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兄妹の絆②

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「...ちゃん!」

 誰かの声が聞こえてくる...。

「和希兄ちゃん!!!」

「...真菜?」

 俺の声を聞いていた彼女は喜びの表情を全開にして俺に抱きついてきた。

「和希兄ちゃん!!!」

 ギュッと俺の体を抱きしめてくる妹の体はとても暖かい...。

「...蜜香はどうなった?」

 正直にいうと途中から麻痺毒が全身を巡っていたので記憶が飛んでいるのだ。

「蜜香お姉ちゃんならそこにいるよ」

 と妹の背後で待っている彼女の姿を見てホッと一息つけた。

 だが、まだ戦いが終わった訳ではない。

 そう、肝心の奴が残っているだろう。

「森虎はどうした!?」

 俺の言葉に妹はこう答える。

「あいつなら私が仕留めたよ」

「...真菜が!?」

 思わず驚きの声を上げてしまう俺。

 そりゃそうだろう。

 森虎は真菜の親父で肉親だ。

 そんな人を殺したと彼女は発言している。

 真菜のメンタル面が非常に心配だが、今はそうも言ってられないだろう。

 なぜなら...。

「よく待っていてくれたな、春日」

 そう、さっきから傍観していた春日がそこにいたからだ。

「...」

 無言のまま腕組みをして立っている彼女に俺はこう呟いた。

「なぜ襲ってこない? チャンスならいくらでもあっただろう?」

 その言葉に彼女はこう返してきた。

「う~ん...、さっきのあんたの力を見ていたらさ、なんかアンタたちと争うのが不利益になるような気がしてきたんだよね。という訳で二階堂には悪いけどここで私はおろさせてもらうわ」

 彼女はそう呟くと俺にウィンクをしながらもこう呟いた。

「あっ、でも『ボードゲーマーズ』所属の女の子達にはとっても興味があるから、もしも貴方達が二階堂に勝つことがあればまた出会えるかもしれないわね。そうそう二階堂はそこの部屋の先にある皇族室で待ってるからね。じゃあぐっば~い!」

 彼女はお気楽そうな笑みを浮かべたまま姿を消した。

 なんだかんだ理由をつけられたが、春日の相手をしなくて良くなるのは大きいだろう。

 ...ということは残る相手は二階堂ただ一人である。

 俺は皇族室への道を睨むようにして見つめているのだった。
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