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フルーツのような香り

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「カズ君♡ カズ君♡」

「こらっ! 結美やめろって!!!」

 慌てて彼女を払い除けようとしたが、彼女の方が力が強く払い除けられない。

「ハァ♡ ハァ♡ カズ君ってとっても良い匂いがするね♡」

(いや! お前の方がいい匂いしてるわ!! 馬鹿っ!!!)

 こうして体と体を密着させていると、より鮮明に彼女の甘い香りが鼻腔を突き出してくる。

 ほんのり甘く果汁たっぷりのみずみずしいフルーツの様な香りが彼女から漂ってくる。

(やばっ! めっちゃ良い香りがする!)

 彼女は腕を俺の体に回して抱き合う様な形で抱きしめてくるのが堪らなく心地良い。

 しかし、ここまでされても俺は理性を崩壊させなかった。

 いや、してはならないのだ。

 彼女は確かに良い女性だと思うし、付き合いたいとも思う。

 しかし、こんな風に突発的な行為に及ぶのは間違っていると思うのだ。

 もうちょっと心身ともに彼女との時間を大切にして大人になってからこう言う行為に及ぶべきだと俺は考えている。

 だからこそ彼女の気持ちはとても嬉しいし、このまま行為に及びたいとも思っているのだが、それはできないのだ。

 俺は自身のよこしまな気持ちに負けないように彼女のとろけきった表情を静かに見据えるのだった。
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