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【命の水】

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「いきなりどうした!?」

「もし愚かなる私を貴方様の傘下に加えてくださると言うのであれば、私は貴方様に忠誠を誓いましょう」

 先ほどまでとは明らかに態度も様子も違う。

 まるで俺の事を認めた家臣のように忠誠を誓うとか言い出したのだ。

「だから! いきなりどうしたと聞いているんだ!」

 俺の言葉にクラウニーはいつもとは違うガチめなトーンの声でこう呟いた。

「【命の水】、私達アイシア国民は少量の水でも無駄なく使う事を余儀なくされるほど水に飢えた国民です、体を洗う時も基本的には砂で体を擦りますし、水を飲むときですら常に明日以降の事を考えながら今日を生きる適量の水のみを摂取して生きている民衆なのです」

「お...おおそうか!」

 いきなり彼女達の問題を告げられても反応に困る。

「と言うか【命の水】って...、今のクラウニーには必要ないんじゃないか?」

 そう尋ねると彼女は首を横に振りました。

「いいえ、【冥帝】であっても水は私達にとって希少な物です、それを湯船に使う余裕があるほど蓄えることのできる魔法など、私共にとって喉から手が出るほど求めていた物です...、水の蓄えさえ潤沢に備えているのであれば私は妹や家族を...」

「あっ...」

 俺はなんとなく彼女の地雷を踏みそうになった事が分かった。

 彼女の今の姿を見た俺はその提案を受け入れた。

「分かった、顔を上げてくれクラウニー、俺アリカ=ふぉ~しゅん☆ はお前の忠義を迎え入れよう」

 彼女の手を取る。

「ありがとうございます、私は貴方の忠実なる配下、求められればこの魂も体も捧げましょう...」

「何!? 体を捧げるだと!?」

「はい」

 俺はいやらしい意味で反応してしまった!

 やはりこうして見るとクラウニーは充分可愛いし、一度くらい抱いてもいいんじゃないかと思う。

 一度だけ抱くとか最低なクズ発言だが、元が男な俺にとって可愛い女の子は抱きたくなる物なのだと分かってくれ。

「と...取り敢えず風呂に入ろうか」

 俺は動揺しながら彼女と共にお風呂に入るのでした。
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