女体化した勇者と魔王が一緒に旅するようになった理由

ルシェ(Twitter名はカイトGT)

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火の大陸編

たまには...

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「いてて...、全く...酷い目にあったのじゃ...」

 私は片付けの後、1人で魔王城内をウロウロしていた。
 特に要はないのだが、たまには1人でぶらぶらするのも悪くない。
 夜風に当たるためバルコニーに向かってみる。

「にしても...、この格好はひらひらしていかんな...」

 自分が来ているメイド服を嫌そうに見つめる。
 可愛い女の子が来ているのを鑑賞するのは好きなのだが、自分が着るのは本当にごめんだ、動きづらいことこの上ない。
 私はため息を吐きながらバルコニーへ向かうと、桜色の髪を夜風になびかせる彼女がいた。
 少しからかってやろうと、後ろからそろそろと近づいてから大声をあげた。

「わぁ!!」

「ヒャッ!!」

 あまりにも可愛い声を上げてくれたので、満足する私。
 心臓をばくばくさせているのか、胸に手を置いて息を乱している彼女の様子を見て楽しむ。

「ク...、クロリア様ですか!?...、もう...びっくりさせないでくださいよ...」

「悪いのう...、でもそなたの悲鳴は可愛かったぞ...」

 私は親指を立てながら、いいねを押す現代人のような表情をしている。

「もう...、からかわないでくださいよ...、今日は静かな夜風が気持ちいいんですから...」

 静かにバルコニーの塀越しに、夜風を浴びている彼女に、私は目を奪われた。

「やはりお主...、可愛いのう...」

「はい?...」

 彼女の表情が少し変わったのに気づき、私は慌てて言葉を変える。

「少し喉が渇いたのう、何か飲み物はないか?」

「ああ、私が入れて来ますので少々お待ちください」

 彼女が一度席を外すと、私はハァッと息を吐いた。

「どうして妾はこうなるじゃろうな?、妾はただ可愛い娘とイチャイチャしたいだけなのじゃが...」

 自分の暴走癖を悔い改めようとしたことはあるのだが、一度も成功したことはなく、その度に欲望に負ける自分がいた。
 やはりこれは生理現象なのだと思い込むほどに、私の趣味は異常だったのだ。
 私が塀越しにため息を吐いていると。

「紅茶を入れて来ました、あったかいうちにどうぞ...」

 いつのまにか用意された椅子とテーブルに目を疑う私だったが、この子もメイドの端くれ...、この程度のことはみっちりと仕込まれているのだろう。
 私はすでに用意されていたティーカップに、手を伸ばして紅茶の香りを楽しむ。

「お口に合うと良いのですが...」

 心配そうに私の方を見てくる彼女に、私の胸はきゅんきゅんしてしまう。

(その表情...100点満点!!)

 などと心の中で叫びながら、紅茶に口をつけた。
 一口飲むと、程よい甘さと暖かさが口の中に広がった。
 私はそこまでお茶に詳しくはないが、美味しいか不味いかの判断はつく。
 この紅茶は美味しい。

「...、美味しいな...、妾はこの紅茶、好きだな...」

 その言葉を聞いた時の彼女の表情は、お日様のように光輝いていた。

「よかった...、初めて私の淹れたお茶を美味しいって言ってもらえて嬉しいです...」

 予想以上の喜び度合いに、私の心境は最高潮になる。

(このままいけば、チューくらいできてしまうのでは!?)

 そんな根も葉もないことを考えていると、彼女が私の空いている手を握って来たので、心臓音が高鳴る。

「ありがとうございます、クロリア様...」

 あまりにも濃厚な時間だったので、私の頭の中はヒートアップしていく。
 そこからの記憶が、私には残っていない。
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