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火の大陸編
暴かれた真実
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部屋に戻ると、ユウリが何か思い出したかのように部屋を出て行ってしまったので私はレスカと二人になる。
私は思い切って、気になったことを彼女に聞く。
「...アイカだよね...、その姿も...」
「え?、なんのことですか?、確かにアイカは私の妹ですが、この姿は私自身ですよ...」
とぼけているが、私には分かってしまう。
どれだけ精巧に姿形を似せれたとしても、その人の本質を真似ることはできない。
そしてそれは確信に変わっていた。
「ごめん、私には魔王スキル“敵残体力視覚化”があるんだけど...、今のレスカからはアイカの名前しか出ていないんだよ...」
こんなものは口からのでまかせに過ぎないのだが、カマをかけてみる価値はあった。
どうしても私には、目の前の彼女がレスカには思えなかったからだ...。
「...、そんなスキルがあるの?」
疑り深く私の方を見てくるレスカ。
明らかに彼女の言動にしては、きつめの口調だった。
私はコクリと頷く。
できるだけ自然に、そんなスキルが本当にあるかのように見せかける。
あちらは魔王専用スキルに何があるのかなど、知るはずがないのだから...。
数秒の沈黙。
この静寂が妙に気持ち悪い。
私の額から嫌な汗が流れ落ちる。
暑い気候の大陸ではあるが、この汗は暑さによるものではない。
できれば自分の推測が外れて欲しいという期待の表れだ。
そう、私は怪我をしているので、感覚が少し鈍っているだけなのだと思いたいが...。
彼女の口から出てきた言葉はYESだった。
「...、まさかこんなに早く気づかれるなんてね...、それもユウリではなくあなたに...」
口調がアイカのそれそのものに変わっていく。
声質はレスカのものだが、明らかに喋りかたが変わっている。
ため息を吐いた彼女は順を追って説明し始める。
「私はお姉ちゃんの体と同化した、それでお姉ちゃんの記憶も全て手に入れることができた、その時に貴方達との旅の記録も見た」
ベッドに座り込んで私を睨みつけてくる。
嫌な視線だ、幾度となく魔王に向けられた目。
「じゃあ...なんで...そんな目で余を見るのだ...!」
そう、なぜレスカではないのかと感じたのか...、それはこの目を一瞬だけ見てしまったからだった。
あの時、レスカの皮を被った何かだと確信できていたけれど、悪魔でも可能性が浮上しただけということで済ませていたのだが、やはり気になった。
そして今回の言葉で、その違和感は本物であったことを痛感した。
「お姉ちゃんは本当にギリギリだった...、正直私の一部として取り込めただけでも奇跡...、あなたにはわからないでしょうね...、魔王さん...」
なんとなくは分かっていたが、彼女の眼差しは私が何度も見たことのあるものだった。
シンプルで単純な思考“殺意”を感じ取れる。
「...、そうかバレていたのか...、いつからだ?」
「あなたと龍の巣であった時から、しいて言えば、お姉ちゃんの記憶で見たあなたとユウリの言動を私なりに解釈した結果だけど...」
「で、それが分かったところでどうするつもりだ?、余を殺すか?」
妙な緊張感が生まれるが、彼女は首を横に振る。
「いいえ、そんなことをしても、もうお姉ちゃんは返って来ない、私は果たされなかったお姉ちゃんの意思を汲みたい、言いたいことは分かるな?」
私はゴクリと唾を飲み込む。
彼女の言うレスカの意思とはなんだ?
「レスカの意思って何?」
「お姉ちゃん...つまり私を...、ユウリの嫁にしてもらう、もちろんお姉ちゃんの姿のままで、私はお姉ちゃんとして生きていく」
驚きの答えだったので開いた口が塞がらない。
バカな!、それではアイカ自身の幸せはどうなる?
「アイカはそれでいいのか!?、アイカの意思は?その気持ちはレスカのものであってアイカの意思ではないのだろう?」
思わず叫ぶ私だったが、彼女は澄ました顔で私に呟く。
「アイカの存在理由はお姉ちゃんと一緒にいることだけ、お姉ちゃん無き今、アイカが縋れるのはお姉ちゃんの記憶と意思の尊重、お姉ちゃんは本気でユウリを愛していたし、結婚も望んでいたのであれば、私がすべきことは一つ」
「ユウリとの結婚か...」
彼女の答えが分かってしまう自分がいる。
「分かっているのなら話は早い、魔王の力を借りるのは癪だけど...、あなたのレベルを上げなくては性転換の魔法を使えないのでしょ?、それまでは協力関係でいてあげる」
「協力だとか、そう言う話をしているのではない!、余はアイカの人生は自分で決めるべきだと思う!、レスカの意思を組みたい気持ちは分かるが、それではアイカが犠牲に...」
そこまで言うと彼女は笑う。
「もともとアイカはお姉ちゃんに依存して生きてきた、お姉ちゃんになりきれるならそれも本望、お姉ちゃんの記憶を頼りにこれからをお姉ちゃんとして生きるだけ」
「本当にそれでいいんだな...」
私は最後に彼女に聞くが、首を縦に振った。
もはや、何も言うまい。
「分かった...、余はこのとをユウリには言わない...」
「感謝する...、そうでなくては意味がないのだから...」
彼女の意思は固いようだ。
私を睨みつけていたのは、私がいつかこのことに気がついてユウリに話してしまうと言うことを危惧してのものだったらしいことを考えて、パーティから追い出そうとしての行動だったらしい。
「お~い!二人とも!遊び疲れただろ!、火の大陸名物の木の実ジュース持ってきたぞ~」
嬉しそうな声質でジュースを3個持ってきたユウリが現れた。
「わあ~、美味しそうですね、マオちゃん!早く頂きましょう!」
レスカの口調に戻した彼女に、私は何も言えなかった...。
(あなたが選んだ道なのなら、余は止めはしない...、それが今後、二人の障壁となったとしても...)
「わー、美味しそうだな~、ユウリよ!余にもくれ!」
「安心しろって!、ちゃんと3つあるだろっ!」
幸せそな3人パーティのようだが...、何かが崩れたような気がした...。
私は思い切って、気になったことを彼女に聞く。
「...アイカだよね...、その姿も...」
「え?、なんのことですか?、確かにアイカは私の妹ですが、この姿は私自身ですよ...」
とぼけているが、私には分かってしまう。
どれだけ精巧に姿形を似せれたとしても、その人の本質を真似ることはできない。
そしてそれは確信に変わっていた。
「ごめん、私には魔王スキル“敵残体力視覚化”があるんだけど...、今のレスカからはアイカの名前しか出ていないんだよ...」
こんなものは口からのでまかせに過ぎないのだが、カマをかけてみる価値はあった。
どうしても私には、目の前の彼女がレスカには思えなかったからだ...。
「...、そんなスキルがあるの?」
疑り深く私の方を見てくるレスカ。
明らかに彼女の言動にしては、きつめの口調だった。
私はコクリと頷く。
できるだけ自然に、そんなスキルが本当にあるかのように見せかける。
あちらは魔王専用スキルに何があるのかなど、知るはずがないのだから...。
数秒の沈黙。
この静寂が妙に気持ち悪い。
私の額から嫌な汗が流れ落ちる。
暑い気候の大陸ではあるが、この汗は暑さによるものではない。
できれば自分の推測が外れて欲しいという期待の表れだ。
そう、私は怪我をしているので、感覚が少し鈍っているだけなのだと思いたいが...。
彼女の口から出てきた言葉はYESだった。
「...、まさかこんなに早く気づかれるなんてね...、それもユウリではなくあなたに...」
口調がアイカのそれそのものに変わっていく。
声質はレスカのものだが、明らかに喋りかたが変わっている。
ため息を吐いた彼女は順を追って説明し始める。
「私はお姉ちゃんの体と同化した、それでお姉ちゃんの記憶も全て手に入れることができた、その時に貴方達との旅の記録も見た」
ベッドに座り込んで私を睨みつけてくる。
嫌な視線だ、幾度となく魔王に向けられた目。
「じゃあ...なんで...そんな目で余を見るのだ...!」
そう、なぜレスカではないのかと感じたのか...、それはこの目を一瞬だけ見てしまったからだった。
あの時、レスカの皮を被った何かだと確信できていたけれど、悪魔でも可能性が浮上しただけということで済ませていたのだが、やはり気になった。
そして今回の言葉で、その違和感は本物であったことを痛感した。
「お姉ちゃんは本当にギリギリだった...、正直私の一部として取り込めただけでも奇跡...、あなたにはわからないでしょうね...、魔王さん...」
なんとなくは分かっていたが、彼女の眼差しは私が何度も見たことのあるものだった。
シンプルで単純な思考“殺意”を感じ取れる。
「...、そうかバレていたのか...、いつからだ?」
「あなたと龍の巣であった時から、しいて言えば、お姉ちゃんの記憶で見たあなたとユウリの言動を私なりに解釈した結果だけど...」
「で、それが分かったところでどうするつもりだ?、余を殺すか?」
妙な緊張感が生まれるが、彼女は首を横に振る。
「いいえ、そんなことをしても、もうお姉ちゃんは返って来ない、私は果たされなかったお姉ちゃんの意思を汲みたい、言いたいことは分かるな?」
私はゴクリと唾を飲み込む。
彼女の言うレスカの意思とはなんだ?
「レスカの意思って何?」
「お姉ちゃん...つまり私を...、ユウリの嫁にしてもらう、もちろんお姉ちゃんの姿のままで、私はお姉ちゃんとして生きていく」
驚きの答えだったので開いた口が塞がらない。
バカな!、それではアイカ自身の幸せはどうなる?
「アイカはそれでいいのか!?、アイカの意思は?その気持ちはレスカのものであってアイカの意思ではないのだろう?」
思わず叫ぶ私だったが、彼女は澄ました顔で私に呟く。
「アイカの存在理由はお姉ちゃんと一緒にいることだけ、お姉ちゃん無き今、アイカが縋れるのはお姉ちゃんの記憶と意思の尊重、お姉ちゃんは本気でユウリを愛していたし、結婚も望んでいたのであれば、私がすべきことは一つ」
「ユウリとの結婚か...」
彼女の答えが分かってしまう自分がいる。
「分かっているのなら話は早い、魔王の力を借りるのは癪だけど...、あなたのレベルを上げなくては性転換の魔法を使えないのでしょ?、それまでは協力関係でいてあげる」
「協力だとか、そう言う話をしているのではない!、余はアイカの人生は自分で決めるべきだと思う!、レスカの意思を組みたい気持ちは分かるが、それではアイカが犠牲に...」
そこまで言うと彼女は笑う。
「もともとアイカはお姉ちゃんに依存して生きてきた、お姉ちゃんになりきれるならそれも本望、お姉ちゃんの記憶を頼りにこれからをお姉ちゃんとして生きるだけ」
「本当にそれでいいんだな...」
私は最後に彼女に聞くが、首を縦に振った。
もはや、何も言うまい。
「分かった...、余はこのとをユウリには言わない...」
「感謝する...、そうでなくては意味がないのだから...」
彼女の意思は固いようだ。
私を睨みつけていたのは、私がいつかこのことに気がついてユウリに話してしまうと言うことを危惧してのものだったらしいことを考えて、パーティから追い出そうとしての行動だったらしい。
「お~い!二人とも!遊び疲れただろ!、火の大陸名物の木の実ジュース持ってきたぞ~」
嬉しそうな声質でジュースを3個持ってきたユウリが現れた。
「わあ~、美味しそうですね、マオちゃん!早く頂きましょう!」
レスカの口調に戻した彼女に、私は何も言えなかった...。
(あなたが選んだ道なのなら、余は止めはしない...、それが今後、二人の障壁となったとしても...)
「わー、美味しそうだな~、ユウリよ!余にもくれ!」
「安心しろって!、ちゃんと3つあるだろっ!」
幸せそな3人パーティのようだが...、何かが崩れたような気がした...。
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