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世間話
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私は教会内の祭壇の間にある椅子に座り、シスターと世間話をしていた。
カリンにはこの間に教会内の子供達と遊んでもらっている。
たまには娘をこの場に連れてこようと思ったのは、こんな子供達もいるんだという事実を娘に教えるためである。
そういえば、最近ヤヨイちゃんに会ったので、その事を話題に出してみた。
「ヤヨイちゃんも元気に学校へ通っている様で何よりですね、アルエッタさん」
「そうですね...、彼女がここに来た時はまだ赤子でどうすれば良い皆考え込んでいましたからね、エルカ様、その節はどうもありがとうございました」
深々と頭を下げる彼女を見て声をかける。
「大丈夫、頭をあげてくださいな、貴女は充分勤めを全うしているわ」
そういうと頭を上げてこちらを見つめてくる。
「エルカ様にそう言って頂けるとは、光栄ですね」
「ふふっ、貴女は少し真面目すぎるのよ、ちょっとくらい肩の力を抜いて見ても良いと思うわ」
そう、彼女は少し真面目だと思われる点が多々見られる。
今も昔も彼女は変わらない。
この子が子供の頃から成長を見てきているので間違いない。
まだ少し表情は子供っぽさを残しているが、彼女の心はもう立派な人間だと言える。
私は微笑みながら彼女の頭を撫でてあげると、彼女は少し恥ずかしそうに顔を背けた。
「エルカ様...もう私も14歳なのですからそういうことは...」
照れる顔が可愛いのでつい続けてしまう。
「歳がなんだというの?、貴女も私の大切な子達の1人なのだからこうするのは普通なことよ...」
そう言いながら彼女を抱き寄せ、赤子をあやすように優しく包み込む。
「エルカ...様...」
彼女も幸福そうな顔で身を委ねてくるので、ますます子供のように扱いたくなるが、これ以上干渉するのは彼女の自立心の邪魔になると思いやめる。
そっと体から手を放しながら、私は彼女の顔を見ていた。
「アルエッタ...、これからもこの教会を宜しくね、貴女がいてくれた方が皆安心するから...」
「エルカ様...、お任せ下さい!私はここのシスターになれて幸せです」
力強いその言葉を聞けた私は安心する。
彼女は徐に立ち上がり教会に描かれているステンドグラスを見上げこう言った。
「早いものですね...、ヤヨイさんを拾ったあの日からもう6年ですか...」
「そうね...、その一年前まで戦争があったなんて今となっては信じられないわ...」
私とシスターは黙祷に入る。
あの戦争は幼き日の彼女の心にも大きな傷をつけた。
彼女だけではない、恐怖と絶望、そして死を植え付けられた者は少なくない。
実際に私も何人もの死を見てきたし実感としてまだ残っている。
恐らく何年経とうが消えることのない死の旋律はずっと鳴り響くままなのだ。
(せめてこれから生きゆく者達にそんな経験させたくない...)
そう思うと私は頑張ろうと思えるのだ。
「さて、今日は教会の子達に母さん特製のお料理振舞っちゃおうかな!」
「えっ!?、エルカ様が作ってくださるのですか!?」
急なことに驚いた様子の彼女の表情は、無邪気な子供のようであった。
「ええ、任せて!お母さん張り切っちゃうわ!」
私は笑いながら腕をパンっと叩いた。
カリンにはこの間に教会内の子供達と遊んでもらっている。
たまには娘をこの場に連れてこようと思ったのは、こんな子供達もいるんだという事実を娘に教えるためである。
そういえば、最近ヤヨイちゃんに会ったので、その事を話題に出してみた。
「ヤヨイちゃんも元気に学校へ通っている様で何よりですね、アルエッタさん」
「そうですね...、彼女がここに来た時はまだ赤子でどうすれば良い皆考え込んでいましたからね、エルカ様、その節はどうもありがとうございました」
深々と頭を下げる彼女を見て声をかける。
「大丈夫、頭をあげてくださいな、貴女は充分勤めを全うしているわ」
そういうと頭を上げてこちらを見つめてくる。
「エルカ様にそう言って頂けるとは、光栄ですね」
「ふふっ、貴女は少し真面目すぎるのよ、ちょっとくらい肩の力を抜いて見ても良いと思うわ」
そう、彼女は少し真面目だと思われる点が多々見られる。
今も昔も彼女は変わらない。
この子が子供の頃から成長を見てきているので間違いない。
まだ少し表情は子供っぽさを残しているが、彼女の心はもう立派な人間だと言える。
私は微笑みながら彼女の頭を撫でてあげると、彼女は少し恥ずかしそうに顔を背けた。
「エルカ様...もう私も14歳なのですからそういうことは...」
照れる顔が可愛いのでつい続けてしまう。
「歳がなんだというの?、貴女も私の大切な子達の1人なのだからこうするのは普通なことよ...」
そう言いながら彼女を抱き寄せ、赤子をあやすように優しく包み込む。
「エルカ...様...」
彼女も幸福そうな顔で身を委ねてくるので、ますます子供のように扱いたくなるが、これ以上干渉するのは彼女の自立心の邪魔になると思いやめる。
そっと体から手を放しながら、私は彼女の顔を見ていた。
「アルエッタ...、これからもこの教会を宜しくね、貴女がいてくれた方が皆安心するから...」
「エルカ様...、お任せ下さい!私はここのシスターになれて幸せです」
力強いその言葉を聞けた私は安心する。
彼女は徐に立ち上がり教会に描かれているステンドグラスを見上げこう言った。
「早いものですね...、ヤヨイさんを拾ったあの日からもう6年ですか...」
「そうね...、その一年前まで戦争があったなんて今となっては信じられないわ...」
私とシスターは黙祷に入る。
あの戦争は幼き日の彼女の心にも大きな傷をつけた。
彼女だけではない、恐怖と絶望、そして死を植え付けられた者は少なくない。
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恐らく何年経とうが消えることのない死の旋律はずっと鳴り響くままなのだ。
(せめてこれから生きゆく者達にそんな経験させたくない...)
そう思うと私は頑張ろうと思えるのだ。
「さて、今日は教会の子達に母さん特製のお料理振舞っちゃおうかな!」
「えっ!?、エルカ様が作ってくださるのですか!?」
急なことに驚いた様子の彼女の表情は、無邪気な子供のようであった。
「ええ、任せて!お母さん張り切っちゃうわ!」
私は笑いながら腕をパンっと叩いた。
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