女体化した勇者と魔王が一緒に旅するようになった理由

ルシェ(Twitter名はカイトGT)

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始まりの大陸編

ローケンの王

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 俺たちは気がつくと、ローケン王の前にいた。
 あたりは衛兵で埋め尽くされており、俺たちを寛大な拍手で出迎える。
 魔王を討伐したことを褒め称える言葉を次々に投げかけてくる。
 勇者用の強制瞬間移動呪文で王都ローケンまで飛ばされたのだろう。
 玉座に偉そうに座って俺たちを見下ろしているが、表情は明るい。
 王は少々小太りしているが、優しそうな目をした面倒見の良さそうな顔の形は俺が旅たった時と何一つ変わっていない。
 王は機嫌が良さそうな口調で俺にこんなことを提案してきた。

「勇者ユウリよ!、魔王討伐良くやってくれた!、これで国は安泰したも当然!、褒美として我が娘を娶ってはくれんか?」

 いきなりの王の言動に俺は言葉を返す。

「いや、お言葉ですが俺にはもう彼女が...」

 そう言いかけると王の瞳の色がいきなり変わり、口調も厳しいものとなる。

「では今すぐその者とは別れよ!、これは王直々の命令である!」

「そんな無茶くちゃな...」

 流石に酷いと思うが、これがこの国の王なのだ。
 権力があればなんでもできると思い混んでいる。
 物だけではなく人の思いも王ならばどうにでもできると勘違いしている、どうしようもない王なのだ。
 魔王も我慢ならずに声を荒げる。

「勇者よ!、こんな王のいうことなど聞くことはないぞ!、余が王のなんたるかを今ここでレクチャーしてやろう」

 魔王が王の前にまで進もうとすると案の定衛兵に捕まり王の前に叩き出される。

「なんだお前は!」

 王の大きな声に怯む魔王だが言い返す。

「人間の王よ、勇者には心に決めた人がいるのだ、ここは王として寛大な心で祝福してやるのが筋というものではないか?」

 魔王の真面目な一言にユウリは関心したような表情を浮かべる。

(ヘ~、あいつも言うときは言う奴なんだな...)

 だが、王はそんなことはどうでもいいとでもいうような態度を取り続ける。

「貴様、名前はなんと言う?」

「マオだ」

 魔王は自分の名を名乗る。
 すると王は舌舐めずりをしてマオを見つめる。
 その行為を近くで見たマオは身震いした。
 なんというか、心の底から王が気持ち悪く感じた。

「なんかお前気持ち悪いぞ...」

 つい余計なことを口走ってしまう。
 その発言を王は見逃さない。

「聞いたか!皆の衆!、こいつは今王たる者を侮辱した!、よってこいつは鞭叩き100回の刑に処す!」

 突然意気揚々と騒ぎ立てる王。
 盛大な拍手が巻き起こりあたりは狂気と化した。
 その異様な光景にユウリは口を開けて傍観していた。

(おいおい、確かに魔王の奴も口は悪いが、それくらい許してやれよ...、それに周りの奴らもまともじゃないな)

 相変わらず拍手を続ける衛兵たちに哀れみの視線を送る。
 所詮金のいい公務員なのだろう、上の奴が気に入ることさえ続けていればいい人形しかいないのだとユウリは思った。

(俺はこんな奴らのために魔王を倒したのか?)

 自分自身が疑心暗鬼になる中、口を開くものがいた。

「王様!、それは少しやりすぎでは?」

 レスカが声を上げる。
 王様は眉を潜めてレスカを睨む。
 俺はレスカを止めようとしたが、「大丈夫」とだけ俺に呟く。

「ほう、そなたは?」

「私はレスカ、ユウリの思い人です」

「小っ恥ずかしいから大きい声で言うのはやめて!」

 ユウリの気持ちを尻目にレスカは真実を王に伝える。
 澄んだ瞳で王の濁った眼を見つめる。
 しばらく静寂があたりを包み込んだ。

「そなたが勇者ユウリの恋人なのか...、なら話は早い、即刻別れ話を今ここで切り出せ」

 レスカは首を横に振る。

「すみませんがそれはできません、私とユウリはもう未来を誓い合った身なのです」

 静かに、だがはっきりと皆に伝わるように答える。
 その凛とした姿は見る者を魅了する。

(いやいやいや、何言ってんだ!?レスカのやつ!、確かに彼女だけど、そこまで親密だったっけ?)

 正直俺はこの場で一番興奮していた。
 レスカの口から未来を誓い合った身とか出てきたのだ。
 男としてそれに勝るものはない。
 だが俺は今一番大事なことを忘れていた。

「ちょっと待てよ...、今の俺女じゃん!」

 ユウリの発言に場内はざわつき始める。

「そんな馬鹿な!」

 王様身を乗り出して俺の方に駆け寄ってきて胸を触る。

「確かに慎ましくも素晴らしい柔らかさだ!」

 王様の行動に俺は、頭で考えるより先に手が出てしまっていた。
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