85 / 361
読まれた!
しおりを挟む
兄を連れて自分の部屋に向かう私は先にドアノブに手をかけた。
あっちから呼べと言ってきたとはとはいえ、やっぱり先に私が入った方がトウマも安心するだろうという私なりの配慮である。
「連れてきたよ~」
私が自分の部屋に戻りトウマを見るとハッと息を飲んでしまった。
なぜなら、自分のオリジナル小説を読んでいたからであり、それを見た私は変な汗が止まらなくなっていたのだ。
「おお、カリンか、カリンの兄もいるみたいだし暇つぶしは終わりだな」
そう言いながら私の机の上に原稿用紙を綺麗に置き直した。
つい気になったので聞いてみる。
「読んだの?」
「ああ」
「ああ...じゃないわよ!何勝手に読んでるのよ!」
「何怒ってんだ...、別にいいだろ減るもんでもないんだしさ」
こいつは反省してないなと言動でわかる。
女の子の私物を勝手に漁るなんてトウマの気がしれない。
「たしかに減るものじゃないけどね、私の作った小説を勝手に読むなんてどうかしてるわ」
「なっ...、そこまでいうなら一応謝っておくすまん」
なんだかんだ言いながら謝ってくれたので許す。
「まあ、謝ってくれたし...今回は許してもいいかな」
「でもカリン、お前文才あるな!基本活字なんか読まない俺が読んでも結構面白かったぞ」
「本当!?」
私は食い気味に彼へと顔を近づけた。
自分の作品を面白いと言われることに嬉しさがこみ上げてくる。
「どの辺が面白かったの?」
「まあ、そうだな...主人公の人形使いがだんだんと町の皆に好かれていく過程がしっかりと書かれていたのが良かったかな、最初の女の子に人形遊びで笑顔をあげる話なんかはとても良くできてると思ったな」
「導入部分は大事だと思ったから丁寧に書いたんだ、トウマちゃんと読んでるじゃん」
私は嬉しさのあまり彼の腹に軽く肘を当てると、彼は「当然」と答えた。
「俺は面白いものは素直に面白いというぞ、逆に面白くなかったら何も言わずにもう読んでなかったと思うしな」
確かに彼は私達が入ってくるまでの間ずっと私の小説を読んでいたことになる。
そのページ数も10枚ほど行っていたと思うので結構読んでいるなとは思っていた。
私が兄を呼んでくるあの僅かな時間にそこまで読んでいたという事は速読だとしても面白かったという事だろう。
さっきまでの恥ずかしさは既にどこかへ飛び去っていた。
彼のこの顔は嘘をついているような感じではない。
本当の本音で面白いと言ってくれているのだと思うと何かこみ上げて来るものがある。
ついつい口走る私。
「トウマ...もし良かったらまた今度私の物語を読んでくれない?新作書くから」
「おっ?いいけどもう怒らなくていいのか?」
私は首を縦に振り「いいよ」と答える。
「トウマに面白いって言って貰えたことの方が何倍も嬉しかったから...」
そんな私の顔を見ないように後ろを振り向いた彼は小さく呟いた。
「その顔はずるいだろ...」
小さく呟かれた彼の本音。
だが私はその言葉を聞き取れていなかったので聞き返す。
「何か言った?」
「何も言ってねーよ!」
「何よ!気になるじゃない!」
私は彼に何度も尋ねてみるが答えてくれる気配はない。
そんな私達のやり取りを見ていた兄は静かに笑っていた。
あっちから呼べと言ってきたとはとはいえ、やっぱり先に私が入った方がトウマも安心するだろうという私なりの配慮である。
「連れてきたよ~」
私が自分の部屋に戻りトウマを見るとハッと息を飲んでしまった。
なぜなら、自分のオリジナル小説を読んでいたからであり、それを見た私は変な汗が止まらなくなっていたのだ。
「おお、カリンか、カリンの兄もいるみたいだし暇つぶしは終わりだな」
そう言いながら私の机の上に原稿用紙を綺麗に置き直した。
つい気になったので聞いてみる。
「読んだの?」
「ああ」
「ああ...じゃないわよ!何勝手に読んでるのよ!」
「何怒ってんだ...、別にいいだろ減るもんでもないんだしさ」
こいつは反省してないなと言動でわかる。
女の子の私物を勝手に漁るなんてトウマの気がしれない。
「たしかに減るものじゃないけどね、私の作った小説を勝手に読むなんてどうかしてるわ」
「なっ...、そこまでいうなら一応謝っておくすまん」
なんだかんだ言いながら謝ってくれたので許す。
「まあ、謝ってくれたし...今回は許してもいいかな」
「でもカリン、お前文才あるな!基本活字なんか読まない俺が読んでも結構面白かったぞ」
「本当!?」
私は食い気味に彼へと顔を近づけた。
自分の作品を面白いと言われることに嬉しさがこみ上げてくる。
「どの辺が面白かったの?」
「まあ、そうだな...主人公の人形使いがだんだんと町の皆に好かれていく過程がしっかりと書かれていたのが良かったかな、最初の女の子に人形遊びで笑顔をあげる話なんかはとても良くできてると思ったな」
「導入部分は大事だと思ったから丁寧に書いたんだ、トウマちゃんと読んでるじゃん」
私は嬉しさのあまり彼の腹に軽く肘を当てると、彼は「当然」と答えた。
「俺は面白いものは素直に面白いというぞ、逆に面白くなかったら何も言わずにもう読んでなかったと思うしな」
確かに彼は私達が入ってくるまでの間ずっと私の小説を読んでいたことになる。
そのページ数も10枚ほど行っていたと思うので結構読んでいるなとは思っていた。
私が兄を呼んでくるあの僅かな時間にそこまで読んでいたという事は速読だとしても面白かったという事だろう。
さっきまでの恥ずかしさは既にどこかへ飛び去っていた。
彼のこの顔は嘘をついているような感じではない。
本当の本音で面白いと言ってくれているのだと思うと何かこみ上げて来るものがある。
ついつい口走る私。
「トウマ...もし良かったらまた今度私の物語を読んでくれない?新作書くから」
「おっ?いいけどもう怒らなくていいのか?」
私は首を縦に振り「いいよ」と答える。
「トウマに面白いって言って貰えたことの方が何倍も嬉しかったから...」
そんな私の顔を見ないように後ろを振り向いた彼は小さく呟いた。
「その顔はずるいだろ...」
小さく呟かれた彼の本音。
だが私はその言葉を聞き取れていなかったので聞き返す。
「何か言った?」
「何も言ってねーよ!」
「何よ!気になるじゃない!」
私は彼に何度も尋ねてみるが答えてくれる気配はない。
そんな私達のやり取りを見ていた兄は静かに笑っていた。
0
お気に入りに追加
230
あなたにおすすめの小説

ハイエルフの幼女に転生しました。
レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは
神様に転生させてもらって新しい世界で
たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく
死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。
ゆっくり書いて行きます。
感想も待っています。
はげみになります。

精霊に転生した少女は周りに溺愛される
紅葉
恋愛
ある日親の喧嘩に巻き込まれてしまい、刺されて人生を終わらせてしまった少女がいた 。
それを見た神様は新たな人生を与える
親のことで嫌気を指していた少女は人以外で転生させてくれるようにお願いした。神様はそれを了承して精霊に転生させることにした。
果たしてその少女は新たな精霊としての人生の中で幸せをつかめることができるのか‼️
初めて書いてみました。気に入ってくれると嬉しいです!!ぜひ気楽に感想書いてください!

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

私はモブのはず
シュミー
恋愛
私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。
けど
モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。
モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。
私はモブじゃなかったっけ?
R-15は保険です。
ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。
注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。

転生幼女は幸せを得る。
泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

形成級メイクで異世界転生してしまった〜まじか最高!〜
ななこ
ファンタジー
ぱっちり二重、艶やかな唇、薄く色付いた頬、乳白色の肌、細身すぎないプロポーション。
全部努力の賜物だけどほんとの姿じゃない。
神様は勘違いしていたらしい。
形成級ナチュラルメイクのこの顔面が、素の顔だと!!
……ラッキーサイコー!!!
すっぴんが地味系女子だった主人公OL(二十代後半)が、全身形成級の姿が素の姿となった美少女冒険者(16歳)になり異世界を謳歌する話。


このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる