女体化した勇者と魔王が一緒に旅するようになった理由

ルシェ(Twitter名はカイトGT)

文字の大きさ
上 下
81 / 169
火の大陸編

彼女の敵

しおりを挟む
 青い髪の女性は不敵な笑みを浮かべており、こちらを舐めるように見てくる。
 それを見た時、レスカが飛び出る。
 龍化した拳を振り上げて殴りかかる。
 凄まじいまでの爆炎と共に彼女が咆哮を上げて連続で殴り続けている。
 今まで温厚なレスカの、あんな表情を見たことのない俺は口を開けて見ているしかできなかった。

(あれが...、レスカなのか?...)

 青髪の女性は、難なくレスカの強靭な攻撃を受け流している。
 それも素手で、なんの魔法も使わずにだ。

「雪...」

 俺はアイカがそう呟いて気がついた。
 青髪の彼女が出現してから気性が荒くなっていることに。
 なにか分からないが、嫌な物を感じる。
 青髪の彼女と戦うレスカを見て、俺は叫ぶ。

「レスカ!、そいつと戦ってはダメだ!、なんだか嫌な予感がする!!」

 レスカの耳にその言葉は届いたのだが、彼女は笑顔を浮かべて俺を見てくる。

「ユウリ、私はあなたと出会えて幸せでした、本当に勝手な恋人でしたけど、私はユウリのことが大好きです」

「なに言ってるんだお前は...」

「きっと私は彼女から逃げられないでしょう、そして私では彼女には勝てない、ユウリにこれ以上私達の争いに巻き込みたくありません、なのでここでお別れです」

「だからなにを言ってるんだ!!」

 激昂する俺を、優しくなだめるレスカ。
 綺麗な青い瞳で俺を写しながら淡い涙を見せる。

「大丈夫、彼女の目的は龍の守護者である私ですから、ただ、私が死んだ時にはアイカを、この子を頼みますね...」

 龍化したアイカを指差して、ユウリに後を託すレスカ。

「そろそろ決着をつけましょうか...、もう逃がさないけど...」

 青髪の彼女は舌舐めずりをしてレスカの方を見ている。

「始めましょうか...、龍と人間の戦いを...」

 彼女達の戦いが再び始まる。
 俺は何もできずに、彼女達の争いを見ていることしかできない。
 レベルの差がありすぎる、青髪の彼女に見切りのスキルを使ったのだが、打ち消された。
 あまりにもレベル差が酷いのでスキルが消されたのだ。

「お姉ちゃんはやらせない!!」

 アイカが声を上げて、青髪の女性に火炎ブレスを放つ。
 ドラゴンのブレスは凄まじい灼熱の咆哮を上げて奴をつつみ込んだのだが。

「あら?、この程度かしら?、だとしたら飛んだ期待ハズレね」

 一瞬のうちに炎をが凍りつき、彼女がその中から這いだしてきた。

「...、バケモノ...」

 アイカが口を滑らした。
 彼女はふふっと笑うと、急に険しい表情になりアイカに氷の弾丸を放つ。
 弾丸が全て命中したアイカはその場に貼り付けにされる。
 氷が羽やら足やらにしっかりと張り付き、一歩も動けない。

「私からすればあなた達の方がバケモノのに見えるのだけれど」

 相変わらず余裕そうな彼女に、レスカは息を吐く。
 そんなレスカを見て、彼女は笑みを浮かべる。

「そう、あなたしかいない、あなたが伝説のドラゴン、あなたを倒せばあの人も私を認めてくれる、だから...、あなたはここで死ぬの...」

 彼女は魔法の詠唱を始めた、さっきまでのお遊びとは違う、殺し用の魔法。

「まずい!」

 レスカが叫んで、俺と動けないアイカの前に立つ。

「レスカ!?」

「大丈夫、私がユウリを守りますから!」

 俺の前に仁王立ちし、しっかりと目を凝らして相手を睨む彼女に何もして上げられない自分が恥ずかしい。
 ついに彼女の氷と、レスカの炎がぶつかり合う。
 海全てが凍てつく魔法と、大地全てが焼け野原になるほどの激炎がぶつかる。
 ぶつかったところから蒸発を繰り返すような水の音が聞こえてくる。
 何度も氷が水になって蒸発する。
 無限に続くかに思えたこのぶつかり合いにも、終着点はあった。
 レスカの魔力の方が先に切れて息切れした。
 それを見た彼女は、一気に決着をつける。
 俺の瞳に映ったのは、レスカがとどめを刺される瞬間だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

処理中です...