偽りの恋人達

胸の轟

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オダマキ≪1≫

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街の中心を流れる川は、子どもの踝程の深さで、田畑の水の為に作られた川だ。

その田畑も時代とともに消え、今では周辺に緑を残しつつ店や建物などに変わった。まぁ、私は田畑があった頃なんて知らない世代だけど。


陽気に誘われ、川の側にあるベンチで語らうカップルや、水遊びする家族連れも増えてきて、周辺の店から売り子たちは川辺へとやって来る。

私もそんな売り子の1人。


近すぎると露骨に睨み付けたり、あっち行けとか言ってくるカップルもいるから、距離感を気にしながら歩く。

そんなに二人きりの世界が大事なら、こんな人目の多い場所じゃなく自分たちの部屋あたりでいちゃつけって言いたい。


「冷えたオレンジジュースに冷えた果物はいかがですか~。」

「串イチゴ二本ちょうだい。」

「串イチゴと串ブドウ。それとオレンジジュースおくれ。」

「オレンジジュース三杯。」

「おーい、こっちに串ブドウを─」

「はいはい、ちょっと待ってくださいね~」


あっという間に品切れになり、店に戻ってオレンジジュースで一休み。さてと、また売り子に復活しよう。






「冷えたオレンジジュースに冷えた果物はいかがですか~。」

暫く歩いてると、やたら女子が集まってるベンチが。

中心に居るのは赤みがかった茶色の髪と茶の瞳の、学園の有名人。


「ちょっと、そろそろ場所代わりなさいよ。」

「はぁ?なんで私があなたと代わらないといけないのかしら。」

「ずっと隣陣取ってたんだから退きなさいよ。」

「絶対嫌。隣は早い者勝ちよ。」

「じゃああんたでいいわ。あんたが代わりなさいよ。」

「寝言は寝て言って。」


醜い争いを侍ってる男子に見せてる自覚ってないのかな?わりと離れた位置に居るのに、言い争いの内容がハッキリ聴こえる。

自分たちがけっこう大きな声になってるのも、周りから注目されてるのも気づいてないのか、すっかり自分たちだけの世界に居るみたい。

取り巻き女子が自分を巡ってそんな状態だったら、普通の神経だとなんらかの行動すると思うけど、通りすぎる時にチラッと見たら、清々しいほどの他人事な顔だった。




暫く歩いてると友達がやって来るのが見え手を振る。


「売れてる?」
「うん。そっちは?」
「まあまあかな。」


来た道を一緒に戻ると、まだ騒がしく言い合う女子たちが目に入る。



「モテ過ぎるのも大変だね~。」

「そうだね。」

「どんな気持ちで渦中にいるんだろ。あたしだったら速攻逃げたくなるわ。」

「ああいうのが日常の人にはどうってことないんじゃない?」

「かもね。ああいうのには参加したくないけど、美少年の恋人は欲しい!連れ歩いて自慢したい!」

「自慢にはなるだろうけど、絶対面倒事に巻き込まれるに決まってるから私は嫌。」

「面倒事くらい何よ!美少年と付き合えるならそんなこと気にしない!ダメ元で告白してみようかな~。」

「誰に?」

「内緒~。」

教えてもらえなかった。



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