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すれ違う思い

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「小日向の奴が俺を...」

 俺は帰りの電車の中でそう呟いていた。

 今となっては走った方が早いのになぜ電車という移動手段を選んだのかと言うと、単純に考える時間が欲しかったからだ。

 もしも俺があの時に小日向の気持ちに気がついてやれていれば何か変わっていたのか? とさえ思ってしまう。

 思えば妙に俺に優しくしてくれていたのはきっと気があるからだったからなのだろう。

 そんな彼女の気持ちに全く気がつけてやれなかったのは先輩として歯痒さを感じる。

 しかし、元より俺には愛川結美という女性がいる事を知っていたはずなのになぜアプローチを続けたのだろうと思っていると、小日向の母さんの会話からとある会話を思い出した。

『あの子ったら高坂さんに愛川グループのお嬢様が恋人としているけれどその人には絶対に負けたくないって言っていました』

 結美と比べて確実に劣っているであろう自分の現状が分かっているのにも関わらず俺へのアプローチを続けてくれた彼女の健気な努力に全く気がつけなかった俺は本当に馬鹿だと思う。

「...ごめんな、小日向」

 俺はそう呟きながら電車の中で僅かに涙を零すのだった。
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