女体化した勇者と魔王が一緒に旅するようになった理由

ルシェ(Twitter名はカイトGT)

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始まりの大陸編

塩の香り

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 塩の香りが漂い始め、海が近いことを知らせる。

「そろそろですぜ、ユウリのダンナ!」

 ダインの大きな声で目覚めるマオ。

「うん?、朝か?」

 マオが竜車から顔を出すと朝日が辺りを照らしていた。

「やっと起きたか、寝れて良かったな」

 半日ほど走り続けたので、その間寝れていないレスカはそろそろ限界そうな表情をしている。
 それにくらべて、ユウリは全くといっていいほどケロッとしているのでマオは驚いている。

「勇者はよくこんな長時間起きていられるな、余よりもかなり長い時間起きているだろう?」

「まあ、俺は昔っから長時間活動しても平気なんだよな、そのせいか他のやつと馬が合わず、結局一人であんなとこまで行けてしまったんだがな」

「そうだな、余もあんだけ動かされて相当疲れてたし」

「お前は別にそこまで活躍してないだろ!」

 ユウリがそういうと、マオは胸に手を置いてドヤ顔で話してくる。

「でも、余はあの青い怪物を倒したぞ!」

 スライムを倒したことが相当嬉しかったようで、未だに引きずってるようだ。

「スライムは、魔物の中でも最下位クラスの相手だぞ」

「...え?、マジ?...」

「ああ、マジだ」

 マオは困惑したように腕を組み悩み始める。

「でも余の城にはあんな魔物いなかったと思うけど...」

「いるわけないだろ!、お前の城は終盤の方だったから、スライムより何倍も強い魔物たちに、お前は守られてたんだよ!」

 マオは驚きの声を上げる。

「何!、それは本当か!?、でも余の城のやつらは軽く吹けば飛ぶ程度の存在だったぞ?」

「そりゃお前のレベルが高かったからだろうな」

 腑に落ちないような顔で俺を見てくるが、事実に変わりはない。
 マオの考え込む姿だけは気品が漂っているが、実際のところそこまで重要そうなことは考えていないと思われる。
 どうせ、スライムを我が四天王の一角にとかでも考えているんだろう。
 俺はそう考えるとじわじわとくるものがあり、心の中で笑っていた。
 塩の香りがどんどん強くなる、

「ダンナ!、つきやしたぜ!」

 ダインの声が竜車の外から聞こえてきたと同時に竜車の動きがとまる。

「着いたか...」

 俺は竜車から降りる。
 片手を竜車の縁を持ってカッコつけているように見えたのか、マオに指を指されて笑われる。

「何今の降り方w」

 俺は少し顔を赤くする。
 正直少しカッコつけて降りたので、それをマオに見抜かれたのが恥ずかしい。
 外の明かりに触れた俺は、手で顔を覆う。
 眩しい光が飛び込んできて清々しい気分になる。
 30秒ほど経つと、マオに言われたことなど忘れていた。
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