女体化した勇者と魔王が一緒に旅するようになった理由

水の大陸編

水の海域

「うわっ！」

　その時、船が思いっきり揺れたので、俺は大声をあげた。
　個室ではなく、船員や客が一つの部屋にいるタイプの客船なのですごく狭く感じる。
　火の大陸と水の大陸はそこまで離れていないので、片道5時間ほどだ。
　さっきから天候が最悪だ。


「目が回るぞ～」

　マオは船が傾く度にあっちこっちに転がっている。
　アイカはこんな時でも平然として椅子に座っている。
　小さくても流石はドラゴンと言ったところだろうか。
　さっきまでの海は静かな人物のような者だったのに、今は荒れ狂った暴君の様に思える。
　船室にある窓から改めて外を見ると、暗雲立ち込め、波が激しく揺れ、まるで災害のようだった。
　いや、おそらく台風の中に突っ込んだだけなので災害なのだろうが...。

「うぇぇぇ...酔った...」

　マオが船室を出て外に出て行こうとしているので止めた。

「バカ！、外に出るな！！」

「うぇ？」

　アホそうな声を出して外への扉を開くと同時に海水が入ってきてマオを飲み込んだ。

「はっ！？」

　その言葉を言い終わる前に彼女は海の中に消えていった。

「ばっかやろう！！」

　アイカが立ち上がり助けに行こうとすると、船員に止められた。

「嬢ちゃん、だめだ行っては、友達が流されたのは気の毒だが、今行けば君も死ぬ、ここでおとなしくしているんだ」

　船員の言っていることは正論だ、何もおかしいことはない、アイカがドラゴンだと知らないので...。

「私なら大丈夫、ユウリちょっと行ってくる、あっちで会いましょう」

「あ、勝手に行くな！、...行きやがった...」

　こちらの話を聞かずに、彼女は船員の制止を振り切って海の中に飛び込んだ。
　やりたいことはわかるのだが...、少し無謀だと思える。
　だが、もう彼女は行ってしまった。
　俺は頭を掻きながらも、あの二人であれば無事に水の大陸まで行けるだろうと思えたので放って置くことにした。
　自分には確信がある、だってあいつらは魔王とドラゴンだぞ...。
　アイカが海に飛びこんでから数秒後、大きな虚影が見えたので、彼女がドラゴン化して水の大陸に向かったのだろう。
　ドラゴンの姿のままこの船に戻るわけには行かないのだから...。
　その姿を見た俺は安堵し、そのまま荒れ狂う船の中で到着を待った。