女体化した勇者と魔王が一緒に旅するようになった理由

ルシェ(Twitter名はカイトGT)

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水の大陸編

しぶとい

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 確かに決まったかの様に見えた拳は、氷の分身だった。

「おしいおしい...」

 背後で奴の声が聞こえる。
 私が振り向くと同時に私は斬り伏せられていた。

「があっ!!?」

 悲鳴をあげながら倒れる私。
 いつのまに背後を取られていたのかわからない。
 慢心していた私が間抜けだったのだ。
 半龍化が解け、元のアイカの姿に戻る。
 無理にでも立ち上がろうとするところを蹴り飛ばされる。

「そろそろおねんねしましょう...、お姉さんの所に送ってあげるわ...」

 喉元に突きつけられた白刃が光を反射して光った。

「奇跡!聖なる壁!」

 突然白刃の前に重厚な壁が出現しはじき返した。
 この声に聞き覚えのあるアウラは声を上げる。

「カナメ!来てくれたのですね!」

「ひゃい!?ドラゴンさんの知り合いはいないと思うのですが!」

 急なドラゴンとの会話にカナメは驚きを隠せていないようだった。

「とりあえずそちらのお嬢さんの傷を手当てしますね!」

 彼女は私の傷口に回復の魔法を当て始めたが、龍である私の回復には時間がかかるだろう。
 そんなことを考えていると、少女が1人怒りながら声をあげる。

「もう!みんな我よりも足が速いのがいけないんじゃ!」

 プリシラが双剣を引き抜いて臨戦態勢で構えていたので止めようとする。
 龍や勇者以外が奴とやりあうなど、自殺行為に等しい。

「だめだ!アウスは強い!」

 私の制止を一切聞かない彼女は特攻する。

「あらあら、少し弱っているとはいえ舐められたものね...」

 アウスは余裕の表上で迎え撃つが、その表情は一瞬のうちに崩れた。
 小娘とは思えないほど軽やかな動きに、私は見惚れている。
 動きに一切の迷いがなく、確実にアウスを追い詰めて行っている。
 いくら私が体力を削ったと言っても、アウスの実力は折り紙つきだ。
 ある程度の能力がないと足止めすらできない。
 それをあの小娘が、むしろ善戦している現状を見るに認めるしか無くなる。
 プリシラはそこそこの実力をもつ実力者だと。

「なかなかやるのうお姉さん、疲れてなければ我でも敵わないじゃろうな...」

「そうね...、というか、あなたの喋り方に近視感があるのだけれど...、まあ、あなたには関係ないことよね...」

 ふふふと笑う彼女はどこか不気味だった。
 それでも警戒を怠らずに、じっくりと追い詰めていく彼女のやり方は、さしずめ一流の冒険者とでも言ったところだろうか。

「これは流石に分が悪いと見えるわね...、タクヤの方もやられたみたいだし、ここは一旦引かせて貰うことにするわ」

「逃すとでも思いか?」

 冷ややかな視線を送り続ける彼女を見て「怖い怖い」と茶化すように笑うアウスがやはり異常に感じる。
 あちらとしては味方が全滅し壊滅的な状態でもあるのに関わらず余裕の表情を崩さないのだから。
 辺りに空気とかした氷がチリチリと出現する。
 またあの魔法を使う気なのだろう、火の大陸を一瞬のうちに氷の大陸に変えた魔法。
 気象さえも変える彼女の魔法は強力極まりないが、そんな魔法を唱える隙を、プリシラが与えるだろうか?。
 動けない私は他2人に託すしかないと考えた瞬間。

「ブンブン!!、駆動解放!!」

 彼女がいきなり大声を上げてブンブンに声をかけた。
 すると急に駆動音が鳴り響き、ユウトを突き飛ばしながらタクヤを回収し、アウスの方までやってくる。

「逃がさない!」

 プリシラが叫びながら双剣を構えたが、時すでに遅し。
 アウスを回収し終わったブンブンは走行モードとなり嵐のように去っていく。

「楽しかったわお嬢さん...、またどこかで会いましょう...」

 クスクスと笑いながら、遠くなっていく彼女を見た私たちはただただその場に立ち尽くすしかなかった。
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