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ちょっとした珍道中と出会い

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しばらくは市街地で、想像よりもお店が多かった。

市街地を抜けると田園地帯になり、肥料の臭いがバスの中まで漂ってきたり、山が見えたり、山の中に入っていったり……。

いかにも郊外らしい景色が続いた。




乗車してから、どのくらい経ったろうか?


山の斜面の道路から、海が見える。
遠い水平線も!

伊良湖いらご岬には着いていなくても、名古屋港以外の海が見たいという思いは満たされた。


乗り込んだバスの終点「保美ほび」は、伊良湖いらご岬の手前。まだ先がある。
そのまま名古屋に戻ろうかと、道を渡った。

バス停で時刻表を見ると、次のバスまで20分以上ある。
近くのコンビニで時間潰しをすることにした。


イートインで冷たいフルーツソーダを飲んでいると、同じくバスを乗り間違えた若者たちが隣のテーブルに座った。
運転士さんに、伊良湖いらご岬まで行きたいと言っていたコたちだ。

「バス、間違えちゃった?」
一人が気さくに尋ねてきた。

「間違えちゃった。豊鉄とよてつバスに乗ったの初めてで……」
「難しいですよね」
「そう。伊良湖いらご岬が、保美ほみ(当時は地名の読みをそう思っていた)の手前なら良かったのにね。でも、もう戻ろうかなって……」
「え? バス、もうすぐ来ますよ」

伊良湖岬へ行くバスは、戻るバスと同じような時刻に来るのがわかった。
けれど、私にとっては“すぐ”ではない。

「せっかくだから、やっぱり伊良湖いらご岬まで行こうかな。もう海は見えたから、何となく満足しちゃったけど」
そう答えた相手に、ニコっとされた。


コンビニから出るタイミングは少しずらしたけれど、バスを待っている間、若者たちとたわいのない会話をしていた。
そのお陰で、住んでいる県内でも全く土地勘のない場所に居る不安が、やわらいだ。


保美ほびから伊良湖いらご岬までは、思っていたよりも遠い。
途中で、一体いつ伊良湖いらご岬に着くのかと、不安になるくらい。
特に、帰りつくまでの体力がもつかどうか……。

でも、あといくつバス停があるのかを知るために、路線図検索をする気にはならなかった。

知ったところで、伊良湖いらご岬の場所は変わらない。
引き返すならどこで降りるのが適切なのか、判断できそうにもない。
これも、旅の醍醐味だいごみだと思おう。笑い話くらいには、なる。


若者たちは、終点の一つ手前「恋路ヶ浜こいじがはま」で降りて行った。
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