なぜか異世界に幼女で転生してしまった私は、優秀な親の子供だったのですが!!

ルシェ(Twitter名はカイトGT)

文字の大きさ
上 下
49 / 361

アアルの空腹

しおりを挟む
「お腹す~いた♪お腹す~いた♪」

 帰り道にその言葉を連呼するアアルに、私は(毎回昼過ぎ時にクピピ~って泣いていたのは、お腹すいた~って意味だったのか...)と静かに微笑んでいた。

「ただいま~」

 私とお兄ちゃんは家の扉を開く。

「お帰りなさい、カリンちゃんにローシュ、もうご飯できてるから早く座りなさい」

 母さんはもうご飯の用意をしていたので、私たちの帰りを待っていたのだろう。
 父さんがリビングのソファに座りながらくつろいでいるのが見えた。
 父さんやお兄ちゃんがいるのが、少し不思議な気分にさせるが、家族が揃うというのは悪い気がしない。
 いつもの席に座り、すでに作られていたシチューに手をつける。
 やっぱりお母さんの料理は美味しい。
 野菜などの素材がいいのか、母さんの技術がすごいのかは分からないが、とにかく美味しい。
 私には美味しさを伝える表現が思いつかないので、この美味しさを言葉で表現できないのが残念である。

「美味しい!」

 私が声を出すと、母さんがふふっと笑うのが見えて少し恥ずかしくなった。
 でも美味しいのは本当なので嘘はつかない。
 そうしていると、頭の上のアアルがよだれを垂らしていたので、いつもの赤い木の実を食べさせようとしたのだが...。

「アアルもそれがいい」

 そう言いながら私のシチューにクチバシを入れたので、慌てて止める。

「アアル!!?それはダメ!」

 人間用の食料など、他の生物に合う訳がない。
 だが、それ以前の問題であり、アアルが口をつけると、あまりの熱さに飛び跳ねた。

「アトゥイ!!」

 その声を聞いた私は思わず声を出して笑った。

「もう!だから言ったのに!」

「ムゥ~...、でも美味しいね母さんの作るシチュー」

 熱さに少し慣れたのか、美味しそうにシチューを食べ始めるアアルを見ていると、そのままあげてしまう私がいた。
 こんなに美味しそうに食べているのに邪魔をしては悪いなと心の中で本能的に思ってしまう。

「お腹いっぱい~♪」

 羽でお腹をさするように動かしながら、満足気な表情を浮かべている。

「私の分なくなっちゃった...」

 アアルに全部食べられてしまい、自分の分のシチューが無くなったのは少し寂しい。
 私が空っぽになった皿を眺めていると、一部始終していた兄さんが自分のシチューを渡してきた。

「カリン、ちょっと食べるか?」

「えっ...いいの?」

「ああ、そいつにあげてたのを見たからな、腹減ってるだろ?」

 お兄ちゃんの優しさを貰った私は少し胸が熱くなった。

「ありがとうに~に!!」

 その言葉を聞いた彼は静かに笑みを浮かべていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

精霊に転生した少女は周りに溺愛される

紅葉
恋愛
ある日親の喧嘩に巻き込まれてしまい、刺されて人生を終わらせてしまった少女がいた 。 それを見た神様は新たな人生を与える 親のことで嫌気を指していた少女は人以外で転生させてくれるようにお願いした。神様はそれを了承して精霊に転生させることにした。 果たしてその少女は新たな精霊としての人生の中で幸せをつかめることができるのか‼️ 初めて書いてみました。気に入ってくれると嬉しいです!!ぜひ気楽に感想書いてください!

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

私はモブのはず

シュミー
恋愛
 私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。   けど  モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。  モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。  私はモブじゃなかったっけ?  R-15は保険です。  ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。 注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

形成級メイクで異世界転生してしまった〜まじか最高!〜

ななこ
ファンタジー
ぱっちり二重、艶やかな唇、薄く色付いた頬、乳白色の肌、細身すぎないプロポーション。 全部努力の賜物だけどほんとの姿じゃない。 神様は勘違いしていたらしい。 形成級ナチュラルメイクのこの顔面が、素の顔だと!! ……ラッキーサイコー!!!  すっぴんが地味系女子だった主人公OL(二十代後半)が、全身形成級の姿が素の姿となった美少女冒険者(16歳)になり異世界を謳歌する話。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

処理中です...