女体化した勇者と魔王が一緒に旅するようになった理由

ルシェ(Twitter名はカイトGT)

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火の大陸編

二人の時間を壊す者達

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「うーん、そろそろ日が暮れるな...」

 俺は夕日を見てそろそろ宿に戻ろうかと考え始める。
 夕日を見たマオは少しでも日が落ちるなと、謎のダンスを踊っている。
 それを見たレスカが微笑むように笑う。

「そろそろ行きましょうか、マオちゃん」

「ええ~、もっと遊びたいよ~」

 マオがぐずるので、レスカがそっと頭を撫でる。

「明日もまた遊べますから、今日はもう休みましょう...」

 ちょっと考えるマオだったが、「わかった...」とやけに素直に引く。
 今日のレスカの説教が効いたみたいだ。
 あの後からは、俺の言葉にも少しは耳を傾けてくれるようになった。
 と言っても、馬鹿みたいな性格は治っていないので、言ったことを理解する知能があるかは別だが。
 二人と一緒に宿に戻ると、マオは先熟睡してしまった。
 よっぽど遊び疲れていたのだろう、息をひきとるようにスムーズにベッドに倒れこんだので一瞬死んだのかと思ったくらいだ。
 俺とレスカは顔を見合わせて静かに笑った。
 マオを起こさないように、ゆっくりと外に出る二人。

 ~夜~

 外に出ると、あたりはすっかり夜の雰囲気に飲まれていた。
 俺とレスカは一緒にブラブラと、観光気分で町を歩いていく。
 夜になったとは言え、まだまだ人の出入りが多いのは観光スポットだからだろうか?

「二人っきりですね...」

 不意に彼女が俺にそう呟く。
 そのことに気がついた時に俺の心臓は高鳴っていた。

「そうだな...」

 クールに返す俺だが、恋人との時間に緊張しないわけがない。
 未だに水着のままなのが何とも言えないアクセントになっている気がする。
 一応海の家でシャワーを浴びているので海水臭くはないが気になって自分の体臭を気付かれないように嗅ぐ。

(いや、こういう時こそ、魅了スキルの“体臭がいい匂いになる”スキルを使う時では!?)

 くだらないスキルだと思いつつもとってしまったのには理由があった。
 こういう時がいつかくるんじゃないかと内心では期待していたのだ。
 スキルを発動させながらも、一応確認する。

「ねぇ、ユウリ...」

「なんだ?」

(雰囲気がなんかいいな、このまま....、キスとかまでいけちゃうのか...!?)

 要らぬ期待をしながら、彼女の次の言葉を待ち続ける。
 彼女はついに口を動かし始めた。

「もしもあなたが元に戻れなくても、私のこの気持ちは変わりません、私はあなた自身が好きなのです、この言葉に偽りはないと、誓います...」

 彼女の優しい笑みと、大胆な告白に俺のボルテージは最高潮になる。

「俺も...、レスカのことが....」

 俺がそこまで言いかけると、急に後ろから声をかけられた。

「ヒュー、お熱い彼女たち!今から俺たちと遊ばない?」

 いかにもチャラそうな連中に絡まれてしまう。
 せっかくのいい雰囲気を壊されたので、俺は思わず男たちを睨む。

「おー怖っ!、せっかくの可愛い顔が台無しだよ、はい笑って笑って!」

 男たちのノリについていけないと、俺はレスカの手を握り逃げるように歩き出すが。
 男たちは俺の進行方向を塞ぐように立ち回る。

「ちょっとだけだからいいじゃん」

 男たちの目の動きが不快に感じる。

「いい加減にしてくれ!、お前らと遊んでいる暇はないんだ」

「ええ~、でもちょっと前からそこの彼女と町を歩いてたよね~、それって暇ってことなんじゃない?」

(こいつら...!、いつから俺達の後をつけていたんだ!?)

 あまりの気持ち悪さに、こいつらから離れようとするが、腕を掴まれる。
 振りほどこうと力を入れるが、女の力では足りない。
 簡単に地面に押さえつけられてしまう。

「ユウリ!」

 レスカが叫んだその時、男たちの一人が布切れのような物をレスカの鼻の前に置いて彼女を押さえつける。
 数秒経つと、彼女は意識を失ったかのようにこくんと頭を下げる。

「おい!レスカに何をした!」

 俺は地面に押さえつけられながらも必死に身を動かして、脱出出来ないか考える。
 男の一人がこう俺に囁いた。

「赤髪の子はおねんねの時間みたいだな、君も早く眠るといい...」

 レスカの意識を奪ったものと同じ布を俺に近づけてくる。
 俺は強化された“見切り”のスキルで、布の正体を確認する。
 強化された見切りであれば、道具の性質を鑑定する事もできる。
 布切れには、睡眠効果のあるコウの花の成分が検出された。

(睡眠効果...、まずい!)

 じたばたと諦め悪く抵抗するが、意味がない。

「おねんねの時間だよ...、さあ、いい睡眠を...」

 男たちの高い笑い声に苛立ちを覚える。
 捕まれば何をされるかわかったもんじゃないが、なんとかしようにも、押さえつけられていたのでは何もできない。
 鼻まで数センチのところへ、布切れを運ばれた時には、目を瞑ってその時を待つことしかできなかった。
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