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水の大陸編
機械の心
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「うわっと!!」
俺は声を出しながら攻撃を避ける。
正直攻撃を躱すだけで精一杯だ、攻撃のチャンスを見出せていない。
最初の攻撃でダメージをあまり与えられなかったのが、今に響いている。
「おい!マオ!少しは戦ってくれ!」
俺が情けない声を出しても、彼女はなぜか動いてくれない。
「ねえ、なんでブンブンやタクヤと戦わないといけないの?」
「何言ってんだお前...、あいつらは敵だぞ?、戦わない方がおかしいだろ?」
「でも...、余はタクヤにご飯を貰ったし、ブンブンの背に乗って走るのも面白かった...、余は嫌だ...彼らと戦うのは...」
ああ、そうか...、なんとなく彼女が戦えない理由が分かってしまった。
「ならいい、俺一人でなんとかする...」
彼女は戦えない、一瞬でも友と思っていた者を殺すことができないのだろう。
そんな甘い考えを持っていること自体が驚きだが、それがまともな人間という者だろう。
(こいつはやっぱり魔王なんかじゃないな...、もうマオが魔王だったことさえも忘れそうだ...、しかし解せない、俺を今まで苦しめてきた魔王は絶対にこいつではないと今確信した、本物の魔王は今どこにいるのだろう?)
俺を攻めてきた魔王の戦法は、冷酷非道でなんでも利用するものは利用して、いらなくなったらすぐに捨てるというやり方だ。
それで俺の精神力をゴリゴリへずってきたのを思い出す。
今のマオのような発言をするようなことは絶対にないと言える。
ふと俺は自分の手を見て思い出す。
一体何人の命をこの手で奪ったのだろうか?、最早数えきれない。
魔王に忠誠を誓う人間や魔物...、これまで何千何万の命を奪ってきたこの俺は、勇者というより殺人者だが、これでいいと思っている。
俺がそこにある者たちを殺した結果、生まれた命も確かにあったのも覚えている。
そして、それは俺にとって悪いことにはどうしても思えない。
殺して奪い、守って生まれる、世界とはそういうものではないのだろうか?。
そんなことを考えていると、ブンブンの攻撃が迫っていることに気がつかなかった俺はまともに攻撃を受ける。
全身に痛みが走り、壁に叩きつけられる。
痛いなんてものじゃない、動けないほどの衝撃がはしり、血が溢れ出る。
目が霞んで息がしずらい。
(まずい....、死ぬ...)
奴が近づいてくるのが分かる、俺にとどめを刺すつもりなのだろうか?、右手を振り上げたその時、マオが奴の前に飛び出てきた。
「やめろ...マオ...、そいつには勝てない...」
俺の制止も聞かずに、彼女は両手を広げながら、奴の前に仁王立ちのように立ち塞がる。
「ねえ、ブンブン、余はね、あなたの背中に乗せて貰えて本当に嬉しかった、機械のあなたに心はないのかもしれない...、だけど余はしっかりと感じたよ...、ブンブンの心を!」
俺には意味がわからないが、彼女はきっと奴と何かしてきたのだろう。
だが、機械のやつにそんな声が届くわけが...。
やつは右手をゆっくりと下げると、急に大人しくなる。
目のようなライトの部分から、涙のようにオイルを垂れ流している。
その後、まるで電池の切れた携帯のように、ただただそこに鎮座している姿だけが残る。
その様子を見た彼女は、笑顔で玩具を見ながら、身体をさすりながら優しく呟いた。
「ありがとう...ブンブン...」
信じられないが信じるしかない、彼女は機械と心を交わしたのだと。
明らかにあった敵意のようなもが完全に消えているのだから。
(マオ...こいつはいつか大物になるかもな...、って魔王か...ははっ...)
機械の駆動音が完全に停止すると、俺は安心しながら意識を失った。
俺は声を出しながら攻撃を避ける。
正直攻撃を躱すだけで精一杯だ、攻撃のチャンスを見出せていない。
最初の攻撃でダメージをあまり与えられなかったのが、今に響いている。
「おい!マオ!少しは戦ってくれ!」
俺が情けない声を出しても、彼女はなぜか動いてくれない。
「ねえ、なんでブンブンやタクヤと戦わないといけないの?」
「何言ってんだお前...、あいつらは敵だぞ?、戦わない方がおかしいだろ?」
「でも...、余はタクヤにご飯を貰ったし、ブンブンの背に乗って走るのも面白かった...、余は嫌だ...彼らと戦うのは...」
ああ、そうか...、なんとなく彼女が戦えない理由が分かってしまった。
「ならいい、俺一人でなんとかする...」
彼女は戦えない、一瞬でも友と思っていた者を殺すことができないのだろう。
そんな甘い考えを持っていること自体が驚きだが、それがまともな人間という者だろう。
(こいつはやっぱり魔王なんかじゃないな...、もうマオが魔王だったことさえも忘れそうだ...、しかし解せない、俺を今まで苦しめてきた魔王は絶対にこいつではないと今確信した、本物の魔王は今どこにいるのだろう?)
俺を攻めてきた魔王の戦法は、冷酷非道でなんでも利用するものは利用して、いらなくなったらすぐに捨てるというやり方だ。
それで俺の精神力をゴリゴリへずってきたのを思い出す。
今のマオのような発言をするようなことは絶対にないと言える。
ふと俺は自分の手を見て思い出す。
一体何人の命をこの手で奪ったのだろうか?、最早数えきれない。
魔王に忠誠を誓う人間や魔物...、これまで何千何万の命を奪ってきたこの俺は、勇者というより殺人者だが、これでいいと思っている。
俺がそこにある者たちを殺した結果、生まれた命も確かにあったのも覚えている。
そして、それは俺にとって悪いことにはどうしても思えない。
殺して奪い、守って生まれる、世界とはそういうものではないのだろうか?。
そんなことを考えていると、ブンブンの攻撃が迫っていることに気がつかなかった俺はまともに攻撃を受ける。
全身に痛みが走り、壁に叩きつけられる。
痛いなんてものじゃない、動けないほどの衝撃がはしり、血が溢れ出る。
目が霞んで息がしずらい。
(まずい....、死ぬ...)
奴が近づいてくるのが分かる、俺にとどめを刺すつもりなのだろうか?、右手を振り上げたその時、マオが奴の前に飛び出てきた。
「やめろ...マオ...、そいつには勝てない...」
俺の制止も聞かずに、彼女は両手を広げながら、奴の前に仁王立ちのように立ち塞がる。
「ねえ、ブンブン、余はね、あなたの背中に乗せて貰えて本当に嬉しかった、機械のあなたに心はないのかもしれない...、だけど余はしっかりと感じたよ...、ブンブンの心を!」
俺には意味がわからないが、彼女はきっと奴と何かしてきたのだろう。
だが、機械のやつにそんな声が届くわけが...。
やつは右手をゆっくりと下げると、急に大人しくなる。
目のようなライトの部分から、涙のようにオイルを垂れ流している。
その後、まるで電池の切れた携帯のように、ただただそこに鎮座している姿だけが残る。
その様子を見た彼女は、笑顔で玩具を見ながら、身体をさすりながら優しく呟いた。
「ありがとう...ブンブン...」
信じられないが信じるしかない、彼女は機械と心を交わしたのだと。
明らかにあった敵意のようなもが完全に消えているのだから。
(マオ...こいつはいつか大物になるかもな...、って魔王か...ははっ...)
機械の駆動音が完全に停止すると、俺は安心しながら意識を失った。
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