偽りの恋人達

胸の轟

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アウロラ

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料理の下準備をしながら、あの人はどうしているのかと、つい考えてしまう。

逢えれば嬉しくて幸せな気持ちになれるけど、時間は僅か。幸せな一時の後の淋しさに涙が出そうになる。


あの人の居ない時間が、酷くゆっくり過ぎていく気がして途方にくれる。


もっと一緒に居れたら良いのに。こんな風に思うのは、私だけなんだろうか。

あの人もそんな風に、少しでも思ってくれてたら良いな。


「人参まだあったかしら?」
「今必要?」
「後で。」



いろんなことがちっとも上手くやれなくて、自分が酷く駄目な人間に思える。

私、こんなだったかな?今まではもっと上手くやれてた気がするけど、幻想だったのかもしれない。


空回りしてるのは解ってる。それでも頑張ればまだ何とかなると思いたかった。



邪魔な暗雲の出現で、無力な私は道に迷う。


暗雲は消えるだろうか?ーー私の方が暗雲と思われてるのかもしれない。



トントントンー


「はぁ…」
「ちょっとアウロラ、ため息なんて吐いてると幸せが逃げるわよ。」

「だって…」
「そのうち良いことあるわよ。元気出して!ーーちょっとみじん切り多すぎでしょ。」
「わっ、いつの間に!?」

ビアンカに苦笑いされてしまった。


これは試練。乗り越えれば愛が深まる。ーーだと良いな。出来れば努力は報われて欲しい。


「血入りソーセージとジャガイモのスープお願いしまーす。」
「「はーい」」

「ジャガイモのオムレツと塩ソーセージお願いしまーす。ーーラス魚のディップはまだあったかな?」

「えっと…、多分まだあると思う。」


ラス魚は獲れる時期が限られている為、唐辛子と混ぜてペースト状で保存してある。

うちのディップはかなり辛いけど、塩加減と辛さが絶妙で人気があり、お客さんは大抵注文してくれる。


料理の注文は次々入るし、考えても仕方ないことは後にしなくちゃね。


頑張って美味しい料理作ろっと!





どれくらいぶりだろう?久しぶりにクラウスがやって来た。

その顔を見て、いい加減潮時だなと思った。
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