女体化した勇者と魔王が一緒に旅するようになった理由

水の大陸編

ロボットだぁ〜

　私は中庭で面白い物を発見してしまった。

「大きい...！」

　目を輝かせながら、その物体を見上げる。
　コンコンっとボディを叩き、その硬さに興奮していた。
　私が操縦席に座ると、一人でにエンジンが動き出し、私にこう言った。

「オーナーザーク様、私はブンブンです、タクヤ様の手によって復活した私はタクヤ様の所有物ですが、あなた様にもオーナー権限がございますので、どうぞ私を自由におつかい下さい」

　自由に使えばいいと言われると、私は操縦席のハンドルを回した。

「いっけぇ～！！」

　ブンブンという駆動音と共に城の外へと飛び出す私。

(ちょっとドライブするくらいならいいよね！)

　三輪車で疾走するのは思ったよりも気持ちがいい。
　直に空気を肌で感じるので、機体と一体化した様にも感じられる。
　この時の私は、初めて自転車に乗れた子供の様な気持ちでブンブンを走らせていた。
　小一時間ほど走らせると満足し、城へと戻る。
　スッキリとした笑顔で城門をくぐると、アオが心配したように私を見てきた。

「ザーク様！！もうお夕飯の時間ですよ！どこまで行っていたんですか！」

「ごめんなさい...つい楽しくて...」

　私は頭を掻きながらアオを見下ろす。

「もう、ザーク様ったら、少し目を離すとこうなんですから...」

　彼女が溜息交じりに私をみてくる。
　最近私はメイシスに頼みこみ、ある程度の自由を許してもらえる事になった。
　海を見たあの日、私の知らない物が世界には沢山あるのだと知り、色んな物を見てみたくなったのだ。
　勿論、メイシスの言うことも聞く条件でだ。
　毎日一錠の薬を飲むことである。
　あまり美味しくはないが、魔力を増大させる薬らしいので毎日飲んでいる。
　だが、薬を飲むだけで実を得られるのであれば安い物だと思う。
　それに、あの日を境に、メイシスのアオに対する当たりがなくなった気がする。
　まあ、当たりがなくなったと言うよりは、アオに目もくれなくなったと言うのが正しい。
　何もしないので、少し気味悪いが、彼女に被害が行かなくなったことは喜ばしいことだ。

「今日の晩御飯は何？」

　私は不意に気になったので彼女に聞いてみると。

「今日のお夕飯はキノコの炊き込みご飯と火の大陸産夏野菜のサラダですね...」

「ええ～、お肉ないの～」

　私がぶーぶー文句を垂れると、思い出したかの様に手を叩いて答えを追加された。

「そういえばもう一品ありました、狂獣牛の胸肉焼きです」

「アオ大好き！！」

　手のひらクルーしてしまったが、私は彼女の抱きつかずにはいられなかった。
　私の好物である狂獣牛の肉を取ってきてくれているとは思っていなかったからだ。
　少し自慢そうに腕を組みドヤ顔を見せてくる彼女が口を開く。

「ふっふっふっ、聞いて驚かないでくださいねザーク様、なんと今日のお夕飯のお肉は私が直接討伐して取ってきたものなんですよ！」

「なんだって～！！」

　普通に驚いた。
　いつもならアウスやメイシスが取りに行ってくれているのだが、今日はアオが取りに行ったと言う。
　その言葉をきいた私は心配になり、彼女の全身を見やると、所どころ怪我をしているらしく包帯を巻いていた。

「その包帯ってもしかして...」

「これですか？、心配しなくても大丈夫ですよ、ちょっと戦闘で怪我しちゃっただけですから...」

　笑顔で答える彼女を見ていると、知らない間に命懸けの作業をしてくれていたのだと思い、胸が熱くなった。

「ありがとうアオ...、私のためにこんな怪我までして...お肉を取ってきてくれたんだね...」

「わわ...、ザーク様泣かないで下さい、初めてだったのでちょっとミスしただけです、今後はもうこんな傷を作らずとも討伐して見ますよ」

　アオの明るい声に、私は惹かれる。

「アオ...、ありがとう大好き...」

　そっと彼女の腰に抱きつき、温もりを感じる。
　彼女も私に手を伸ばし、私の存在を確かめるように抱きしめてくれる。

「私も大好きですよザーク様...」

　2人の間には何か信頼の様な物が出来上がりつつあった。
　主人と従者の関係だけではなく、もっと深い底の見えない何か。
　それを知った時、彼女達の絆は...。