11 / 50
アウロラ
しおりを挟む料理の下準備をしながら、あの人はどうしているのかと、つい考えてしまう。
逢えれば嬉しくて幸せな気持ちになれるけど、時間は僅か。幸せな一時の後の淋しさに涙が出そうになる。
あの人の居ない時間が、酷くゆっくり過ぎていく気がして途方にくれる。
もっと一緒に居れたら良いのに。こんな風に思うのは、私だけなんだろうか。
あの人もそんな風に、少しでも思ってくれてたら良いな。
「人参まだあったかしら?」
「今必要?」
「後で。」
いろんなことがちっとも上手くやれなくて、自分が酷く駄目な人間に思える。
私、こんなだったかな?今まではもっと上手くやれてた気がするけど、幻想だったのかもしれない。
空回りしてるのは解ってる。それでも頑張ればまだ何とかなると思いたかった。
邪魔な暗雲の出現で、無力な私は道に迷う。
暗雲は消えるだろうか?ーー私の方が暗雲と思われてるのかもしれない。
トントントンー
「はぁ…」
「ちょっとアウロラ、ため息なんて吐いてると幸せが逃げるわよ。」
「だって…」
「そのうち良いことあるわよ。元気出して!ーーちょっとみじん切り多すぎでしょ。」
「わっ、いつの間に!?」
ビアンカに苦笑いされてしまった。
これは試練。乗り越えれば愛が深まる。ーーだと良いな。出来れば努力は報われて欲しい。
「血入りソーセージとジャガイモのスープお願いしまーす。」
「「はーい」」
「ジャガイモのオムレツと塩ソーセージお願いしまーす。ーーラス魚のディップはまだあったかな?」
「えっと…、多分まだあると思う。」
ラス魚は獲れる時期が限られている為、唐辛子と混ぜてペースト状で保存してある。
うちのディップはかなり辛いけど、塩加減と辛さが絶妙で人気があり、お客さんは大抵注文してくれる。
料理の注文は次々入るし、考えても仕方ないことは後にしなくちゃね。
頑張って美味しい料理作ろっと!
どれくらいぶりだろう?久しぶりにクラウスがやって来た。
その顔を見て、いい加減潮時だなと思った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
39
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる