女体化した勇者と魔王が一緒に旅するようになった理由

ルシェ(Twitter名はカイトGT)

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火の大陸編

レスカの決断

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「なんか薄気味悪いな..」

 俺が洞窟内を進んで行くと、明らかにドラゴンの食べ残しがある。
 そこから上を見ると、高台のようになった開けた場所が見えた。

「上に何かあるのか?、それにしても酷い匂いだ...」

 凄い匂いだ、ハエがたかって臭い。
 鼻を抑えながら少しずつ進んで行くと、一度外に出た、人が一人通れるくらいの細道を崖沿いに進んで行く。
 すると、食べ残しのあった場所から見えた高台の位置にやってこれた。
 藁や骨で巣らしき物を作っているので、ここにいるのは間違いなさそうだ。
 この骨はレスカのものではなさそうだが、急いだ方がいいに決まっている。
 俺は洞窟内をしらみつぶしに探していると、横穴のような物を見つけたのでそこへ向かう。

「なんか、変な匂いがする...、あったかそうな匂いが...」

 ついに洞窟を抜けると、そこには泉のような温泉があった。
 湯気の中に人影が見えたので、俺は急いで駆け出した。

「レスカか!?」

 勢いよく走ったので、人影との距離感がつかめずに抱きつくようにダイブしてしまう。
 ドッパーンッと、水しぶきをあげながら俺は温泉に飛び込みような形で入浴する。
 すぐに温泉から顔を出して辺りを見回すと、レスカに似た少女が目に移ったので、気になった。

「君は...?」

「人間...?、どうしてここにいる...」

 静かな瞳の中に、燃える闘志のような物を感じる。
 敵対心のようなものを感じた俺はすぐさま身を翻して構える。

「お前は..、誰だ!?」

 俺は少女に大きい声で質問する、赤髪の少女は臆することなく話を続ける。

「私はアイカ...、でもそんなことはどうでもいいでしょう...、あなたはここで終わるのだから...」

 少女の姿が、先程のドラゴンに変貌して行く。

「なるほど、龍人ってやつか、見たことはないが聞いたことはある」

 二人が温泉内で睨み合っていると「ちょっと待ってください!」と聞き慣れた声が聞こえてきた。
 俺とドラゴンがその方向を向くと、一糸纏わぬ、あられもない姿のレスカが目に移った。

「レスカ!、生きていたんだな!良かった!、ちょっと待ってろ、こいつを片ずけて助けてやるからな!」

 レスカの元気そうな姿に安堵しつつも、戦闘態勢は崩さない。

(絶対に取り返してやる)

 心にそう誓い、俺は拳を握りしめた。
 俺がドラゴンに接近すると、レスカが両手を広げて俺の前に立ち、静止する。
 正直、全部が丸見えなので、目のやりどころに困った俺はドラゴンの顔の方を向く。

「レスカ!?、なんで邪魔をするんだ?、こいつはお前を攫ったドラゴンなんだぞ!、早く終わらせてマオと一緒に帰ろう!」

 俺はレスカに提案するが、彼女は首を横に振った。

「すみませんユウリ...、私は人ではないんです...」

「何言って...」

 唐突な告発に、俺はその言動を疑う。
 レスカは人間だ、いつも近く見ていた俺が言うんだから間違いない。
 正真正銘普通の女の子なのだと言うことは明白だ。
 レスカは暗い声で俺に問いを投げかけてくる。

「ユウリ...、もしあなたが愛した人間が、本当はドラゴンだとしたら、それでも愛せますか?」

 悲しそうな表情を浮かべる、彼女がなにかを呟いた時、その姿を変貌させた。
 頭に黒い折れた角が生え、背中から片翼の翼を広げ、その肌の一部は赤い鱗のようになり、腰のあたりからは半分程度の長さで切られている尻尾が顔をのぞかせている。
 人の姿のまま、龍化したレスカを見た俺は、呆気にとられてしまう。

「レスカ...、お前...」

「驚いたよね...、そう、これが本当の私、あなたの愛したレスカです...」

 どれだけ非難されてもいい、軽蔑されても罵倒されてもいい。
 ただ、ユウリに真実を伝えたかったのだ。
 ボロボロの龍人の姿を見た俺は、思わず声を漏らした...。

「美しい...」

「えっ!?」

 俺はレスカを静かに抱き寄せる。
 そして彼女の暖かさを確かに感じると、こう呟く。

「俺は、レスカがどんな姿になろうとも愛し続ける、この心に偽りはない」

 真剣な表情のユウリを見たレスカは、涙を流す。
 声にならない声を上げて、彼に会えた幸福に感謝する。
 その姿を見たアイカは、「ありえない...」と声を漏らした。
 人はこの姿を見ると、すぐに異形だと非難し、軽蔑し、罵倒する者がほとんどだった。
 お姉ちゃんから、それがきっかけで人との関わりを切ったと話しを聞いたことがある。
 レスカは、声に出してユウリに感謝を述べる。

「ありがとう...、ユウリは本当に私のことを...」

 瞬間、レスカの表情が凍りついた。
 俺がレスカの目線の方を見ると、そこには人間が一人、ポツンと立っていた。
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