女体化した勇者と魔王が一緒に旅するようになった理由

始まりの大陸編

海の中

　ザパァン。
　俺は海へとダイブした。
　塩水が肌を包み込み冷たい海水が全身を覆う。

(冷たいな...)

　当然のことだが、海の中は冷えるので、それだけで体力を奪われる。
　俺はアイテム欄を開いて、ある物を取り出す。
　水竜の鱗だ。
　水の大陸で手に入れたアイテムで、水の中を水竜の如き速さで泳げるようになる優れものだ。
　さらに、このアイテムには付与効果があり、水中でも息ができるようになる。　
　俺はペンダントのように繋がれたそれを首につける。
　水中なのに息ができるという不思議な感覚を感じながらマオを追う。
　俺は船底に向かった。
　俺の予想が正しければ、本体は船底に張り付いているだろう。

　～船底～
　少し光が届き辛い場所まで潜る。
　予想通り奴の本体が見えた。

(でかいな...)

　大型船を拘束出来るだけの足を持っているのである程度予想はできたが、それをも上回る巨体が瞳に映った。　
　赤い体色をした巨大なタコがこちら気がつくと大きい目でこちらを見つめてくる。
　ユウリを見つけたタコは、なぜか動きがピタッと止まる。
　静止しらタコを警戒しながら、マオを探す。
　タコ足の先を視覚で目を凝らして見る。
　明らかにタコ足を丸めている場所を見つける。

(あの中だな...)

　俺はアイテム欄を開いて、雷いかずちの杖を取り出す。
　レベルが足りないせいで本来の性能を発揮できないが、アイテム本来の能力は健在だ。
　棒状のそれをタコ足の方に向けて接近する。
　丸めているタコ足に向かってそれを投げつけると、数秒後に激しい雷が発生し、タコ足を刺激する。
　すると、タコ足が荒れ狂ったように動きだして、囚われていたマオが弾き出される。

(...、よし、効いてる！)

　俺はマオの元へと駆け寄り救出した。
　マオは突然のことに慌てているのか手足をジタバタと動かしている。
　いや、これは単に息ができなくて苦しくてもがいてる。
　それが分かった俺は急いで海面に向かう。
　この時の俺は気づいていなかった...、なぜタコが俺を見た時に静止したのかを。