転生ってあるんですね(白目)

胸の轟

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まさかの〇〇転生!?いや、無い。無いな。無いって言って!?

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ガシャーーーン!!!

目の前で砕けた植木鉢を呆然と眺める。

上から落ちてきたそれは、あと少しズレていたら確実に頭に直撃していたことだろう。

衝撃に愕然とし、上を確かめるように見上げれば、窓に揺れるカーテンが目に入るのみ。

誰かの仕業なのか、偶々落ちてしまったのか、知る術はない。

無惨な姿の植木鉢に目をやる。

当たっていたら死んでいたかもしれない。


……………。
……………………。
………死。

死ぬ………?私は…………。
また……途中で………?


激しいクラクション………怒声………悲鳴……………ブレーキ音……………



植木鉢がもたらした衝撃で、私は前世を思い出した。

名前とか家族とか、どんな風に過ごしていたかなんて細かいことは思い出せないけど、ここではないどこかで、確かに生きていたという記憶が。

今の自分以外の人生があったこともかなり衝撃的なことではあるけど、前世を思い出したことにより、それ以上に衝撃的な事実にゾッとしている。

出来ることなら嘘だと言って欲しい。





妖精エルフリーデ!大丈夫か!?怪我は!?」


やめてぇえええぇええぇえ大声で呼ぶとかマジやめてぇええぇえ!!


妖精と書いてエルフリーデと読む現実。…………………………………しょっぱ酸っぱい。


明らかに見た目平たい顔族なのに、何を血迷って両親はその名前チョイスしたの?苛め?苛めなの?『アイツあの面で妖精エルフリーデとか(失笑)』って名前呼ばれる度思われるのが狙いなの?嫌い?ねぇ、嫌いなの?私のこと。

私も何普通に受け入れちゃってんの?なんならさっきまで素敵な名前ありがとうとか普通に恥ずかしげもなく呼ばせてた自分の神経よ…


「おい、妖精エルフリーデ妖精エルフリーデ!」

連呼はやめて!!
皆こっち見てるでしょーが!
アイツあの面(以下略)って思われる私の身になれ!

幼馴染み(顔面偏差値87)が肩を掴みガクンガクン揺すってくる。

「やはりどこか怪我を!?」

幼馴染み(顔面偏差値87)の声を聞き付けたのか、書記の双子(顔面偏差値89)が駆け付けた。

「「何があったの!?」」

「誰かが妖精エルフリーデを狙って植木鉢を落としやがったんだ!」

「「一体誰がそんな酷いことを!?」」

「…分からない。」

「や、あの、誰かがやったとか決まったわけじゃ。偶然落ちたってことも…」


誰かが狙ってとか止めて!命狙われる程嫌われてる現実を突き付けないで!泣きそう!


「誰かが妖精エルフリーデちゃんに醜い嫉妬を抱いてやったに決まってるよ!なのに犯人を庇うなんて、優しすぎるよ。」

いつの間にか現れた書記(顔面偏差値92)がそっと抱き締めてきた。


「どさくさ紛れに私の目の前でセクハラするとは良い度胸ですね。覚悟は良いですか?」

副会長(顔面偏差値94)が凍えそうな眼差しを書記(顔面偏差値92)に向けながらこっちへ歩いてくる。


「王である俺の、唯一対等な存在である女に気安く触れるなと何度言えば分かる。貴様の頭は空か?」

生徒会長(顔面偏差値98)が不機嫌さを露にやって来る。

「空じゃないよ?だって俺の頭の中は妖精エルフリーデちゃんのことでいっぱいだからね!」


生徒会長(顔面偏差値98)の人を殺しそうな目力を物もとせず、書記(顔面偏差値92)は、抱き締めたまま平然と言い返す。なんて強心臓。


「貴様ッ───」

男たちが言い争いを始めたけど、それどころではない。

まるで走馬灯のように思い出す学園生活。


トイレに入ればドアは開かなくなり、水が降り注ぎ、体育から戻れば着替えがびしょ濡れ。

廊下を歩けば何かに必ずと言っていいくらい躓き、付いた手の下は何故か泥や生ゴミ。

異動教室から戻れば、教科書やノートがビリビリ。

履き替える靴は、いつの間にか消えてたかと思えば、中で何故か虫が死んでたり。(何度も)

その他にも、言い出せばキリがない程の不審な出来事。

明らかに異常なのに、なんでおかしいって思わなかった私!?どう考えてもおかしいよ!?


見ない振り気付かなかった振りでやり過ごしたい。過ごしたいけど!

もう誤魔化しようがない現実に、否定したい現実に、小心者の私の心臓が壊れそうなくらいのビートを刻んでおります。



もうこれ、アレだよね!?

私、確実にアレだよね!?



「「皆、落ち着きなよ!言い争いは醜いよ!」」


そうよ、おおお、おち、落ち着くのよ私。まだ確実って訳じゃないと思──


「ああ…妖精エルフリーデちゃん可哀想に。怖かったんだね。こんなに震えて。──醜い言い争いなんかしてる場合じゃないだろ。さっさと犯人見つけて、妖精エルフリーデちゃんに二度とふざけたマネ出来ないようにしないと。」

「ふん、たまには貴様も良いこと言うじゃないか。──って、おい!勝手に触るなと何度も言わせるな!」


植木鉢が視界に入った。


こんなことが起こった今、もう目を反らしている場合じゃない。

事は命に関わる所まできてしまっている。

早急に何とかしなければならない。

………………。
……………………………………。
………現実を直視すると泣きそうだけど認めよう…。








呪われてるって…。


認めたらちょっとスッキリした。

後でお祓いに行こう!







**********


ヒロイン転生してることに気付かない主人公
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