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4章 社会人編
<9>ジェラルドVSアラン
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食事を終えて屋敷に戻ると、少年が目覚めていた。
熱もすっかり下がったようで、瞳には生気が宿っている。
「今日はもう遅いので、明日にでもうちの領地の養護院に連れて行こうと思います。他の子ども達は皆、そっちにいますし」
「そうか。何時に出発するんだ? 俺も同行しよう」
「え? でも他の仕事は大丈夫なのですか? うちの領地ですし俺一人でも――」
「明日は公休日だ。何の予定もない。今回のことでエドワードとも話しておきたいことがあるし。それに――少しでもおまえと一緒に過ごす時間がほしい」
「……っ」
最後の一言だけ右の耳元で甘く囁かれる。思わず耳を抑える俺に甘く微笑みながら、ジェラルドは城へ帰っていった。
残された俺は耳も顔もじわじわと熱を持つのを感じ、ひとり目を閉じる。
(どうしよう……ちょっと、いや、かなりやばいかも)
高鳴る胸の鼓動に、心の奥に芽生えつつある感情を自覚した。
翌日、ジェラルドは爽やかな笑顔で俺の屋敷に現れた。王都にもジェニングス邸はあるのだが大きすぎて落ち着かないので、自分用に小ぢんまりとした屋敷を借りているのだ。
少年を抱いて馬車に乗り込もうとした瞬間、すでにジェラルドが中にいることに気づいた。
「うお! びっくりしたあ。いつからいらっしゃったんです?」
「少し前だ、気にするな」
「……はい」
少年を抱いたまま向かい合って座る。だがジェラルドは不満そうな顔で口をへの字に曲げた。
「なぜいつまでもその子を抱いているんだ」
「え」
ジェラルドの目は少年へと移される。
「きみ、名前は? 歳はいくつだ」
「アラン。14歳」
「え!? 14なのか!?」
小柄なのでまだ小学生くらいの年齢だと思っていた。驚く俺にアランは恥ずかしそうに俯く。ちなみに昨日の今日で俺たちはすっかり仲良しである。
「身長がなかなか伸びないんだ。牛乳を飲めば伸びるらしいけど、施設じゃ出なかったし」
「そうか……でも大丈夫だ! 牛乳は成長期の子どもには不可欠だからな。これからはたくさん飲めるようになるから」
「ほんと!? ありがとうユージン様!」
ローズピンクのきれいな瞳を輝かせてアランが俺に抱き着く。年の離れた弟のような可愛さに思わず頬を緩めて柔らかい金髪を撫でる。すると突然、アランがぐえっと声を出して俺の前から消えた。
「あれっ?」
気がつくとアランはジェラルドの隣に座っている。
「いってえ! 何すんだよおっさん。こんな子ども捕まえて乱暴が過ぎるんじゃねえの?」
「そんなに吠えられるぐらい元気なら、一人で座れ。だいたい14にもなって膝の上に座るなんて恥ずかしくないのか」
「別にィ。ユージン様がいいって言ってんだからいいだろ。おっさんに関係ねえし」
アランはジェラルドに向かって舌を突き出す。こんな一面もあったのかと驚きつつ、王子にこの態度はまずい。
「おいアラン、この方は――」
止めに入ろうとした俺の言葉はジェラルドの堂々とした声に遮られる。
「関係大ありだ。ユージンは俺の婚約者だぞ」
そう言って素早く立ち上がったジェラルドは俺の隣に移動して肩を抱く。
それを見たアランの驚きの絶叫が馬車中に響き渡った。
熱もすっかり下がったようで、瞳には生気が宿っている。
「今日はもう遅いので、明日にでもうちの領地の養護院に連れて行こうと思います。他の子ども達は皆、そっちにいますし」
「そうか。何時に出発するんだ? 俺も同行しよう」
「え? でも他の仕事は大丈夫なのですか? うちの領地ですし俺一人でも――」
「明日は公休日だ。何の予定もない。今回のことでエドワードとも話しておきたいことがあるし。それに――少しでもおまえと一緒に過ごす時間がほしい」
「……っ」
最後の一言だけ右の耳元で甘く囁かれる。思わず耳を抑える俺に甘く微笑みながら、ジェラルドは城へ帰っていった。
残された俺は耳も顔もじわじわと熱を持つのを感じ、ひとり目を閉じる。
(どうしよう……ちょっと、いや、かなりやばいかも)
高鳴る胸の鼓動に、心の奥に芽生えつつある感情を自覚した。
翌日、ジェラルドは爽やかな笑顔で俺の屋敷に現れた。王都にもジェニングス邸はあるのだが大きすぎて落ち着かないので、自分用に小ぢんまりとした屋敷を借りているのだ。
少年を抱いて馬車に乗り込もうとした瞬間、すでにジェラルドが中にいることに気づいた。
「うお! びっくりしたあ。いつからいらっしゃったんです?」
「少し前だ、気にするな」
「……はい」
少年を抱いたまま向かい合って座る。だがジェラルドは不満そうな顔で口をへの字に曲げた。
「なぜいつまでもその子を抱いているんだ」
「え」
ジェラルドの目は少年へと移される。
「きみ、名前は? 歳はいくつだ」
「アラン。14歳」
「え!? 14なのか!?」
小柄なのでまだ小学生くらいの年齢だと思っていた。驚く俺にアランは恥ずかしそうに俯く。ちなみに昨日の今日で俺たちはすっかり仲良しである。
「身長がなかなか伸びないんだ。牛乳を飲めば伸びるらしいけど、施設じゃ出なかったし」
「そうか……でも大丈夫だ! 牛乳は成長期の子どもには不可欠だからな。これからはたくさん飲めるようになるから」
「ほんと!? ありがとうユージン様!」
ローズピンクのきれいな瞳を輝かせてアランが俺に抱き着く。年の離れた弟のような可愛さに思わず頬を緩めて柔らかい金髪を撫でる。すると突然、アランがぐえっと声を出して俺の前から消えた。
「あれっ?」
気がつくとアランはジェラルドの隣に座っている。
「いってえ! 何すんだよおっさん。こんな子ども捕まえて乱暴が過ぎるんじゃねえの?」
「そんなに吠えられるぐらい元気なら、一人で座れ。だいたい14にもなって膝の上に座るなんて恥ずかしくないのか」
「別にィ。ユージン様がいいって言ってんだからいいだろ。おっさんに関係ねえし」
アランはジェラルドに向かって舌を突き出す。こんな一面もあったのかと驚きつつ、王子にこの態度はまずい。
「おいアラン、この方は――」
止めに入ろうとした俺の言葉はジェラルドの堂々とした声に遮られる。
「関係大ありだ。ユージンは俺の婚約者だぞ」
そう言って素早く立ち上がったジェラルドは俺の隣に移動して肩を抱く。
それを見たアランの驚きの絶叫が馬車中に響き渡った。
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