女体化した勇者と魔王が一緒に旅するようになった理由

ルシェ(Twitter名はカイトGT)

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水の大陸編

ビーチバレー?

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「これで遊びましょう」

 不意に現れたアウス様が何やら持ってきました。

「ボールですか?」

 私が質問すると彼女は答えてくれました。

「そうよ、これはビーチボールと言って、砂浜に落とさないで何回返せるかで遊ぶ道具」

 簡単に説明されると、ザーク様が目を輝かせていました。

「ザークはやるからアオもやろ!」

 ザーク様がにそう言われては断れません。

「いいですよ」

「やったー!」

 飛び跳ねて喜ぶ彼女の姿は(悪魔ですけど)天使のようです。

「妾はパスじゃ、アウス殿がいたんでは結果が見えとる」

 そう言いながらクロリア様が立ち去ろうとすると、少し低音の声でアウス様が声を出しました。

「クロリア...いいのよ...、帰ったら楽しみにしていてね♡」

 なぜかその言葉を聞いたクロリア様から汗が大量に流れ落ちていました。
 その数秒後なんか無理した笑顔で「なんか妾も遊びたくなっちゃたのう!さあ早くやろう!」と参加を表明しました。

「それじゃ行きますよ~」

 なんだかんだ始まったビーチバレーの第1投は私からでした。
 まずザーク様に弱めのボールを飛ばしました。

「これを返せばいいんだな~」

 スッと手を出して上に打ち返しました。

「上手ですよザーク様!」

「そう?アオに言われると照れるな~」

 ボールはアウス様の方に向かいました。

「あらあら私の番ね...」

 そう言いながらも、ちらっとクロリア様に方に視線を送ったのが見えました。
 なんでボールから目を離して彼女の方を見ているのか気になっていると、思いっきりボールを蹴飛ばして彼女に当てるような軌道を作りました。

「へっ?いや、ちょ待って!」

 まさかドッチボールのような当てる為の軌道を持ったボールがくるとは夢にも思ってなかったのでしょう。
 完全に上に飛ばす為の体制を取っていたクロリア様は、殺人ができるほどの威力を持ったボールを無抵抗で受けてしまいました。
 その結果4メートルほど吹っ飛んで顔面を砂浜に埋もれて情けない格好をしています。

「ビーチバレーって...凄い!」

 ザーク様がなんか感動していますが、完全にビーチバレーではありません。
 これではドッチボールです。

「アウス様!?、それはやりすぎなんじゃ...」

 私が彼女に聞くと笑顔で返されました。

「あらあら、心配してくれているのね、でも大丈夫よ、あの子はこんなんじゃ死なないから」

「死ぬとかそういう問題じゃ...」

「大丈夫よ、あなたとザーク様にあげるときには優しくしますから」

 笑顔でそう答えてくるのがむしろおっかない。
 ハハハと乾いた笑い声を出しながら、吹っ飛んでいったクロリア様の方を向くと、すでにザーク様が引っこ抜こうとしていました。
 数秒後、砂まみれになった顔を出した彼女は、アウス様にガンを飛ばしながら近づいて行きました。

「ア~ウ~ス~さ~ま~♡...、妾と久しぶりにガチのボール遊びでもしましょう♡」

 明らかにキレ気味のクロリア様が片手をわきわきと動かしながらアウス様を挑発しています。

「良いわよ、あなたがどれほどやれるようになったか見てあげる!」

 クロリア様が放ったボールは一直線にアウス様に向かっていきました。
 明らかに殺意のあるスピードですがもうツッコミません。
 それほどの勢いがあるそれを簡単に弾き返すアウス様の実力はやはり本物だと思います。
 いつのまにか2人だけで盛り上がっているので、私とザーク様は完全に蚊帳の外になりました。

「なんかこっちにボール来なくなっちゃった...」

「あはは、そうですね」

 正直来なくてホッとしている私がいました。
 あんな怪獣大決戦に生身の人間が挑めば一瞬で廃と化すでしょう。
 ザーク様が残念そうな顔で2人のぶつかり合いを見ていると、急にブンブンというエンジン音と共にブンブンが現れました。
 辺りは突然の機械に驚きの声を上げていましたが、私達からすればもう普通のことなので何も驚きはありません。

「ザーク様、お暇であれば私めが海の中を体験させてあげますがいかがでしょうか?」

 その言葉を聞いたザーク様は頭に手を置いて少し考えています。

「だって、海の中って事は浮き輪つけれないんでしょ?私は泳げないからちょっと心配...」

 両手の人差し指を出会わせてもじもじする彼女に目を奪われる私でした。
 そんな私を尻目にブンブンは機械特有の声で笑いました。

「大丈夫ですよ、このブンブンには水中モードと空中モードも備わっていますから、水陸空兼用の私めにおまかせあれ!」

 そこまで自信たっぷりに言われたので彼女も「少しならいいかな」と了承した。
 そう答えを受け取ったブンブンは私達を乗せて海へと突っ込んでいきました。
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