女体化した勇者と魔王が一緒に旅するようになった理由

始まりの大陸編

アオ

　メイシア様の特訓のおかげで、たしかに力はついてきていましたが、その代償に身体中が傷だらけになっていました。
　特にひどい怪我をしている右腕には包帯を巻いています。
　ザーク様の部屋に入って掃除しているとザーク様が声をかけてきました。

「アオ、ゲンキナイ？」

　心配そうに私の表情を伺うザーク様。
　その表情が愛らしく、私に対する慈愛溢れる物だったので思わず近づいて確認してしまいました。

(ザーク様最高！、紅く光る瞳に長いサラサラの黒髪！、アオはそんな貴女様に仕えれて幸せです！)

　と、心の中では感激するほど喜ぶが、ザークは本気で心配しているようだ。
　包帯を巻いた私の腕を優しく撫でてくる。

「ヒャい！」

　急に傷口を触られたので変な声が出てしまう。

「イタソウ、アオダイジョウブ？」

　ザーク様の言葉に胸が熱くなり涙をこぼしていました。

「アオ、ナイテルノ？モシカシテイタカッタ？」

「いえ、ザーク様のおかげで少し痛みが取れた気がします...」

　私がザーク様の心使いに感激していると、メイシス様がこの部屋に入ってきました。

「ザーク様、いかがお過ごしですかな...」

　ザークに笑顔を向けるメイシスだが、アオには厳しい態度をとる。

「ザーク様の部屋意外にも掃除する場所は残っているだろ！、さっさと終わらせろ、終わったらまた後でしごいてやる」

　私が慌てて掃除を終わらせようとしていると、ザーク様が一人でに立ち上がりました。
　私とメイシス様は、ザーク様が始めて立ったので、心から喜んでいましたが、ザーク様は怒りの表情でメイシス様にこう言いました。

「メイシス、アオハガンバッテイルカラ、キョウハワタシトイッショニアソブ」

　メイシスは困惑したような表情でザークを見る。

「お言葉ですがザーク様、アオはメイドです、仕事が山積みになっている中、休ませるわけには...」

「デモ、コレカラクンレンスルンデショ？、キョウハソノジカンヲアソビニツカウダケ...」

　ザークの瞳の迫力に気圧されるメイシス。

「わかりました...」

　メイシス様は一礼をすると私を睨んで去って行きました。
　メイシス様が去ると、ザーク様は私を見て笑顔を振りまいてくれました。

「イッタヨ、アオ、キョウハワタシトイッショニヤスミマショウ...」

「遊ばなくていいのですか？」

　私はザーク様に質問すると、ザーク様は笑ってこう言いました。

「アオガガンバッテイルノワタシハシッテイル、キョウクライハイッショニヤスモウ、アオ...」

　白く美しい手を伸ばされた私は、その手を握りました。

「ココニアタマオイテ...」

　ザーク様は正座して膝をポンポンと叩いている。
　私はあまりにも勿体無いことをしてくださると思ってしまい、なかなか寝ることができませんでしたが、ザーク様がどうしてもと言うので、恐る恐る頭を置いて寝ました。
　ザーク様に膝枕してもらった私は、ありえないほどの幸福感を得ていました。
　柔らかい肌に頭を置いた私は、すぐに眠りにつきました。
　ザークはアオの安らかな寝顔を見て静かに呟いた。

「アリガトウ、アオ...、オツカレサマ...」

　ザークは静かに微笑みながら、アオの頭を撫でていた。