怠惰な蟲使い（仮）

３１．

イネッサのとこからの帰り道、誰かが俺に意識を向けてるのを感じた。

誰だ？──俺と会いたくないかのように逃げるような動きを始めた。

いつもならちょっかいかけられなきゃ放っておくんだけど、何となく相手を確かめたくなった。──ってことで追いかけッこ開始。




気配察知には優れてるみたいだけど、逃げ足は微妙だったからすぐ追いつけた。
ちょっと気合いが足りないんじゃない？もっと頑張ろうよ。

近くまで来て気付いたけど、良く知ってる匂いがソイツからしてる。

追ってみて正解。ついてるね。


「良いもの持ってるね。」

肩に手を置いたらビクッとされた。なんでちょっと声かけただけでそんなに警戒してんの？

如何にも荒くれ者って感じの声を後ろからかけられてって言うのなら分からないでもないけど、俺そんな声してないし。

チキンなの？だから気配察知に特化してるのか。納得。

そんなことを考えてたら、チラッとなにやら不穏なものを考えたっぽい気配がした。遊びたいなら遊んであげるよ。


「何で黙ってるの？無視？無視ってことでいい？」

「とんでもございませんです！」

「ふーん。ならいいけど。」


何でコイツ全然こっち見ないんだろ？普通声かけられたら相手見るよね。


「それ、ちょうだい？」


さっさと渡して欲しくてそう言ったのに、検討違いな物を渡そうとする察しの悪さに、ちょっとだけイラッとなる。


「バカなの？欲しいって言ったらこれでしょ。察し悪。」
「ヒィッ！？」



目当ての物発見。機嫌良く帰路につけた。