女体化した勇者と魔王が一緒に旅するようになった理由

水の大陸編

魔王の海水浴

「ア～オ！！」

　ザーク様が両手を広げて私の方に元気よく向かって来ました。

「ザーク様！」

　勢いよく飛び込んでくる彼女を私は優しく受け止める。

「おーおーお熱いのう」

　茶化すようにそう言ってくるクロリア様でしたが、私にはよく意味がわかりませんでした。

「早く一緒に泳ごう！」

　キャッキャッと海に向かって走っていくザーク様を追いかけて一緒に青い海へとダイブしました。
　ザプンと水に潜った時に思い出しました。
　昔こうして誰かと水の中に潜ったような...、いえ、気のせいですね。
　そもそも私は元よりザーク様にお仕えする身。
　誰かと海に行った記憶などあるはずがありません。
　プハッ。
　私は海から顔をだして何か思い返すように青い空を見上げました。
　気持ちいい...。
　青く澄んだ海の冷たさに酔いしれていると。

「大変じゃ！ザーク様が！」

　クロリア様の声でハッと気がついた私はザーク様の方を見ました。
　そこには全く泳げてない彼女の姿がありました。

「いけない！」

　私は急いで彼女に近づいて陸にあげました。
　彼女は海水を少し飲んでしまったようで「しょっぱい...」と舌をだしてうぇ～っと言っていました。
　それを見た私たちは少し笑いました。

「海水はしょっぱいですよ、ザーク様は泳げないようなので浮き輪を買って来ますね！」

　私は駆け足で海の家に行き子供用の浮き輪を購入しました。

「ちょっと待ってて下さいね、すぐに膨らましますので！」

　肺に空気を入れて一気に膨らませます。
　流石に一回ではできないので、何回かに分けて完成させました。

「凄い！膨らんだ！」

　初めて見る浮き輪に興味津々な彼女は凄く可愛いです。
　浮き輪を彼女に被せると、なんだかいい感じに子供をしているような感じになりました。

「似合ってますよ！ザーク様！」

「ほう...、確かにザーク様には似合っておるな」

　私達に褒められた彼女は子供のように喜んでいます。

「そう？そう！、これで泳げるようになったんだよね？」

「はい、少なくとも溺れることは無くなるはずです！」

　彼女は恐る恐る足を海に着けて行き、少しずつ海に入っていきます。
　今度は浮き輪があるのでちゃんと浮いているのを見た私は心の中でこう思いました。

(尊い...)

　何故かはわかりませんがその単語が頭に思い浮かびました。

「浮けた～！、見てみてアオ～！」

「はい！ちゃんと泳げていますよ！」

　私は拍手を送りながら彼女の雄姿を見届ける。
　海にちょこんと浮いているその物体がとてつもなく愛らしい。
　えへへ～と笑顔になる彼女を見て、こんな時間が永遠に続けばいいのにと思う私でした。