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火の大陸編
ナツキパーティ
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「ピコラさん、今です!!」
ナツキに命令を出された私は鮮やかに対象の魔物を短剣で斬りつけた。
私の一撃では多少の傷を作るのがやっとだが、それでいいのだ。
対象の魔物は少し大きめのサイのような見た目で、皮膚は石のように硬いが、それほど素早くないので簡単に攻撃をし続けれる。
それに私の仕事はただ一撃を入れることだ。
私が一撃を入れてからしばらくすると、サイの動きが途端に鈍くなった。
(そろそろね...)
私はナツキの付き人である老人に合図を出す。
その後に、老人が強力な火炎呪文でサイを焼き払って、今日の仕事は終わった。
「終わりましたね」
ナツキは涼しげな表情で丸焦げになった魔物を見下ろしている。
「まあ、私がいたから当然よね!」
私は自分の存在価値をこの戦いでもナツキに示す。
彼は少し鬱蒼しそうな表情で私を見てくるので、多少ムキになって自分の有能さを伝えようとして、四苦八苦していると。
老人にそれを止められてしまった。
「これこれピコラ殿、たしかに貴殿の技量は素晴らしいもので、今回の仕事においても麻痺毒入りの短剣で見事対象の魔物を牽制してくれたのはわかるのですが、いかんせんその自意識過剰な態度改めませんと、ワシらはもうパーティなのですから」
老人になだめられるように言われたのが、私の不快感を煽る。
「ふんだ!、私は私の好きなようにさせてもらう契約で貴方達と手を組んだのよ、現にあのクロリアってやつのアジトを追跡できたのも私のお陰だし、今回の仕事でも役に立ってるからいいじゃない!」
私は老人に指を突き立てて大声で迫ると、老人は困り果てた顔で私を見てくる。
それを見かねたナツキが私の注意換気を促してきた。
「ピコラさん、もう少しコルさんの話を聞いてあげてください」
「...、ナツキがそう言うなら...、もうちょっとだけ気をつけてみる...」
ナツキに言われた私は嫌々ながらも、その言葉に従う。
すると、彼は笑顔を向けてくれた。
(ナツキ...、この人やっぱり爽やか系イケメンッ...)
私はこの顔を見るためだけにこのパーティを選んだ。
もともと一匹オオカミの方が性に合うのだが、彼を見たときになにか胸の来るものがあった。
それに、彼も私の“追跡”のスキルを求めていたので利害が一致していた。
それで少しの間一緒に仕事したのだが、彼は思っていたよりも強く、そして優しかった。
ただの一目惚れなだけなら、一回仕事してから相手の気質を見た後に大体別れるのだが、彼とは離れる気にはならなかった。
なぜかはわからないが、彼を見ていると胸がときめいてしまうのだった。
その時だった。
何か冷たいものが当たって気になりふと上を向いてみると、白くて小さいものがふわふわと無数に落ちてきている。
「何?これっ」
触ってみると冷たいので少しびっくりした。
「雪...?、ですかな」
コルが咳を込みながら空を見上げる。
さっきまで青空が広がっていたのに、いつのまにか白黒の混じる嫌な天気になっていた。
「...、火の大陸に雪が降るなんて...、まるで...」
私が小さい頃のことを思い出した。
昔一度だけこの地域の雪が降り積もったことを、ただ1日の異常な出来事だったのでよく覚えている。
「とりあえず今日はここまでにしましょう、町に戻って報酬を受け取った後で、これからどうするかピコラさんが決めてください」
そう、彼は勇者だ。
この地域だけにずっといるはずがない。
でも私の決意は決まっていた。
「そんなことを聞くかな~、私の意思は変わらないよ、これからもあんた達について行く、危険だと言われても、これまでそんな経験いっぱいしてきたしね」
そう言われた彼は静かに笑みをこぼした。
「ピコラさんならきっとそう言ってくれると思いました、改めてよろしくお願いします、ピコラさん」
私と彼はこの場で握手を交わして、本当のパーティとなった。
これからも楽しいことばかりではないだろうけど、彼となら乗り越えていける気はする。
私が笑顔を返すと、彼は静かに私を見ていた。
ナツキに命令を出された私は鮮やかに対象の魔物を短剣で斬りつけた。
私の一撃では多少の傷を作るのがやっとだが、それでいいのだ。
対象の魔物は少し大きめのサイのような見た目で、皮膚は石のように硬いが、それほど素早くないので簡単に攻撃をし続けれる。
それに私の仕事はただ一撃を入れることだ。
私が一撃を入れてからしばらくすると、サイの動きが途端に鈍くなった。
(そろそろね...)
私はナツキの付き人である老人に合図を出す。
その後に、老人が強力な火炎呪文でサイを焼き払って、今日の仕事は終わった。
「終わりましたね」
ナツキは涼しげな表情で丸焦げになった魔物を見下ろしている。
「まあ、私がいたから当然よね!」
私は自分の存在価値をこの戦いでもナツキに示す。
彼は少し鬱蒼しそうな表情で私を見てくるので、多少ムキになって自分の有能さを伝えようとして、四苦八苦していると。
老人にそれを止められてしまった。
「これこれピコラ殿、たしかに貴殿の技量は素晴らしいもので、今回の仕事においても麻痺毒入りの短剣で見事対象の魔物を牽制してくれたのはわかるのですが、いかんせんその自意識過剰な態度改めませんと、ワシらはもうパーティなのですから」
老人になだめられるように言われたのが、私の不快感を煽る。
「ふんだ!、私は私の好きなようにさせてもらう契約で貴方達と手を組んだのよ、現にあのクロリアってやつのアジトを追跡できたのも私のお陰だし、今回の仕事でも役に立ってるからいいじゃない!」
私は老人に指を突き立てて大声で迫ると、老人は困り果てた顔で私を見てくる。
それを見かねたナツキが私の注意換気を促してきた。
「ピコラさん、もう少しコルさんの話を聞いてあげてください」
「...、ナツキがそう言うなら...、もうちょっとだけ気をつけてみる...」
ナツキに言われた私は嫌々ながらも、その言葉に従う。
すると、彼は笑顔を向けてくれた。
(ナツキ...、この人やっぱり爽やか系イケメンッ...)
私はこの顔を見るためだけにこのパーティを選んだ。
もともと一匹オオカミの方が性に合うのだが、彼を見たときになにか胸の来るものがあった。
それに、彼も私の“追跡”のスキルを求めていたので利害が一致していた。
それで少しの間一緒に仕事したのだが、彼は思っていたよりも強く、そして優しかった。
ただの一目惚れなだけなら、一回仕事してから相手の気質を見た後に大体別れるのだが、彼とは離れる気にはならなかった。
なぜかはわからないが、彼を見ていると胸がときめいてしまうのだった。
その時だった。
何か冷たいものが当たって気になりふと上を向いてみると、白くて小さいものがふわふわと無数に落ちてきている。
「何?これっ」
触ってみると冷たいので少しびっくりした。
「雪...?、ですかな」
コルが咳を込みながら空を見上げる。
さっきまで青空が広がっていたのに、いつのまにか白黒の混じる嫌な天気になっていた。
「...、火の大陸に雪が降るなんて...、まるで...」
私が小さい頃のことを思い出した。
昔一度だけこの地域の雪が降り積もったことを、ただ1日の異常な出来事だったのでよく覚えている。
「とりあえず今日はここまでにしましょう、町に戻って報酬を受け取った後で、これからどうするかピコラさんが決めてください」
そう、彼は勇者だ。
この地域だけにずっといるはずがない。
でも私の決意は決まっていた。
「そんなことを聞くかな~、私の意思は変わらないよ、これからもあんた達について行く、危険だと言われても、これまでそんな経験いっぱいしてきたしね」
そう言われた彼は静かに笑みをこぼした。
「ピコラさんならきっとそう言ってくれると思いました、改めてよろしくお願いします、ピコラさん」
私と彼はこの場で握手を交わして、本当のパーティとなった。
これからも楽しいことばかりではないだろうけど、彼となら乗り越えていける気はする。
私が笑顔を返すと、彼は静かに私を見ていた。
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