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2.
しおりを挟む暫く一緒に居る──そう確定した時に圭の中で真っ先に浮かんだのは
(何を話せばいいんだ…)
たいして変わらないとはいえ年上で、しかもすごい美人とくれば、経験値の低い圭に提供出来る話題が何一つ思い付かなかった。
「…え?」
窓の方を見たサナキが漏らした声につられ、圭も其方を見る。
ごく普通の庭があるだけで、特に変わった物などない筈だが。
「何かありました?」
「人が居たような…」
「え!?」
サナキの言うことが正しければ、他人が庭に侵入していたことになる。
圭は慌てて窓に駆け寄り、外を見たが誰も居なかった。
「誰も居ないですよ?」
「え…、じゃあ私の見間違いだったのかな…?」
どこか納得していないサナキに苦笑し、圭が窓の外を見るように言い、隣に来たサナキが外を見る。
「ほんとだ。圭君の言う通り誰も居ないね。」
「「……」」
もとの位置に戻ると沈黙が訪れ、話題の浮かばない圭は、そんな自分を誤魔化すようにドリンクに手を伸ばし、一気に飲み干した。
「おお~、いい飲みっぷりだね~。」
言いながらパチパチと手を叩かれ恥ずかしくなる。
「…喉渇いてたんで。」
緊張でものすごく喉が渇いてたせいで、一気に飲み干してしまった。
「圭君、もしかして緊張してたりしてっ──なぁんて。」
「そりゃあしますよ!サナキさんすっげぇ美人だし!」
「え、あ、ありがとう?」
美人など言われ慣れてるだろうに、テレたサナキを圭はちょっと可愛いと思った。
その後、サナキが然り気無い気配りで会話をリードしてくれたお陰で、会話が弾んで楽しい──のだが、時間が経つにつれ、圭はだんだん落ち着かない気持ちになり、気がつけば無意識にサナキの胸──美優とは比べ物にならない大きさに目が吸い寄せられ、慌てて逸らす──それを繰り返していた。
「圭君。私と話すの退屈?」
「え、あ~…楽しい…ですよ?」
途中から有り得ない妄想までし始め、全く話に集中してなかったことを悟られないよう、誤魔化すような笑みで応え、言い訳をしようとしたその時
「・・・・・・どういうこと?」
一度も聴いたことがないような美優の低い低い声に、圭はビクリと肩を跳ねさせ慌てて振り返った。
圭にとっては大して時間が経ってない感覚だったが、実際はずいぶん時間が経っていたのかもしれない。
肩が跳ねたのは、美優が聴いたこともない声で声を掛けてきたせいだったが、美優からすると、その様は疚しい場面を見られた態度にしか見えないということに、焦ってる圭は思い至れなかった。
「えっと──・・・」
美優が、見たこともないような恐ろしい形相をしていて言葉に詰まった圭だったが、相手からすれば、それは更に不信感を募らせる結果になると圭は気づかなかった。
待たせた時間の長さにばかりに注視していた圭は、サナキと二人きりで居たことが、恋人の怒りを買っているとは全く気づかなかった。何故ならサナキは家庭教師として家に訪れ、決まっている時間を消費するために一緒に居ただけで、圭にしてみればそこにそれ以上の意味などないからだ。
美優の態度だけ見れば、女性と二人きりになることを、許さない嫉妬深い女子に見えるが、実際は二人きりだったことが問題ではなかった。
二人きりの相手が問題だったのだ。
「……最低。」
確かに自分は美優をずいぶん待たせてしまったとは思うし、招いておいてそれはダメだったと思う。けれどそんな声音で、侮蔑混じりの瞳で見られなければならない程の大罪なのか。美優の心の狭さに圭は若干イラッとなった。
圭は気付かなかったが、この時、サナキは嘲るような笑みを美優に見せていた。
「ちょっ、美優!?」
傷ついたような瞳を圭に向け、美優は飛び出して行く。
追いかけようと立ち上がった圭の腕を、サナキが掴んだ。
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