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水の大陸編
そうだ...
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「そうだ...、兄さんが悪い...」
ブンブンから降りてきたタクヤは呟いている。
その様子が不気味なのでマオが少し震えている。
「ユウリ...、なんか怖い...」
ギュッと俺の服を掴む彼女をそっと後ろに隠す。
確かに、今のタクヤは普通ではない。
さっきまでの陽気な感じが微塵も感じられず、俺が今まで戦ってきたどんな魔物よりも純粋な悪に染まっている気がする...。
この殺気は、ユウトにのみ向けられている。
それ以外の者にはまるで興味がないようだ。
一瞬だけユウトの仲間に興味を持ったが、それも今はもう無い。
「タクヤ...、どうしたの?、さっきまであんなに人が良かったのに...」
アイカが不自然そうな顔をして、タクヤを見つめている。
そんな時、ユウトが明るく声を出して彼に近づく。
「タクヤ!、大丈夫か?、兄さんがなんでも相談に乗ってやるぞ、アサミも帰りを待っているだろうしな!」
彼はタクヤの地雷を自ら踏んでしまった。
さっきまでとは比べものにならない程の殺意が辺りに立ち込める。
ここまでくると、ただの通行人でさえもアレの異常性に気がついて去って行く。
張り詰めた様な空気が肌に刺さり痛い...。
「アサミ...?、あんたが殺したんじゃないか!、この人殺しが!」
その言葉をキョトンとした顔で聞くユウト。
「は?...アサミを殺したのが俺...?、なんのことだ?」
「とぼけるな!兄さんが命令したんだと僕はメイシス様から聞いた!」
「メイシス...?、誰だそれは!、お前がなんかおかしいのもそいつのせいなのか!?」
「うるさい!うるさい!うるさい!兄さんだけは許さない!」
タクヤは片手に紫色のオイルを持ち、それをブンブンに入れ始めた。
「兄さんにはこれが何かわからないだろう?、これは彼女と僕の血でできたオイル...、兄さんを恨み続けた負の遺産を凝縮して作った物...」
ブンブンの色が赤色から紫に変貌して行く。
薄気味の悪い機体だ...、さっきまでの気持ちの良い赤は無くなり、代わりに色の悪い紫色の機体が顔をのぞかせている。
いや、本当に顔をのぞかせていた。
さっきまで三輪車だったソレは、人型の形となり、腕についた無数の車輪をギリギリと鳴らして入た。
「さあ、第二幕の始まりだ...、お前を殺すためならば、この身をも悪魔に譲り渡そう...」
タクヤの右手が黒く変色していくのが分かる。
「タクヤ...お前...悪魔と契約したのか!?」
ユウトは知っていた、悪魔と契約した者は強大な力を得る代わりに、その身の一部を差し出す。
彼は右手を差し出したのだろう、黒い腕からは赤色の瞳が俺達の方を見てくる。
「なんて悍ましい...」
カナメがひきつるような表情でその腕の感想を述べる。
聖職者である彼女にとって、悪魔と契約した人間は不快なのだろう、さっきまでとタクヤを見る目が違う。
まるでただの魔物を見るような目に変貌していた。
「けれど...、人でないのであれば消し去ることに、理由はないですね」
彼女が冷徹な目をしているのが分かる。
俺はその目をみると少し引いたが、今は目の前のタクヤを止めることに集中する。
「これは強敵そうだな...、3万8千ゴールドじゃ割に合わないな!ユウト!」
「分かった分かった!、もうちょいおまけしてやるから手伝え!」
「そうこなくっちゃな!」
俺は報酬が上乗せされたので俄然やる気が出てきた。
さ~てどうやってこの二体を倒すかな...。
俺は身構えながら、頭を働かせていた。
ブンブンから降りてきたタクヤは呟いている。
その様子が不気味なのでマオが少し震えている。
「ユウリ...、なんか怖い...」
ギュッと俺の服を掴む彼女をそっと後ろに隠す。
確かに、今のタクヤは普通ではない。
さっきまでの陽気な感じが微塵も感じられず、俺が今まで戦ってきたどんな魔物よりも純粋な悪に染まっている気がする...。
この殺気は、ユウトにのみ向けられている。
それ以外の者にはまるで興味がないようだ。
一瞬だけユウトの仲間に興味を持ったが、それも今はもう無い。
「タクヤ...、どうしたの?、さっきまであんなに人が良かったのに...」
アイカが不自然そうな顔をして、タクヤを見つめている。
そんな時、ユウトが明るく声を出して彼に近づく。
「タクヤ!、大丈夫か?、兄さんがなんでも相談に乗ってやるぞ、アサミも帰りを待っているだろうしな!」
彼はタクヤの地雷を自ら踏んでしまった。
さっきまでとは比べものにならない程の殺意が辺りに立ち込める。
ここまでくると、ただの通行人でさえもアレの異常性に気がついて去って行く。
張り詰めた様な空気が肌に刺さり痛い...。
「アサミ...?、あんたが殺したんじゃないか!、この人殺しが!」
その言葉をキョトンとした顔で聞くユウト。
「は?...アサミを殺したのが俺...?、なんのことだ?」
「とぼけるな!兄さんが命令したんだと僕はメイシス様から聞いた!」
「メイシス...?、誰だそれは!、お前がなんかおかしいのもそいつのせいなのか!?」
「うるさい!うるさい!うるさい!兄さんだけは許さない!」
タクヤは片手に紫色のオイルを持ち、それをブンブンに入れ始めた。
「兄さんにはこれが何かわからないだろう?、これは彼女と僕の血でできたオイル...、兄さんを恨み続けた負の遺産を凝縮して作った物...」
ブンブンの色が赤色から紫に変貌して行く。
薄気味の悪い機体だ...、さっきまでの気持ちの良い赤は無くなり、代わりに色の悪い紫色の機体が顔をのぞかせている。
いや、本当に顔をのぞかせていた。
さっきまで三輪車だったソレは、人型の形となり、腕についた無数の車輪をギリギリと鳴らして入た。
「さあ、第二幕の始まりだ...、お前を殺すためならば、この身をも悪魔に譲り渡そう...」
タクヤの右手が黒く変色していくのが分かる。
「タクヤ...お前...悪魔と契約したのか!?」
ユウトは知っていた、悪魔と契約した者は強大な力を得る代わりに、その身の一部を差し出す。
彼は右手を差し出したのだろう、黒い腕からは赤色の瞳が俺達の方を見てくる。
「なんて悍ましい...」
カナメがひきつるような表情でその腕の感想を述べる。
聖職者である彼女にとって、悪魔と契約した人間は不快なのだろう、さっきまでとタクヤを見る目が違う。
まるでただの魔物を見るような目に変貌していた。
「けれど...、人でないのであれば消し去ることに、理由はないですね」
彼女が冷徹な目をしているのが分かる。
俺はその目をみると少し引いたが、今は目の前のタクヤを止めることに集中する。
「これは強敵そうだな...、3万8千ゴールドじゃ割に合わないな!ユウト!」
「分かった分かった!、もうちょいおまけしてやるから手伝え!」
「そうこなくっちゃな!」
俺は報酬が上乗せされたので俄然やる気が出てきた。
さ~てどうやってこの二体を倒すかな...。
俺は身構えながら、頭を働かせていた。
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