77 / 361
馬鹿!
しおりを挟む
俺が目を覚ますと、そこは夕日が差し込む広場であった。
身体中が痛く、立ち上がれそうにない。
そんな俺を覗き込んで来た人がいた。
カリンだ。
少し焦ってしまい、俺は顔を背ける。
「おい、そんなに見つめるな...」
そう言った俺に対して彼女はこう返して来た。
「馬鹿!、もう少しで死んじゃうかもしれなかったんだよ!兄さんが居なかったら今頃きっと...」
俺はゾッとした。
確か俺はあの化け物どもに針串刺しにされたんだった事を思い出す。
だが、不思議と血はもう出ていない。
きっとカリンが傷を魔法で癒してくれたのだろう。
その証拠に彼女は未だに魔法を使ってくれている。
彼女の優しさに俺は心を惹かれる。
「...悪かったな...」
目を背けながら俺はそう呟いた。
結局の所、俺はあの時から何も成長していないのだと思ってしまう。
また彼女に助けられたということはそういうことなのだ。
しばらくの沈黙を破るようにフレイがすまなそうな言葉を発する。
「...カリンさん、僕が彼を誘ったんだ、だから彼は悪くないよ、本当にごめん...」
驚いたような顔でフレイの方を見るカリンを見た俺は何も言えなかった。
「そう...だったんだ...」
小さく呟く彼女。
違う...、フレイは嘘を言っている。
今回の件も俺からフレイに言ったことなのに、俺は彼に助け舟を出されているのだ。
そう思うと胸が熱くなり、涙が一筋だけ溢れた。
「まあいいじゃねぇかカリン!、にーにがいて2人とも助かったんだからな!」
カリンの兄さんがどうにか明るい雰囲気を作ろうと四苦八苦しているが、どうにもそんな感じにはなりそうにない。
「嘘だよね?フレイ君、いつもトウマから挑戦しているの私は知ってるよ...」
真剣な眼差しで見つめられたあいつは目をそらしてしまった。
それを見た彼女の表情は険しいものとなっていて見ていられない。
「今目をそらしたよね?、それって自分の発言に自信がない現れだよね?」
空気に耐えられず俺は自分が提案した事を言う。
「違う...、フレイは悪くない、俺が全部提案して実行した!俺が悪い!」
「トウマ...」
分かっている、あいつが俺を庇おうとしてくれた事くらい。
でも、俺たちの関係を知っているカリンには意味がない事くらい馬鹿な俺でもわかる。
「...嬉しい、トウマは嘘をつかないでくれたんだね...」
本当の事を言ってしまえば彼女は納得するだろう。
事実、そこには彼女の笑顔があった。
嘘をついてもろくな事がない事くらい今の自分でも理解できる。
いや、むしろ嘘をつけば彼女はきっと涙を流していただろう。
彼女はそう言う性格であることはよく知っているのだから...。
俺が恋したカリンという女の子は、眩しいくらいの笑顔を俺に向けてくれていた。
俺が1番見たくないものは、お前の泣き顔だからな...。
身体中が痛く、立ち上がれそうにない。
そんな俺を覗き込んで来た人がいた。
カリンだ。
少し焦ってしまい、俺は顔を背ける。
「おい、そんなに見つめるな...」
そう言った俺に対して彼女はこう返して来た。
「馬鹿!、もう少しで死んじゃうかもしれなかったんだよ!兄さんが居なかったら今頃きっと...」
俺はゾッとした。
確か俺はあの化け物どもに針串刺しにされたんだった事を思い出す。
だが、不思議と血はもう出ていない。
きっとカリンが傷を魔法で癒してくれたのだろう。
その証拠に彼女は未だに魔法を使ってくれている。
彼女の優しさに俺は心を惹かれる。
「...悪かったな...」
目を背けながら俺はそう呟いた。
結局の所、俺はあの時から何も成長していないのだと思ってしまう。
また彼女に助けられたということはそういうことなのだ。
しばらくの沈黙を破るようにフレイがすまなそうな言葉を発する。
「...カリンさん、僕が彼を誘ったんだ、だから彼は悪くないよ、本当にごめん...」
驚いたような顔でフレイの方を見るカリンを見た俺は何も言えなかった。
「そう...だったんだ...」
小さく呟く彼女。
違う...、フレイは嘘を言っている。
今回の件も俺からフレイに言ったことなのに、俺は彼に助け舟を出されているのだ。
そう思うと胸が熱くなり、涙が一筋だけ溢れた。
「まあいいじゃねぇかカリン!、にーにがいて2人とも助かったんだからな!」
カリンの兄さんがどうにか明るい雰囲気を作ろうと四苦八苦しているが、どうにもそんな感じにはなりそうにない。
「嘘だよね?フレイ君、いつもトウマから挑戦しているの私は知ってるよ...」
真剣な眼差しで見つめられたあいつは目をそらしてしまった。
それを見た彼女の表情は険しいものとなっていて見ていられない。
「今目をそらしたよね?、それって自分の発言に自信がない現れだよね?」
空気に耐えられず俺は自分が提案した事を言う。
「違う...、フレイは悪くない、俺が全部提案して実行した!俺が悪い!」
「トウマ...」
分かっている、あいつが俺を庇おうとしてくれた事くらい。
でも、俺たちの関係を知っているカリンには意味がない事くらい馬鹿な俺でもわかる。
「...嬉しい、トウマは嘘をつかないでくれたんだね...」
本当の事を言ってしまえば彼女は納得するだろう。
事実、そこには彼女の笑顔があった。
嘘をついてもろくな事がない事くらい今の自分でも理解できる。
いや、むしろ嘘をつけば彼女はきっと涙を流していただろう。
彼女はそう言う性格であることはよく知っているのだから...。
俺が恋したカリンという女の子は、眩しいくらいの笑顔を俺に向けてくれていた。
俺が1番見たくないものは、お前の泣き顔だからな...。
0
お気に入りに追加
230
あなたにおすすめの小説

ハイエルフの幼女に転生しました。
レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは
神様に転生させてもらって新しい世界で
たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく
死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。
ゆっくり書いて行きます。
感想も待っています。
はげみになります。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

精霊に転生した少女は周りに溺愛される
紅葉
恋愛
ある日親の喧嘩に巻き込まれてしまい、刺されて人生を終わらせてしまった少女がいた 。
それを見た神様は新たな人生を与える
親のことで嫌気を指していた少女は人以外で転生させてくれるようにお願いした。神様はそれを了承して精霊に転生させることにした。
果たしてその少女は新たな精霊としての人生の中で幸せをつかめることができるのか‼️
初めて書いてみました。気に入ってくれると嬉しいです!!ぜひ気楽に感想書いてください!

私はモブのはず
シュミー
恋愛
私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。
けど
モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。
モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。
私はモブじゃなかったっけ?
R-15は保険です。
ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。
注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。

転生幼女は幸せを得る。
泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

形成級メイクで異世界転生してしまった〜まじか最高!〜
ななこ
ファンタジー
ぱっちり二重、艶やかな唇、薄く色付いた頬、乳白色の肌、細身すぎないプロポーション。
全部努力の賜物だけどほんとの姿じゃない。
神様は勘違いしていたらしい。
形成級ナチュラルメイクのこの顔面が、素の顔だと!!
……ラッキーサイコー!!!
すっぴんが地味系女子だった主人公OL(二十代後半)が、全身形成級の姿が素の姿となった美少女冒険者(16歳)になり異世界を謳歌する話。


私、のんびり暮らしたいんです!
クロウ
ファンタジー
神様の手違いで死んだ少女は、異世界のとある村で転生した。
神様から貰ったスキルで今世はのんびりと過ごすんだ!
しかし番を探しに訪れた第2王子に、番認定をされて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる