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始まりの大陸編
作戦会議
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俺とマオは港に立っていた。
男との話でここに船をつける予定らしい。
待つこと数分。
船の形が見えてきた。
「おいおい...、ありゃあ...」
「何だあれ!、すっごいな!」
マオははしゃぎながら港に着いた船を見ている。
たしかに大型船なのだが、どう見ても客船用ではない。
鋼鉄のボディに黒光りする砲台が何台か取り付けられている。
まさに戦闘するために作られた船と言った印象を受ける。
「あの男本気だな...、こんな物騒な代物を用意して来るとはな...」
薄笑いしながら、ユウリ自身も呆気にとられていた。
「お嬢さん!、きてくれたんですね!」
あの男が船上にいるのが見えた。
声も聞こえたので橋をかけてもらう。
俺とマオが船上に上がると男が出迎えてくれる。
「こんな凄いのを用意して来るなんて...、お前一体何者なんだ?」
男は手を前に出してお辞儀をし、笑いながらこう呟く。
「ただの行商を営む社長でございます」
「ただの社長じゃないんだな...、これ以上の詮索はしないでおく」
「それがよろしいかと」
意味深なことを言う男に興味はあるが、余計なことに首を突っ込むとろくな目に合わないのは充分承知しているので、この仕事が終わったら関わらないようにする。
「それで、他のパーティは?」
「もうそろそろお集まりになるかと思います」
男はニヒッと笑うと、俺達を船内に案内した。
席の数を見るとおそらくだが後3パーティほど来るのだろう。
椅子が4個あり、白い丸テーブルを囲んでいて向かい合うように置かれている。
俺が席に座ることを不満がるマオ。
「何でユウリが座るのさ」
「そりゃ俺がリーダーだからだろ?」
「え?、余がリーダーじゃないの?」
「え?」
二人は顔を見つめ合った後、同時に吹き出す。
「ないわ~!」
「ユウリ(マオ)がリーダーとか!!」
同時に相手がリーダーではないと主張する。
ユウリとマオが言い争っている最中に、他のパーティが続々と入場していきた。
他のパーティが席に座っても二人は喧嘩を続ける。
しばらく経っても喧嘩が終わらないのでパンッと手を叩いて二人を仲裁した人物がいた。
「全く...、これから僕たちは大物と戦うのですよ、遊びに行くのではないんです」
他のパーティのリーダーだろうか?、男性だが華奢な体つきをしている。
緑の髪をいじりながら二人の喧嘩を止めに入る。
「ああ、すまなかったな」
この男の言うことが正しいのは、火を見るよりも明らかなので、二人は騒ぐのをやめる。
「うんうん、素直でよろしい、女の子は素直が一番ですからね」
「誰が女の子だって!」
ユウリもマオも同時に否定するが、その男は困ったような表情で二人を見つめる。
「いや、どこからどう見ても女の子ですよね」
他のパーティの面子も俺たちが言っていることの意味がわからないようだ。
付き合いのない連中にとって二人は女性に見えるのだろう。
当然だが...。
「ナツキ様、そろそろお戯れは終わりにして、仕事の話題に入りましょう」
緑髪の少年の名はナツキと呼ばれているようだ。
仲間らしき老人にそう呟かれたナツキは、自分が中心となって話を進め出す。
「皆!、今日はよく集まってくれた、僕の名前はナツキ、今日この仕事のリーダーをさせていただく者だ」
ナツキの気合の入った自己紹介に皆の空気が引き締まる。
「すごいな、一言挨拶するだけで空気が変わったぞ、まるで勇者みたいだ~」
それでも間の抜けた声を出すのがマオなのだが。
マオが勇者みたいだと発言すると、先ほどの老人が一言マオに囁く。
「ナツキ様はこう見えて勇者の一人なのですよ...」
「え!?そうなのか!?」
マオは驚きの声を上げる。
「こことは違う大陸の勇者、魔王が討伐されたとはいえ、まだまだ勇者の仕事はなくなってなどいないのですじゃ」
マオはプク~と頰を膨らませる。
(魔王は存在してるよ、ここにね!)
心の中でつぶやくが、本当のことなど言えるはずもなく、ふくれっ面で不機嫌な態度をとる。
マオが不機嫌なっていることなど気にも止めずに話を続けるナツキ。
「皆さまもご存知だとは思いますが、もう一度仕事の内容を復唱させていただきます」
丁寧な口調で今回のタコの魔物のことを話し始めるナツキ。
タコの魔物正体はクラーケン種である可能性が高いことを説明口調に話すナツキを見て他のパーティはかすかに笑い始める。
「何ですか皆さん、何がおかしいんですか?」
ナツキが冒険者の一人を睨みつけた。
優しそうな見た目とは裏腹に肝が座っているようだ。
自分より体格の大きい冒険者に全く怯まずに疑問を投げかける。
冒険者の男は不敵な笑みを浮かべたままナツキの説明に対していちゃもんをつける。
「なぁに、兄ちゃんがあまりにの当たり前のことを言い出すもんだから、滑稽だと笑っただけさ」
調子に乗った口調のまま男は笑う。
すると他の冒険者もいっせいに笑いだし、話に付き合ってられないとでも言うかのように部屋を出て行く。
「皆さん!、話を聞いてください!、これは町の危機でもあるんですよ!」
ナツキの必死の叫びも冒険者達には通じない。
「悪いな兄ちゃん、俺たちは人の命令を聞くのが苦手でね」
俺とナツキ以外の二つのパーティはさっさと甲板へと向かっていった。
「全く...、どこの冒険者も身勝手な人が多いですね」
少し諦めたような表情で去って行く冒険者を冷えた目で見つめる。
「あなた方は僕の話を聞いて下さるんですか?」
俺とマオに目を向けるナツキ。
「いや、遠慮しておく、俺は魔物のことを大体わかっているつもりだ、一眼見ればわかる」
ユウリは胸を張ってナツキにそう告げる。
「そうですか...、まあいいですよ、僕達だけでなんとかして見ますから」
ナツキとユウリも甲板に向かう。
獲物の待つ海域に入ると、船内にコールが響いてきた。
ユウリはなんとも言えない緊張感に心を躍らせていた。
男との話でここに船をつける予定らしい。
待つこと数分。
船の形が見えてきた。
「おいおい...、ありゃあ...」
「何だあれ!、すっごいな!」
マオははしゃぎながら港に着いた船を見ている。
たしかに大型船なのだが、どう見ても客船用ではない。
鋼鉄のボディに黒光りする砲台が何台か取り付けられている。
まさに戦闘するために作られた船と言った印象を受ける。
「あの男本気だな...、こんな物騒な代物を用意して来るとはな...」
薄笑いしながら、ユウリ自身も呆気にとられていた。
「お嬢さん!、きてくれたんですね!」
あの男が船上にいるのが見えた。
声も聞こえたので橋をかけてもらう。
俺とマオが船上に上がると男が出迎えてくれる。
「こんな凄いのを用意して来るなんて...、お前一体何者なんだ?」
男は手を前に出してお辞儀をし、笑いながらこう呟く。
「ただの行商を営む社長でございます」
「ただの社長じゃないんだな...、これ以上の詮索はしないでおく」
「それがよろしいかと」
意味深なことを言う男に興味はあるが、余計なことに首を突っ込むとろくな目に合わないのは充分承知しているので、この仕事が終わったら関わらないようにする。
「それで、他のパーティは?」
「もうそろそろお集まりになるかと思います」
男はニヒッと笑うと、俺達を船内に案内した。
席の数を見るとおそらくだが後3パーティほど来るのだろう。
椅子が4個あり、白い丸テーブルを囲んでいて向かい合うように置かれている。
俺が席に座ることを不満がるマオ。
「何でユウリが座るのさ」
「そりゃ俺がリーダーだからだろ?」
「え?、余がリーダーじゃないの?」
「え?」
二人は顔を見つめ合った後、同時に吹き出す。
「ないわ~!」
「ユウリ(マオ)がリーダーとか!!」
同時に相手がリーダーではないと主張する。
ユウリとマオが言い争っている最中に、他のパーティが続々と入場していきた。
他のパーティが席に座っても二人は喧嘩を続ける。
しばらく経っても喧嘩が終わらないのでパンッと手を叩いて二人を仲裁した人物がいた。
「全く...、これから僕たちは大物と戦うのですよ、遊びに行くのではないんです」
他のパーティのリーダーだろうか?、男性だが華奢な体つきをしている。
緑の髪をいじりながら二人の喧嘩を止めに入る。
「ああ、すまなかったな」
この男の言うことが正しいのは、火を見るよりも明らかなので、二人は騒ぐのをやめる。
「うんうん、素直でよろしい、女の子は素直が一番ですからね」
「誰が女の子だって!」
ユウリもマオも同時に否定するが、その男は困ったような表情で二人を見つめる。
「いや、どこからどう見ても女の子ですよね」
他のパーティの面子も俺たちが言っていることの意味がわからないようだ。
付き合いのない連中にとって二人は女性に見えるのだろう。
当然だが...。
「ナツキ様、そろそろお戯れは終わりにして、仕事の話題に入りましょう」
緑髪の少年の名はナツキと呼ばれているようだ。
仲間らしき老人にそう呟かれたナツキは、自分が中心となって話を進め出す。
「皆!、今日はよく集まってくれた、僕の名前はナツキ、今日この仕事のリーダーをさせていただく者だ」
ナツキの気合の入った自己紹介に皆の空気が引き締まる。
「すごいな、一言挨拶するだけで空気が変わったぞ、まるで勇者みたいだ~」
それでも間の抜けた声を出すのがマオなのだが。
マオが勇者みたいだと発言すると、先ほどの老人が一言マオに囁く。
「ナツキ様はこう見えて勇者の一人なのですよ...」
「え!?そうなのか!?」
マオは驚きの声を上げる。
「こことは違う大陸の勇者、魔王が討伐されたとはいえ、まだまだ勇者の仕事はなくなってなどいないのですじゃ」
マオはプク~と頰を膨らませる。
(魔王は存在してるよ、ここにね!)
心の中でつぶやくが、本当のことなど言えるはずもなく、ふくれっ面で不機嫌な態度をとる。
マオが不機嫌なっていることなど気にも止めずに話を続けるナツキ。
「皆さまもご存知だとは思いますが、もう一度仕事の内容を復唱させていただきます」
丁寧な口調で今回のタコの魔物のことを話し始めるナツキ。
タコの魔物正体はクラーケン種である可能性が高いことを説明口調に話すナツキを見て他のパーティはかすかに笑い始める。
「何ですか皆さん、何がおかしいんですか?」
ナツキが冒険者の一人を睨みつけた。
優しそうな見た目とは裏腹に肝が座っているようだ。
自分より体格の大きい冒険者に全く怯まずに疑問を投げかける。
冒険者の男は不敵な笑みを浮かべたままナツキの説明に対していちゃもんをつける。
「なぁに、兄ちゃんがあまりにの当たり前のことを言い出すもんだから、滑稽だと笑っただけさ」
調子に乗った口調のまま男は笑う。
すると他の冒険者もいっせいに笑いだし、話に付き合ってられないとでも言うかのように部屋を出て行く。
「皆さん!、話を聞いてください!、これは町の危機でもあるんですよ!」
ナツキの必死の叫びも冒険者達には通じない。
「悪いな兄ちゃん、俺たちは人の命令を聞くのが苦手でね」
俺とナツキ以外の二つのパーティはさっさと甲板へと向かっていった。
「全く...、どこの冒険者も身勝手な人が多いですね」
少し諦めたような表情で去って行く冒険者を冷えた目で見つめる。
「あなた方は僕の話を聞いて下さるんですか?」
俺とマオに目を向けるナツキ。
「いや、遠慮しておく、俺は魔物のことを大体わかっているつもりだ、一眼見ればわかる」
ユウリは胸を張ってナツキにそう告げる。
「そうですか...、まあいいですよ、僕達だけでなんとかして見ますから」
ナツキとユウリも甲板に向かう。
獲物の待つ海域に入ると、船内にコールが響いてきた。
ユウリはなんとも言えない緊張感に心を躍らせていた。
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