女体化した勇者と魔王が一緒に旅するようになった理由

ルシェ(Twitter名はカイトGT)

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水の大陸編

ネーミングセンス

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 ブンブンの背に乗った私達は、海に特攻して行きました。

「ブンブン!?まさかこのまま行くの!?」

 ザーク様が驚きの声を上げながらブンブンに叫びます。

「はいザーク様!大丈夫です心配いりません」

「いや...そういわれても...」

 少し前に溺れかけた事を思い出して戸惑いを隠せない彼女に私は優しく語りかけました。

「ブンブンもこう言っていますし、私もいるので何かあった時はすぐに助けます!」

 私がそう言うと彼女はギュッと私の手を掴んできました。

「絶対に離さないでね...」

 念を押すように私に呟いてくる彼女の手を優しく握り直します。

「大丈夫です、アオはいつでもザーク様の味方ですから!」

 そう言うと彼女は安心したような表情で少しだけ笑いました。

「準備はいいですか?海の中へ2名様ご案内致します」

 ブンブンは加速度を増して海の中へと潜り込んで行く。
 もう少しで顔が水に浸かるというタイミングで彼の形態が変わりました。
 まるで潜水艦のようなフォームになり、中にあった水を全て外に排出してくれました。
 ちゃんと空気も完備されていて、快適な空間を提供してくれています。

「ブンブン凄い!」

 目を輝かせながら機体内を見回す彼女が凄く可愛いです。

「ブンブン様、この形態は何ていうのでしょうか?」

 少し気になったので私は彼に聞きます。

「ただのモード「海」ですが、ザーク様に名前を貰えるのであればこの形態をその名前に変えます」

「私が決めていいの!?」

「はい、私のプログラムではザーク様が1番のマスターであると設定されています、その人に名前をつけていただけるのであればそうするのが1番だとタクヤ様もおっしゃっていましたので」

 う~んと頭に手を置いて考えるザーク様は1分くらい間を置いてからこう答えを出しました。

「モード「お魚さん」はどうかな?」

「お魚さん...ですか...、ザーク様がそれでいいのであればそういうモード名にします」

「ザーク様、お魚さんとは可愛い名前をつけられましたね」

 私はザーク様がそう言うのであれば出来るだけ前向きに捉えます。
 ブンブンも多分だけど前向きに考えてくれるでしょう。

「えへへ~、でしょ~、少し考えたけどやっぱり海の中を進む形態だと考えるとこれ以上いい名前を思いつかないんだ」

 ザーク様はまだ1歳にも満たない年齢なのでネーミングセンスはしょうがないと思います。
 ブンブンには悪いですが、アオという比較的良い名前を付けてもらえた私は恵まれていたのでしょう。

(ご愁傷様です...)

 私は心の中では彼の技名を憐れみましたが、よく考えると彼は機械なのでそこまで気にしていないのかも...。

「モード「お魚さん」...」

 めっちゃ気にしてる~!!!。
 なんだか声のトーンが少し小さく、気分が落ち込んだような声質だ。
 機械音だが、私にはハッキリと分かる。
 これは落ち込んでる人の声質だと。
 それを尻目にはしゃぐザーク様を見ていると、今ネーミングセンスを更指摘できない。
 ここは...。
 私は少し咳を込むとこう言いました。

「コホン、ザーク様の「お魚さん」は素晴らしいと思いますが、私が考えたのも聞いてくれますか?」

「いいよ、お魚さんよりもいい名前を思いついたの?」

 彼の技名がかかっているのでいい名前を考える。
 ありきたりでもいい、とにかく技名をとして恥ずかしくないものであれば。
 数秒考えて私はこう呟いた。

「海を駆ける「オーシャンラン」というのはどうですか?」

「オーシャンラン...なんか良いね、カッコいい気がする」

 彼女に受けが良かったのでこれは貰いましたと思ったのですが。

「う~ん、でもやっぱりお魚さんの方がいいからこっちでいいや」

 ダメでした。
 明らかに機体内がどんよりし始めてますが、これ以上は私には何もできません。
 結局お魚さんという可愛らしい技名に決定してしまいました。
 これなら元の海モードで良かったのではと思いますが、技名があった方が気分が乗るのでしょう。
 全く、感情のある機械なんてとんでもないものを作ってしまうタクヤ様は何者なのかわかりません。
 ザーク様のネーミングセンスがあまり良くない事がここで発覚してしまったので、これからは私が出来るだけ良いネーミングを思いつけるように教育しなくては...。
 そう思いながらザーク様を見つめて、深く潜っていく機体に身を任せました。
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