28 / 169
始まりの大陸編
港町②
しおりを挟む
「うわっ!」
マオは犬に吠えられ、びっくりして尻餅をついた。
それを見たレスカが、慌てて近づいてマオに手を伸ばす。
「大丈夫ですか?、マオちゃん」
伸ばされた手を素直に繋ぐマオ。
「ありがとうレスカ...」
先程マオに吠えてきた犬がワンッ!とまた吠える。
マオは怯えた表情でレスカの後ろに震えて隠れる。
「レスカ...、あの犬怖いよ~」
今にも泣き出しそうなマオが、かなり可愛いと感じるレスカ。
マオの頭を撫でながら、大丈夫と何度も囁いて落ち着かせる。
こうしてみると、子供と母親のように見えなくもない。
マオがある程度落ち着くと、先程までの犬はどこかへ走り去って行った。
「ありがとうレスカァ...」
涙目でグズりながらも涙を吹く。
レスカにハンカチを手渡されたので、それで涙を拭く。
レスカの匂いがほのかに香る。
甘くて優しい匂いに心が落ち着いていく。
マオは嗅いだことのない匂いに興味もつ。
「レスカのハンカチ良い香りだ、心が落ち着く...」
レスカがその言葉を聞くとふふっと笑う。
「それはきっと、マオちゃんが私のことを好きだからそういう風に感じているんだと思いますよ」
「余がレスカのことを?」
思えばレスカのことを不快に思ったことはなかった。
勇者は何度も不快に思い、うざく思い、ぶっちゃけ焼き払いたいとまで思ったことはあるが、レスカにはそのような感情を抱いたことはない。
腕を組んで考え込むが、答えは見つからない。
「う~ん、余がレスカのことを好きかはわからないな...」
「ふふ、私はマオちゃんのこと大好きですよ」
突然の告白にマオの顔は赤く染まる。
「なっ!」
びっくりして足を滑らせてこけてしまう。
「おっと」
今回はレスカの反応がよく、地面に当たる前に引き上げられる。
危機一髪ところで引き上げられたので痛みはない。
「また助けられちゃったな...」
申し訳なさそうにマオは俯いているが、レスカの表情は明るかった。
「マオちゃんはまだ子供なんですから、大人の世話になるのは当然です、私やユウリをもっと頼って良いんですよ!」
人差し指を立てて彼女は笑いながら私を見た。
私も少し笑って彼女の顔を見る。
太陽のように光輝く笑顔がそこにはあった。
(レスカはまだ、余が魔王だということを知らないんだよな、もしも余が魔王だと分かったら、この笑顔を向けてくれるだろうか?)
マオは少し不安になり、嫌な感情が湧き出てくる。
だけど、今考えるのはよそう、今は彼女と一緒に旅をしている、それだけで自分は幸せだと。
「さあ、そろそろあの灯台に向かいましょう、ユウリが待っているから」
マオはレスカの手を握りしめて一緒に歩いて、灯台に向かった。
マオは犬に吠えられ、びっくりして尻餅をついた。
それを見たレスカが、慌てて近づいてマオに手を伸ばす。
「大丈夫ですか?、マオちゃん」
伸ばされた手を素直に繋ぐマオ。
「ありがとうレスカ...」
先程マオに吠えてきた犬がワンッ!とまた吠える。
マオは怯えた表情でレスカの後ろに震えて隠れる。
「レスカ...、あの犬怖いよ~」
今にも泣き出しそうなマオが、かなり可愛いと感じるレスカ。
マオの頭を撫でながら、大丈夫と何度も囁いて落ち着かせる。
こうしてみると、子供と母親のように見えなくもない。
マオがある程度落ち着くと、先程までの犬はどこかへ走り去って行った。
「ありがとうレスカァ...」
涙目でグズりながらも涙を吹く。
レスカにハンカチを手渡されたので、それで涙を拭く。
レスカの匂いがほのかに香る。
甘くて優しい匂いに心が落ち着いていく。
マオは嗅いだことのない匂いに興味もつ。
「レスカのハンカチ良い香りだ、心が落ち着く...」
レスカがその言葉を聞くとふふっと笑う。
「それはきっと、マオちゃんが私のことを好きだからそういう風に感じているんだと思いますよ」
「余がレスカのことを?」
思えばレスカのことを不快に思ったことはなかった。
勇者は何度も不快に思い、うざく思い、ぶっちゃけ焼き払いたいとまで思ったことはあるが、レスカにはそのような感情を抱いたことはない。
腕を組んで考え込むが、答えは見つからない。
「う~ん、余がレスカのことを好きかはわからないな...」
「ふふ、私はマオちゃんのこと大好きですよ」
突然の告白にマオの顔は赤く染まる。
「なっ!」
びっくりして足を滑らせてこけてしまう。
「おっと」
今回はレスカの反応がよく、地面に当たる前に引き上げられる。
危機一髪ところで引き上げられたので痛みはない。
「また助けられちゃったな...」
申し訳なさそうにマオは俯いているが、レスカの表情は明るかった。
「マオちゃんはまだ子供なんですから、大人の世話になるのは当然です、私やユウリをもっと頼って良いんですよ!」
人差し指を立てて彼女は笑いながら私を見た。
私も少し笑って彼女の顔を見る。
太陽のように光輝く笑顔がそこにはあった。
(レスカはまだ、余が魔王だということを知らないんだよな、もしも余が魔王だと分かったら、この笑顔を向けてくれるだろうか?)
マオは少し不安になり、嫌な感情が湧き出てくる。
だけど、今考えるのはよそう、今は彼女と一緒に旅をしている、それだけで自分は幸せだと。
「さあ、そろそろあの灯台に向かいましょう、ユウリが待っているから」
マオはレスカの手を握りしめて一緒に歩いて、灯台に向かった。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。


調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる