女体化した勇者と魔王が一緒に旅するようになった理由

ルシェ(Twitter名はカイトGT)

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始まりの大陸編

ザークの生態②

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「アオ~、アオ~」

 ザークは両手を振ってメイドであるアオの名を呼ぶ。

「はい!、ただ今向かいます!」

 アオは張り切った表情でザークの居る場所に向かう。
 アオが視界に入ると、ザークは歓喜したようにパチパチと手を叩く。

「アオ、ハヤ~イ」

 ザークなりに褒めているつもりなのだろうか?。
 片言だが、それでもアオにとっての主君である者からの褒め言葉はこれ以上ない喜びを自分に与えてくれる。

「コッチニキテ...」

 ザークのに手招きされるのでアオは向かう。
 アオがザークのいる場所に立つと姿勢を低くして目線を合わせる。
 ザークはまだ歩くこともままならないほどの幼体である。
 それは、アオ自身も分かっているし、メイシス様にも釘を刺されている。
 私は、ザーク様の力を取り戻させるまでの従者。
 それ以下でもそれ以上でもない存在。
 ザーク様の近くに居られるのは、幼体である今だけなのだ。
 それを思うと少し寂しく感じる。
 顔が暗くなったのをザークは感じ取る。

「アオ?サビシイ?」

 ザークは子供特有の察知能力を発揮する。

「い、いえ、私はザーク様の従者です、寂しいなど思っていません!」

 アオが強気な態度で大丈夫とザークに示すが、彼女の顔は浮かない。
 ザークは手を伸ばしてアオの頭を撫でる。

「ダイジョウブ...、ザークハココ二イルヨ...」

 自分の主人に頭を撫でられるという行為に、アオは幸福感を得る。
 小さいながらも優しさを感じる細身の手。
 アオの落ち着いた雰囲気にザークは満足そうな笑顔を見せる。

「ヨカッタ、アオ、ゲンキニナッタ...」

(ザーク様...、なんとお優しい...)

 ザークの笑顔に元気をもらったアオは、これからもこの人の従者であり続けようと考えるのだった。

「スコシネムクナッチャッタ...、アオ...テヲニギッテイテ...」

 ウトウトとするザークの手を優しく握って、眠りにつくまでの数分間を共に過ごす。

「お休みなさい、ザーク様...」

「オヤスミナサイ、アオ...」

 静かに眠りについたザークを眺める。

(魔王様の妹と聞いていましたが、正直なところ、この方と魔王様に接点があるとは思えない...、それにメイシス様はなにか私に隠していることがあるようにも思える...)

 頭の中を不快な考えが何度も巡る。
 嫌な考え事をするのは嫌いだった。
 他の者の思惑にザーク様が利用されていると考えると、私の心は少しずつ沸点を上げていくような気さえする。

「アオ...、アシタモイッショダヨ...」

 不意な寝言に、私は思わず笑みをこぼす。
 そう、簡単な答えだ。
 私はザーク様ともっと多くの時を過ごしたい。
 その為ならば、努力は惜しまない。
 このアオという名前に誓う。

「そうですね...、私が貴方様の隣にいるには、もっと貴方様にふさわしくならないといけませんね...」

(何が起きても、アオだけは貴方の味方ですよ...)

 アオはザークの身の安全を守るために、これからはより一層、護身術の鍛錬の質を上げることにした。
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