差別対象は最強

影悪・ドレミ

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ミカド編 救いたい

1話 元科学現魔法の狂った世界

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昔はよかった。科学時代は幸せだった。自然を破壊していたが、今よりは住みやすい。
世は新魔狂シンマキョウ時代。簡単に説明すると、魔法を使えるようになった人間達による狂ってしまった世界だ。
と言っても、強い魔法で世界が支配されているとか、戦争が世界中で勃発している…とかではない。
今現在、起こっているのは、

『最強差別主義社会』

差別対象は、『強力』な魔法を使う能力者。

理由は言うまでもなく、強力な魔法は危険だからだ。
大抵の人々は、ホコリから栄養を吸収出来るようになる…とか、耳に鉛筆を仕舞える…とか、あっても使わないような魔法ばかり。

ニュース「現在逃亡中の死刑囚の賞金額は…」

ちなみに、俺も危険と判断された人物だ。
人々は俺達の事を、『異常者』と呼ぶ。

「戦争が起きるかも知れない。」
「本人に悪気がないにせよ、怪我人が出たのは事実。」
「無意識で人を殺すなんて…信じられない!異常者は死刑賛成です!」

俺は生きている事が罪らしい。
現在逃亡中の俺には、多額の賞金が付けられている。(詳しくは知らないけど。)

ここで疑問なのは、どうして異常者達は強い魔法を使えるのに反発しないのか、だよな。

理由は2つ。
1つは、強い魔法は扱い辛いから。
2つ目は、異常者は意図的に相手を傷付けられないから。なぜかは分からない。

俺「生きてる事が罪…か。」

ちなみに、俺の魔法は
【監獄写機】(プリズンカメラ)だ。
カメラに写した物を写真の中へ閉じ込める能力。カメラはいくらでも出すことが出来る。

普通なら隠せるけど、さっきも言ったように強力な魔法は扱いが難しい。


小さい頃の事だった。カメラが出せると気付いて、いろんな花や虫等の写真を撮っていた。
カメラを出すことは意図的に出来た。そして、カメラを向けると無意識の内に写真になっていた。
そしてある日の事。

祖母「…私…見たのよ!コイツは悪魔の子よ!」
父「…お前さえいなければ、母さんは…」

俺は、自分の母親を写真で映していたんだ。母さんを撮った瞬間消えてしまった事で、母さんは写真の中に閉じ込められたと理解した。その頃はまだ幼く、閉じ込めた人間を出す方法は分からなかった。
当時父さんは、

父「どうしても母さんを撮ったんだ?」

と聞いてきたが、無意識に撮ったんだから分かるはずもなく。

しばらくして、俺をどうするかという話し合いが始まった。
親、親戚、家族、皆皆俺をイラナイと言った。
本来、幼い内は身内の人達から、

「可哀想」

と言われれば、殺されずに拘束もしくは監禁生活になる。が、俺の場合は即死刑だった。
まぁ、ほとんどは死刑になるらしいけど。それが当たり前なんだろうな。

何も分からなかった俺は、何かを感じ取り警察から逃げた。
後から知った話、あの警察は死刑執行をするために呼ばれた者らしい。

どこからか子供の声が聞こえてきた。

大人「アイツを捕まえろ!」
子供1「やめろ!近づくな!」
子供2「兄さん!僕はもういいから!皆に迷惑をかけるくらいなら…」
子供1「だめだ!絶対に死なせない!」

恐らく、異常者と判断された弟を守る兄…ってところか。
年齢は俺より2つか3つ下くらいか…?
珍しく長生きだな。けど、その命も今日で終わりかもな。

子供兄「逃げるぞ!」
警察「絶対に逃がさないように囲め!」
子供弟「怖いよ…もう…やだ……。」
親?「早く捕まえて下さい!」
親?「なんならここで今すぐ撃ち殺してしまって下さい!」

親らしき2人は、相当あの子供を毛嫌いしているらしい。可哀想に。
まぁ、自分の命の方が大切だよな。親と考えるとまだ若そうな夫婦だし、子供なんてまた作れば良いとでも思っているんだろう。
この世界には、異常者に手を差し伸べる者はいない。見捨てられればもう最後だ。
まったく、子供を作った責任を負って欲しいな。無責任すぎるだろ。

警察「ここで殺すと死体処理が大変なんです。それに周りの野次馬達に事情を説明しないといけなくなるし…」
親「なら早く捕まえて下さい!」
警察「こっちだって命が掛かっているんだぞ!あの人みたいにアザを付けられたら…。」

警察が一瞬視線を泳がせた。
1人の横たわっている男性を見たのだろうか。よく見ると、顔に真っ黒なアザが出来ている。初めは痛いのか苦しいのか叫んでいたが、アザが広がるにつれ次第に衰弱していった。
見たことの無い魔法だ。

そういえば元々、異常者と判断されるほどの強力な魔法を持っている人間は少ない。

俺「面白そうだな。」

正直言って俺は今の生活がツマラナイ。
周りの人間達にビクビク震えて、丸で草食動物のように視野を広げ、脅えながらひっそりと暮らしてきた。

誰かと一緒にいれば、少しは毎日が楽しいと思えるかな。

俺は頭で考えるよりも先に、カメラを出していた。


この出会いが始まりだったのかもしれない。
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