのよ、喋りたくなければね、でも私からも言わせて頂戴」
彼女はスッと立ち上がって私にこう言いました。
「お願いだからカリン...、あの子の前で賢聖を継ぐなんて事だけは言わないで頂戴...、もし貴方が自分の意思でそれを望むというのであれば止めはしない...、だけれどエルカの前だけでは言わないでほしい...」
私の瞳をしっかりと見つめてくる彼女にはどことなく愛を感じられます。
これは姉妹愛とでも言えばいいのでしょうか?。
私に上手い言葉は思いつきませんけど、遠くはないでしょう。
「...、先生がそういうのでしたら、私は従います...、母の前ではそういう類の事は一切呟かない事をここに約束しましょう...」
そう宣言する私の姿を見た彼女は少し瞳を狭める。
「カリン、貴方って、時々年相応じゃ無いようなセリフ吐くわよね、もしかしたら貴方...」
「なんですか?」
気になる言葉を吐き続ける先生に意識を集中させる私でしたが、帰ってきた言葉は...。
「ううん、私の思い違いね」
なんだか歯切れの悪い回答が気になりますが、今はこれ以上彼女と一緒にいたくありません。
「失礼します」
私はそれだけ呟き、逃げるように図書室から出るのでした。
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