TS系最弱な美幼女魔王ちゃんとなった俺は、何故か自分が生み出した使い魔達と無敵のダンジョンを作ることになったんだが！！

勇者の準備④

　僕が王城の外にて準備を終えた兵士達が次々に出てくるのを見ていると、その圧巻さに驚いた。

「すごいなぁ、まだ人が出てきてる」

　恐らく今いる人数だけでも2万は軽くいるだろう、それでもまだまだぞろぞろと出てくる人間のおびただしいまでの人数に少し息を飲む。

　これから本気の戦いが始まろうとしていると事に疑いの余地はない。

　そりゃそうだ。

　今からドラゴン4体とガチンコ勝負をしに行くと言うのに余裕を持てる人間の方が異常である。

　その余裕をまだ持っていられるという人間が僕ら勇者パーティの筈なのだが、僕たちに余裕があると言うのもおかしい話。

　正直に言おう。

　勇者といえど突き詰めれば只の人間である。

　では何故僕が勇者と言われるようになったのかと言えば魔王を倒した事に他ならない。

　魔王を倒すまでの僕はただの冒険者だった。

　つまり只の人間なのだ。

　なので皆が思っているほど僕に心の余裕はないのだが、それでも余裕のある表情を浮かべ続け無くてはならない。

　それが皆の精神的主柱である勇・者・の仕事なのだから...。

「ふぅ～...」

　僕は大きく息を吐いて集中し直す。

　相手を倒すイメージだけを思い浮かべるのだ。

　負けると言うイメージだけは持ってはならない。

　例え相手がどれだけ格上の存在だったとしても負ける訳には行かないからである。

　～数時間後～

　ようやく全軍の出撃準備ができたようだった。

　総勢10万の軍勢には魔法部隊や対魔使部隊などの特殊な部隊も見られた。

　勿論騎士部隊や兵士部隊の基本的な部隊も揃っている。

　その光景は...そう...。

(戦争だなこれ...)

　だった。

　まるで大国との戦争に臨むかのような厳重態勢に、僕は少し疑問を覚えた。

(何故ここまで王はダレカ城の奪還を望むのだろう...、いやその本質はドラゴン退治なのか？)

　王の狙いがよく分からずに四苦八苦していると、僕の左手にそっと触れる者がいた。

「大丈夫？ディン」

「ユイか...」

　金髪の賢者ユイだ。

　彼女はこんな状況になっても何も考えていないような表情を浮かべている。

　そのあっけらかんさが今でも羨ましいと思う。

　今から戦地に向かうと言うのに、彼女の意識は僕に集中していた。

「ディンの顔色が少し悪そうだったから声をかけておいたんですよ」

「フッ...」

　僕はその声を聞いて少し笑ってしまう。

「何で笑うんですか！、私は本気で心配してるんですからね！」

　少し早口で言う彼女姿が妙に面白く、真剣に考えるのがバカらしくなる。

「いやな...、ユイの顔って面白いよな」

「なっ///」

　その言葉を聞いた彼女は顔を真っ赤にしながら杖を振る。

「何行ってるんですか！！、ディンの方が面白い顔してますよ！！」

「そうだな」

　僕がそう答えると彼女は更に顔を真っ赤にして行く。

「むむ～...！！、そうやって私の事を子供扱いして！！、ディンより私の方がお姉さんなんですからね！」

「はいはい」

　僕は素っ気なくそう答えながら彼女の存在にありがたみを感じているのだった。