女体化した勇者と魔王が一緒に旅するようになった理由

水の大陸編

水の砂浜

　ここは水の大陸にある砂浜。
　私が気がついた時にはもう自然の猛威は去っていた。
　明るい日差しが眩しく、濡れた服が気持ち悪いが、こればっかりはしょうがない。
　半裸になりながら、アイカの出した炎で服を乾かす。　
　途端に腹の虫が鳴いたのでつい口を滑らす。

「あ～、お腹すいた～...」

「わかったから、少し待ってなさい」

　今の言葉を聞かれたのが恥ずかしいが、彼女の方が私より、恐らく年上なので少しくらいいいかなとも思う。
　私はアイカを見ながら腹を抑えていると、素潜りで海の中を探索を始めた。
　数分経ってから海から顔を出したのだが、彼女は不思議そうに顔をしかめていた。

「どうかしたの？」

「いや、魚が一匹もいない...、それに水質も悪い...」

　彼女の見立てによると火の大陸よりも水質が悪いらしく、魚がいないらしいのだ。

「だったら一旦陸に上がって木の実や野生の動物とか探す？」

　私が提案すると、彼女は頷いた。

「うん、その方が良さそう...」

　だが、いざ森の中などを探しても、食べれそうな物は見つからず、心なしか植物なども元気がないように見える。

「何か...変ね...この大陸...」

「うん、余にも分かる、始まりの大陸や火の大陸から感じられた自然の力の様な物が感じられない」

　二人は一緒に森の中を探したが、動物一匹見つからなかった。
　途方に暮れた二人は、一旦戻り、ユウリと合流することを考えていると。
　突然後ろから声をかけられたので勢いよく振り返る。

「君たちは...？」

　声の正体は黒髪の青年で、年はユウリよりも少し下に思える。
　青い作業服の様な物を着込んでいて、頭にはゴーグルを着けている。
　私が答えるよりも先に、彼女が口を出した。

「すみません、私達実は客船から落ちてしまって...、気がついたらここ砂浜にうちつけられていたんです」

　青年は少し考えると、笑顔でこちらを見てきた。

「そうか、漂流者か、分かった一度僕の家に来るといい、ここのすぐちかくだし、あったかい食事を用意しよう」

　その人に邪悪な気を感じなかったので、私もアイカも安心してついて行くことにした。
　でも私はこの人の顔をどこかで見たことがあるような無いような...。
　似たような顔を、見たことがあるような気がしたが、今は思いつかなかったので後で考えることにしよう。